折り曲げ可能な携帯電話について考えるとき、携帯電話の素材自体の問題についても考えなければならない。デザインの観点から見ると、筐体は柔らかすぎても硬すぎてもいけない、とFrog Designでチーフクリエイティブディレクターを務めるRolston氏は話す。
「限界点を組み込む必要がある。フレキシブルプラスチックを使ってもいいが、(筐体の素材は)限界まで曲げられた時点で動きを止めることもできるだろうか」(同氏)
言い換えると、折り曲げられた携帯電話は元の形に戻ることができるだろうか。つまり、フレキシブルすぎる携帯電話というものがあるということだ。
実現可能なことと実際に実現するかもしれないことを示す1つの好例が、Nokiaの「Nokia Kineticデバイス」だ。このデバイスは、少しだけ折り曲げることができるハンドヘルドコンピューティングデバイスの開発中のプロトタイプで、米CNETのStephen Shankland記者が2011年にロンドンでそれを目にしている。
Nokia Kineticデバイスでは、スクリーンだけでなくデバイス全体を操作することが可能で、音楽や写真などのコンテンツをスクロールするために本体の両側面を調整することができる。
Shankland記者の報道によると、Nokiaがその日にデモを行ったデバイスのいくつかには、エラストマー(特殊な種類のゴム状ポリマー)素材のカーボンナノチューブが含まれているという。本体の片側を強く握った状態でもう片方の側面に力を加えるという物理的な操作によって、画像を先送りしたり、音楽を早送りしたりすることができる。
フレキシブルスマートフォンやほかのデバイスにとって理想的な素材となるのは、少しだけ曲げることが可能で、時間の経過とともに元のまっすぐな形状が損なわれることのない、個人用電子機器世界での「ライクラ」のようなものだ。
Frog Designの製品開発担当エグゼクティブディレクターであるRobert Curtis氏は、「問題なのは、素材の記憶力だ。曲げたり、戻したりした場合、記憶力はどれだけ持続するのか。この場合の記憶力とは、材料が元の形に戻る性質、つまり形状記憶と正反対の性質のことだ」と述べた。
幸い、これを実現するのに必要な素材のすべては、既に存在する。難しいのは、それらを組み合わせて機能的なデザインを作ることだ。
CorningのDipak Chowdhury氏に、Willow Glassの主な利点の1つは何かと尋ねると、Willow Glassはロール状にすることができるので製造コストが安い、という答えが返ってくるだろう。
しかし、1つの部品の製造コストをより安価にすることができても、製品全体のコスト低下にはつながらない。新しい素材の研究、開発、調達、および製造プロセスは一夜にしてできるものではない。そして、新しいテクノロジの場合、結局非常に大きなコストがかかることもある。
折り曲げ可能な携帯電話が発売されたら、平均的な消費者はそれにいくら払うだろうか。確かに、フレキシブルな携帯電話は素晴らしいアイデアだ。しかし、目新しさがなくなった後、折り曲げ可能な携帯電話は、従来のまっすぐで折り曲げられないデバイスと比べて、実際のところどれだけ実用的なのだろうか。言い換えると、皆さんはポケットの形に合わせて変形する携帯電話に、どれだけ余分に代金を払ってもいいと思うだろうか。
夢のフレキシブルスマートフォンの下絵を描くとき、リストから除外してもいい形状が1つある。それは、円形、つまり巻物のように丸めることのできるデバイスだ。
丸められる携帯電話は「本当に愚かな考え」だ、とFrog DesignのクリエイティブディレクターであるMark Rolston氏は話す。
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