「10代の女子なんて最悪」。カルト的なコメディホラー映画「ジェニファーズ・ボディ」は、こんなセリフで始まる。血なまぐさいストーリーは別としても、確かに内容は一理ある。女性の思春期が辛い時期であるのは、昔も今も変わらないということだ。だが、この1年間のプレッシャーは前例のないものになった。ソーシャルメディアの時代に育つことに加え、新型コロナウイルスのパンデミックによってあらゆる意味で日常生活が一変してしまったからだ。
先頃、英国の研究機関Education Policy Institute(EPI)と慈善団体ザ・プリンス・トラストが、ある研究結果を発表した。ソーシャルメディアの過度な利用と、10代、特に10代女子における幸福感と自己肯定感の低下との関係に関する研究だ。この発表結果は英国の各メディアでも広く報じられ、ソーシャルメディアの利用が国内のティーンエイジャーのメンタルヘルスに影響していることに警鐘を鳴らす見出しが各紙面を賑わせた。そこで伝えられたメッセージはほぼ共通で、言外の意図を読み取れるような余地はほとんどなかった。だが、ソーシャルメディアが幸福感に及ぼす影響を科学的にもう少し深く追究してみると、とうてい単純とは言えない様相が見えてくる。
「ソーシャルメディアの利用が普及して、メンタルヘルスの障害も一般的になっているので、その間に因果関係を想定するのは容易だ。しかし、そうだと決めつけてはいけない」と、Dame Til Wykes氏は話す。同氏はキングス・カレッジ・ロンドンで臨床心理学とリハビリテーションを専門とする教授であり、英国立衛生研究所のClinical Research Networkでメンタルヘルスのディレクターも務めている。
EPIとザ・プリンス・トラストの研究に関する報道は、研究コミュニティーからの批判を浴び、青少年心理学の専門家からは、この研究が査読を経ていないことが特に問題だと指摘する声もあがった。最初から結論ありきの姿勢が見られ、それをさらにメディアが深く掘り下げずに報じたという点も疑問視されている。より複雑な状況を示す先行研究が広く存在するにもかかわらず、それを認めない姿勢でもある。
そうした批判に、論文の著者でありEPIの主任研究員を務めるWhitney Crenna-Jennings氏が答えている。この研究では、思春期におけるソーシャルメディアの過度な利用が、幸福感や自己肯定感の低下につながっていることを示したが、場合によってはその逆もあったのだという。
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