名店を求めて、ちょっとそこまで食散歩――。
料理評論家・山本益博さんが、関東近郊の食の名店と、その土地ならではのお土産を紹介する本シリーズ。秋葉原編として、特別編を全4回CNET Japanにも連載します。
特別編第2回となる今回は、別格の親子丼が食べられる外神田「鳥つね自然洞」を訪れました。
私は東京生まれ下町育ち、小さい頃から食べ慣れた「すし、そば、てんぷら、うなぎ」を、20代後半になって今一度、下町ばかりか足場を東京23区にまで広げ名だたる店を訪ね歩いて、1982年34歳のとき、「すし、そば、てんぷら、うなぎ、とんかつ、ラーメン」の店をガイドした「東京・味のグランプリ」を上梓しました。
そのガイドを毎年刊行しながら、忘れずに食べ歩いたのが、「丼もの」です。
天丼、鰻丼、鉄火丼、牛丼、かつ丼、親子丼。これらを和歌の「六歌仙」に倣って「どんぶり六花仙」と称し、名品を讃えてきました。
「東京・味のグランプリ」はその後「東京ポケット・グルメ」と名を変え、出版社が講談社から文藝春秋に移り、その頃からスタッフも増えて、1990年代になると「ダイブル」(昭文社)などのタイトルで「食べ歩き」シリーズは継続されました。
2001年にガイドブックは卒業しながら、「丼もの」だけは名店を探し続けました。
そこで出会った1軒が外神田「鳥つね自然洞」の「親子丼」です。
「丼もの」は具材と割り下(汁)とご飯が織りなすハーモニーが何よりの魅力ですが、「ご飯大好き人間」の私は、汁が丼のそこに溜(た)まるほどのものは、白飯の美味しさを損ねてしまうので、本来はあまり気に入らないのですが、「鳥つね自然洞」の「親子丼」は別格です。鶏の味をないがしろにしない、いや、その味をさらに引き立てる割り下が良質な卵の力を借りて変身し、ご飯に絶妙に絡むんです。
「親子丼」が3種類もあるのが「鳥つね」ならではですが、私がいただくのは1300円の「上親子丼」、極め付きの親子丼を召し上がってみたい方は、限定ですが1600円の「特上親子丼」を注文なさってみてはいかがでしょうか。
さて、夜でしたら「鳥鍋」です。鶏がらからじっくりと滋味を引き出したスープで地鶏を心ゆくまで味わえる鍋料理です。鍋のふたを開けると、透明なスープのなかに水玉状の見た目も麗しい油脂が浮いています。これが「美味しい素」のような気がします。食べ進むうちに、鶏の味わいがこんなにも品のよいものかを実感されるに違いありません。
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