IBMがグローバルで展開する「IBM Global Entrepreneur Program」。先進的なスタートアップ企業に対して、IBMの技術や製品などを無償で提供し、事業展開を支援するものだ。2010年に米国で始まった同プログラムが、いよいよ本年度より日本でもスタートする。2014年3月10日に同プログラムを紹介するセミナー「IBM Global Entrepreneur Day」が東京渋谷のIBMイノベーション・センター(IBMパートナーのビジネス獲得につなげるための技術支援環境、商談やコミュニティ醸成の場を提供するセンター)で開催され、50名超の起業家/起業家支援者が参加した。本稿ではセミナー当日の模様を交えながら、同プログラムの詳細を詳らかにしていきたい。
かねてからIBMは、スタートアップ企業の支援にグローバル規模で注力している。日本IBM相談役 北城恪太郎氏は、日本の起業家育成の第一人者といっても過言ではないだろう。セミナー当日は北城氏がオープニングの挨拶を務め、日本のスタートアップ企業を取り巻く現状と、同社のスタートアップ企業に対する取り組みを語った。
北城氏は、「スタートアップ企業の悩みは、優れたビジネスモデルを持っていても、売り込む手段がなく、販売先を見つけるのが難しいことだ」と指摘。資金もヒューマンリソースも、そして人脈も十分でないことが多いスタートアップ企業は、市場で認知されるまでに、いくつものハードルを超えなければならない。
こうした課題を解決/支援するのが、IBM Global Entrepreneur Programである。北城氏は、「スタートアップ企業に必要なのは、すぐれた経営感覚と幅広い視野。スタートアップ企業が成長すれば、国内の雇用が拡大する。さらに、グローバルで活躍することで、日本の発展にも貢献する」としたうえで、「IBMはスタートアップ企業が世界で活躍することを全面的に支援する。こうしたプログラムを積極的に活用してほしい」と説いた。
IBM Global Entrepreneur Programの内容は、「製品の無償提供」「技術支援」「海外を含めた市場展開のチャンス」の3つに大別される。
製品の無償提供、技術支援では、IBMソフトウェア製品を最長3年間無償で利用できる。例えば、ビジネス分析/データ管理/セキュリティ/コンプライアンス管理など、スタートアップ企業が"今すぐ活用したい"必要なツールがすべてそろっており(下表参照)、利用者はIBMの技術支援を受けながら、これらを活用して製品(サービス)を開発することが可能だ。
Need | Capabilities | Need | Capabilities |
情報を知見に変えスマートに活用する |
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企業でのモバイル活用 |
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ソフトウェア開発によってものづくりと業務サービスを変革する |
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インフラとビジネス管理を最適化し、ビジネス価値を最大化する |
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顧客、ビジネスパートナー、社員との関係を強化する |
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リスク、セキュリティ、コンプライアンス管理 |
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ビジネスの俊敏さを |
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IBMのソフトウェア・ポートフォリオ。これら機能を包含する製品が無償で提供される(商用利用を除く)
海外を含めた市場展開のチャンスでは、「IBM SmartCamp」が用意されている。これはスタートアップ企業の製品(サービス)を対象としたグローバル・レベルでのコンペティションだ。参加することで世界中の投資家、業界リーダーと交流が持てる。2013年のIBM SmartCampには250以上のスタートアップ企業が参加しており、優秀な製品(サービス)にはベンチャー・キャピタルからの出資と海外でのビジネス拡大のチャンスが提供される。
実際、IBMのSmartCampで勝利し信用を得られることによって、これまでの合計で115億円以上、ベンチャー・キャピタルからの投資を得ているという。
また、日本でノミネートされたスタートアップ企業各社はSmartCampまでの道のりが記事化され、外部メディアを活用したプロモーションを実施する予定となっている。
なお、日本の初年度のIBM Global Entrepreneur Programへの参加条件は、起業後5年未満で株式未上場であること、基本的にB2Bの製品(サービス)を扱っていること、そしてIBMテクノロジーを用いたITを基盤とした製品(サービス)を開発もしくは開発する予定があることだ。
IBMがスタートアップ企業を積極的に支援する背景には、「同プログラムをうまく活用し、世界に羽ばたく事業を展開していただきたい。また、われわれの持つサービスをフル活用してもらうことで、テクノロジーカンパニーとして世の中を変えるパワーの一助となりたい」との思いがある。
スタートアップ企業は前述したIBMのイノベーション・センターやIBM SmartCampを活用することで、自社製品(ソリューション)を幅広くプロモーションできる。一方IBMは、スタートアップ企業が持つ、これまで網羅できていなかった新地域や分野に、スタートアップ企業を通じてアプローチすることが可能となり、長期的なパートナー関係が構築できる。こうしたエコシステムは両社にとって大きなビジネスチャンスになることは間違いない。両社がそれぞれの得意分野で活躍することで、ITのさらなる発展に貢献できるというわけだ。
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