Googleは中期に、検索と検索広告の会社からオンラインサービスの会社へと変わり、プライバシーのバランスが変化した。2003年から2008年の期間に行われた派手な買収と数多くの社内プロジェクトが、現在の主力製品の基礎を築いている。
その5年間に行われた買収のなかでは、Pyra Labsが「Blogger」につながった。Keyholeは「Google Earth」に、Writelyは「Google Docs」に、そして現在では「Google Drive」と呼ばれるサービスの中核になっている。Grand Centralは「Google Voice」になり、「JotSpot」は簡単に構築できるウェブページ「Google Sites」になった。Urchinはサイト分析ツールの「Google Analytics」になった。そして、「YouTube」と「Android」という最も大規模な買収2件は、Googleと数多くの人々にとって非常に重要なものだ。
Google社内からは、Gmail、「Orkut」「News」「Print」「Talk」「Reader」「Calendar」「Finance」「iGoogle」「Books」「Knol」を立ち上げた。Google Appsは電子メールと生産性ツールを有料で使う用意がある企業向けに開発されたもの。「Google Maps」は、特に「Street View」によって、地図作成法に革命をもたらした。「Chrome」ブラウザは、スタート時には必要最小限の機能しかなかったが、現在では多くのGoogleの野心を実現する手段になっている。
デジタル生活のほぼあらゆる側面に関係する、目もくらむようなリストだ。こうした数々の大きな成功があるため、人々はKnolのような失敗作をそれほどひどく笑うことはできないだろう。
このようなサービスの拡大によって、新たなプライバシーの懸念が生じた。一部の人々は、Gmailのサーバが、関連広告の表示のために電子メールのテキストをスキャンしたことに腹を立てた。
しかし、それで何が起こっただろう。当時としては信じられないほど大きいストレージ容量があることの方が魅力的だったため、Gmailは雑草のように成長して、2012年には電子メールサービスでトップになった。人々はアドレスブックや電話番号をGoogleと共有してもかまわないと考えた。Googleはユーザーに、スペースを節約するために電子メールを削除するのではなく、Gmailのアーカイブに保存しておくように勧めた。その便利さは、Googleに電子メールの送信元や宛先、送信頻度などの大量の記録を与えることによるどんな欠点をも上回るものだった。
Chromeにも新たな仕掛けが施された。検索ボックスとナビゲーションボックスを組み合わせて1つの「Omnibox」にすることによって、Googleのサーバには、ユーザーが使いたい検索語だけでなく、ユーザーが訪れたいサイトという情報も届くようになった。ユーザーは抗議しただろうか。それほど多くの抗議はなかった。むしろ、今ではこのデザインが「Safari」「Firefox」「Opera」「Internet Explorer」へと広がっている。
サービスの拡大は、Googleが問題を抱える新たなきっかけにもなった。ディスプレイ広告だ。Googleはディスプレイ広告事業に参入するために、DoubleClickを31億ドルで買収した。これはYouTubeの買収額の2倍である。
DoubleClickはほかの広告サービスと同じように、ユーザーの活動を追跡するのにクッキーを使うことが多い。これは効果的な広告を表示するためだ。不適切な雑音ではなく、説得力があるとユーザーが感じる広告を表示するという意味である。広告サービスはブラウザのクッキーを使ってサイトの訪問者を追跡し、訪問者の年齢や性別、興味の対象、居住地域、収入などの要素に合った広告を表示しようとする。
広告主は数十年もの間、特定の集団をターゲットとして広告を出してきた。オンラインでの違いは、大きなグループ(US Weeklyの読者やMonday Night Footballの視聴者など)をターゲットとする代わりに、ウェブサイトでは個人をターゲットにできることだ。また、クッキーを使うことでユーザーを複数のウェブサイトにわたって追跡できる。より新しい行動ターゲティング技術を使えば、クリックしたリンク、使用した検索語、コンテンツごとの滞在時間の違いなど、ユーザーの行動に基づいた追跡が可能だ。
抵抗の兆しはある。「AdBlock Plus」といったソフトウェアや「Do Not Track」標準は、追跡されたくないことをウェブサイトに伝えるためのものだ。ただし、こうした取り組みは一部に限られている。
Googleにも失敗があったのは間違いない。同社は、クッキーによる追跡、検索やStreet View関連のプライバシー侵害に対して、これまで莫大な額の罰金を支払ってきた。欧州ではその検索事業を変更せざるを得なくなる可能性がある。9月末には、Googleが検索トラフィックをより安全なものにするという名目で、検索の抜け穴をそのままにしている問題が報じられた。
今のところ、その問題はGoogleの決算に打撃を与えるまでにはなっていないが、「邪悪になるな」という主義を説いている同社にとって、よい記事ではないことは間違いない。そして一部では、同社は以前ほど苦情にうまく対処できていないと考えられている。
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