読み込みが終わったらレイティング。写真に評価を加えるのだ。3種類ある画面表示、すなわちサムネイル表示の「ブラウザ」、選択した写真が大きく表示される「分割表示」、そして選択した写真のみが表示される「ビューア」を、[v]キーを押して巡回できる。「ビューア」にして大きく表示し、1枚1枚右に送りながら評価していく。
もっとも大切な評価の基準は「相手の気持ち」。写真に写された人、モノが、その写真を喜ぶかどうか。写された相手が喜ばないような写真は存在すべきではないので、即座に[9]キーを押して「不採用」。半目つぶっている写真とか、変な表情のタイミングが写ってしまっているとか、偶然暗い表情をしているとか、ピントが「目」に合っていないとか、意図しない「ブレ」で不鮮明になっているとか……。相手の気持ちに立って、相手が「うれしい」と感じる写真だけを残す。不採用の写真は絶対に表に出さない。あとでまとめて消去する。
ざーっと一気に見るときには「クイックプレビュー」モードにするのもいい。Aperture3自体、表示が極めて高速なので、これ以上クイックである必要性を感じないから私はまったく使わないけれど、これが便利という人もいるので書いておく。[p]キーを押すか画面右下の「クイックプレビュー」ボタンをクリックすればこのモードに入れる。ボタンが黄色く変わるのでわかりやすい。クイックプレビューモードではRAWファイルの読み込みをしないため、すべての表示が一瞬。比較的遅いMacでも写真を素早く閲覧できるのだ。RAWをきちんと読み込みたい場合はまた[p]を押して通常モードに戻せばいい。
なお、このようにAperture3ではほとんどの作業をショートカットキーで操作できるようになっている。もちろんどのコマンドもメニューから選択することができるが、ショートカットキーに慣れると操作が極めて迅速に行える。至極便利。これがAperture3の強みのひとつでもある。ショートカットキーは各メニュー項目の右側に記載されているし、「ヘルプ」メニューの「キーボードショートカット」を開けば一覧表もある。もしパッケージ版のAperture3を購入した場合は、ボックスの中にショートカットキーの一覧表が添付されているので、それを座右において参照するのもいいだろう。
「相手の気持ち」からの評価が終わったら、次は自分の評価。[1]~[5]の数字キーを押すことで、写真に★の数で5段階評価を付けるのだ。「ブラウザ」表示の場合は[u]キー、「ビューア」表示の場合は[y]キーを押せば、★の他、さまざまな情報が写真とともに表示される。その表示方法や内容は、「表示」メニュー→「メタデータ表示」→「カスタマイズ」で自在に変更できるので好みに合わせればよい。
レイティング作業の際、できるだけ写真を大きく表示したい。また慣れるとショートカットキーを覚えているので、メニューバーは不要になる。そこで[f]キーを押してフルスクリーンモードへ。私は作業のほとんどを「ビューア」のフルスクリーンモードで行っている。写真が画面全体に表示され、それ以外に何もない。もっともピュアな環境だ。写真だけ見えればいい。
表示している写真を詳細に拡大して見る方法は2つ。ひとつは「ルーペ」、つまり虫眼鏡。私のUSキーボードだと[`]キー、一般的なJISキーボードだと[@]キーを押せばルーペが表示される。ルーペのサイズや倍率は「表示」メニューやキーボードショートカットでも変更可能。全体を見ながら部分的に拡大して観察できるこのルーペは大変重宝だ。昔、フィルムの時代、ライトボックスに乗せたブローニーフィルムをルーペで覗き込んでいた感覚を思い出す。
ルーペの表示方法は3通り選べる。第1に、ルーペを表示した状態で「表示」メニューの「ルーペオプション」から「センタールーペを使用」を選んでいない状態、第2と第3は「センタールーペを使用」を選んだ上でルーペ右下の「100」などと倍率が記載してある部分から「焦点をルーペに合わせる」または「焦点をカーソルに合わせる」を選択したもの。どれもそれぞれメリットがあるが、とりあえずは第1の表示方法でいいだろう。カーソルの移動とともにその周囲だけを拡大表示してくれる。私は気分次第で、第1の表示にしたり、第3の表示方法でルーペを画面左下に置いたりしている。
写真を詳細に見るもうひとつの方法は[z]、「表示」メニューの「実際のサイズにズーム」だ。ピクセル等倍に表示される。また画面右側の現在位置表示にポインタを移動してスライダーを動かせば、1000%まで拡大できる。でも私はこの機能はほとんど使わない。常に写真全体が表示されるルーペのほうが好みなのだ。
ではルーペで何を見るか。「目」である。第3回で書いた「目」だ。しっかりピントが「目」に合っているか、「微ブレ」によって「目」が不鮮明になっていないか、「目」の表情はどうか。それをルーペで観察するのだ。
「目」にピントが合っていない写真はすべて[9]で「不採用」。「微ブレ」している写真もよほど写真の内容がいいもの以外「不採用」。使えない写真はさようなら、である。ちなみに私の場合、「不採用」になる写真は、前述の「相手の気持ち」に基づくものも含めて、撮影全体の3%程度。
冒頭で述べた「写真は写した瞬間に完成品」という気持ちで撮影する意義がここに表れる。撮影時にきっちり「目」にピントを合わせ、しっかりブラさずに撮影すれば、「不採用」写真も減る。ピントが外れていたり微ブレしている写真は、あとから救いようがない。最初が肝心なのだ。
より本質的には、相手と対話し、コミュニケイションの中から相手の輝きを引き出し、相手の「目」、美点を写す気持ちが大切なのである。相手の美しさの頂点を見極め、浮き彫りにすることによって、実物よりも美しいと感じられるような写真を目指そうではないか。そうすれば写された人も心から喜ぶに違いない。写された相手が真にうれしいと感じる写真。それが私にとっての「いい写真」である。
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