いくつかの企業は数年前から折り曲げ可能なプラスチックディスプレイのデモを披露しているが、ポリマーでさえも商品化までの道のりは未だに長い、とCorningのChowdhury氏は指摘する。
スマートフォン業界がほぼ完全にプラスチックスクリーンからガラススクリーンへ移行したという事実もそれを物語っている。結局のところ、「iPhone 5」にプラスチック製の「Retina」ディスプレイは搭載されていない。ガラスカバーの方が、画像がくっきりと、鮮明に表示される。また、タッチへの反応や感度にも優れている(筆者はガラスカバーのないタッチスクリーン携帯電話のレビューをしたことがある。その携帯電話のエクスペリエンスはかなりひどいものだった)。
ガラスは酸素と水を通さないことにも優れている。水と酸素は、携帯電話の破損や経年劣化から保護するために、内部の電子部品からできるだけ遠ざけたい2つの化合物だ。
もしプラスチックスクリーンを採用した折り曲げ可能なデザインが登場するとすれば、それは成熟したマスマーケット向けデバイスではなく、参考製品やコンセプトデザイン、あるいは非常に初期のニッチモデルに搭載される可能性が高い。
折り曲げ可能なスクリーンテクノロジとガラスが実現したとしても、まだほかの内部部品の問題がある。バッテリやプロセッサ、カメラモジュール、近距離無線通信(NFC)回路はどうすればいいのか。現在のところ、これらの部品はウエハとレンガ状の塊、チップであり、すべて変形しない。
バッテリの研究開発を手がけるLeyden EnergyのバイスプレジデントであるMarc Juzkow氏によると、今日のスマートフォンに電力を供給する従来のリチウムイオンバッテリは、非常に硬いという。リチウムイオンバッテリは持続時間を可能な限り長くするため、硬さと剛性を備えている必要がある。
現在、開発の初期段階にある新しいバッテリテクノロジは、薄型で平らなセルの方向に進んでいるが、これらも折り曲げ可能な携帯電話にとって適切な解決策ではない、とJuzkow氏は話す。第1に、そうしたセルは固体の電解質を使って発電反応を引き起こしているが、充電に長い時間がかかる。第2に、そうしたセルのエネルギー出力は、パワー不足の携帯電話を長時間にわたって駆動するには不十分である。
不思議に思っている読者のために説明すると、実際のところ、より厚くより短いバッテリをデバイスの一端に取り付けることは可能だろうとJuzkow氏は認める。そうすることにより、バッテリが折り曲げられないようにしつつ、携帯電話は折り曲げられるようになる。スマートフォンのような小型のフレキシブル製品のメーカーは、縦方向に小型バッテリを複数挿入し、これらの変形しないバッテリ同士に間を空けてデバイスを折り曲げられるようにすることもできるだろう。後者の解決策には、1つだけ大きな問題がある。小型バッテリは大型バッテリに比べて、充電容量が少なく、持続時間も短いということだ。
だからといって、フレキシブル携帯電話が実現不可能なわけではない。一般的にバッテリとプリント基板はどちらも硬いが、メカニカルエンジニアやデザインエンジニアは、さまざまな形状のバッテリやフレキシブルなプリント基板の開発に取り組んできた。
例えば、フレキシブルなプリント基板はかつて、質素なフリップ携帯電話で普遍的に採用され、折りたたまれるフリップ携帯電話のクラムシェルの上下をつなぐ役目を果たした。
適切な形状のバッテリについては、最近の突破口を開いた事例のヒントとして、Nikeの「FuelBand」を見ればいい。Nikeは同デバイスを作ったとき、2つの湾曲したバッテリをバンドの両側面に設置し、金属片でそれを覆い、バンドのその部分が曲がらないようにした。
将来のフレキシブル携帯電話には、あらかじめ成型された部品がいくつか搭載されるかもしれない。
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