さて、勘のいい人であれば、このスナップショット機能は、うっかり上書きや削除をしたファイルやフォルダを復元するには便利でも、ドライブごとクラッシュした場合の対策にはならないことに気づくだろう。というのも、スナップショットは元のデータとセットで成立するもので、保存先も元データと同じドライブ上だ。それゆえ、ドライブそのものが故障すると、元データともども参照できなくなってしまう。
その対策となるのが、Snapshot Replicationのもうひとつの機能である「複製」だ。これは、スナップショットのデータを別のNASに転送する機能で、同じネットワーク上に設置されている別のSynology NASのほか、ルータを超えた遠隔地にもデータを転送できる。これならば、ディスクの破損はもとより、災害や盗難でNASそのものが失われる事態が発生しても、スナップショットのデータも込みで元データは保護されるというわけだ。
DSM 6.1のスナップショット機能では、遠隔地に加えて、「別のローカルボリュームへのバックアップ」がサポートされており、ユーザーにとってより柔軟性があるものになっている。
ちなみにこの複製機能では、元データとスナップショットのデータ、両方を複製することになるので、元データのサイズがあまりにも大きいと、ネットワーク経由での転送が何日経っても終わらないことになりかねない。こうした場合に備えて、最初の複製時のみ、物理デバイスによる転送をサポートしている。2回目以降に転送するのは容量が小さいスナップショットのデータのみなので、これらはネットワーク経由での転送でも差し支えないというわけだ。
この機能はもともと法人ユースの高性能なバックアップソフトでも採用されていた仕組みなので、ご存じの方も多いだろう。ソフトウェア単体だと10万円を超えるような機能が、SynologyのNASであれば「パッケージセンター」から「Snapshot Replication」を選ぶだけで無料で利用できてしまうのは、まさに驚きだ。
なお、このSnapshot Replicationを使うにあたって、気をつけなくてはいけないことがある。それはこのSnapshot Replication機能がサポートしているのは、ファイルシステムがBtrfsのボリュームのみということだ。新世代のファイルシステムであるBtrfsはそれ自体がスナップショット機能を備えており、頻繁にスナップショットを保存してもパフォーマンスへの影響はほぼ皆無という特性を備えている。むしろこのSnapshot Replication自体が、Btrfsフォーマットありきの機能と言っていい。
従ってこの機能を手持ちのSynology NASで利用する場合、もしファイルシステムが従来のEXT4であれば、Btrfsに変更しなくてはいけないのだが、データを保存したままファイルシステムだけを自動変換する仕組みは用意されていないので、保存されているファイルをいったん別の場所にバックアップしたのちボリュームをBtrfsにフォーマットし、そのあとでデータを書き戻す必要がある。
Btrfsは、Synology NASのOS「DSM」のバージョンが6.0以降であれば問題なく利用できるので、古い世代の製品の多くもアップデートするだけで利用できるようになるが、このファイルシステム変換の問題は避けては通れない。データを移し替える手間を考えると、次にNASを買い替えるか、または買い増しをするタイミングに併せて、「Snapshot Replication」の導入を行ったほうが効率的だろう。
また、Btrfsは、ミラーリングされたメタデータによる破損ファイルの自動検出(無兆候データ破損)をサポートし、破損したデータを回復できるようになった。併せて、今後SynologyのNASを新しく導入する場合は、必ずBtrfsを選んでおくことをおすすめしたい。
ミスによる上書きや削除といったヒューマンエラーはもちろん、ディスクの障害、火災や盗難といったNAS本体の消失に至るまで全方位的にカバーしてくれるSynologyのNASは、オフィスワーカーにもクリエーターにも、頼もしいパートナーとなってくれることだろう。
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