前回は目の前に迫っている映像と音楽配信の新時代に向けたDTSの取り組みについてレポートした。今回は、配信された映像や音楽はどのように再生されるのか?
その方法について解説していくこととしよう。
従来、音質というのはホームシアターや、ハイファイオーディオの世界で語られる切り口だったが、現在ではPCやモバイル機器まで音の重要性が問われるようになっている。特にPCにはその必要性が高い。
PCはテレビチューナの搭載がもはや当たり前。テレビチューナを搭載しているモデルは、録画の必要性からBlu-ray Discドライブも確実に搭載されている。また、YouTubeやニコニコ動画などのインターネット動画に加え、今後はさらなる拡充が期待されるオンデマンドの映画配信など、PCを使って見られるメディアは多種多様だ。
それにも関わらず、今までのPCは音質についてまったく無頓着だった。これまではPCにAV機器の性能を問われることはそれほど多くなかったが、これからは差別化を図るためにも音質が求められるようになってくるだろう。
しかし現在のPCは、よりコンパクトでスタイリッシュなデザインが要求されており、無骨なスピーカをつけるようなこともできない。
そこでいきてくるのが、DTSのポストプロセッシング(事後の信号処理)テクノロジだ。DTSでは再生するメディアの音源をソフトウェア上で調整し、PC内蔵のスピーカで驚くほど高音質で再生する。そのソリューションパッケージが「DTS Ultra PC II Plus」だ。
DTS Ultra PC II Plusと一言ですましているが、下記のように搭載されて高音質技術は実にさまざま。
ステレオスピーカやヘッドホンだけで、擬似的なサラウンドサウンドを再現する | |
ノートPCのようにコンパクトなスピーカでも、音響パワーを最大化し、音を歪ませることなく大音量を実現する | |
入力された音声信号を分析し、圧縮音源を原音に近づけて復元。音を明瞭にする | |
MP3やストリーミングオーディオ、インターネットテレビなどを見る時でも音質を自然なバランスに改善。さらに音の明瞭度を高めることによって低域と高域の聴感を上げる | |
ノイズを抑制したり、エコー、キャンセルなどの技術を組み合わせ、スピーカからのフィードバック音声を抑制することで、Skypeなどでの通話品質を向上させる | |
聴感上の音量レベルをバランスさせることで、Blu-ray Discやテレビ、ネットなど、複数の音源を切り替えた際に音の変化を抑制する | |
周囲にノイズを検出した場合、特定の周波数でインテリジェントに調整し、補償する |
DTS Ultra PC II Plusは、富士通のデスクトップPC「FMV ESPRIMO FH/DH」とノートPC「FMV LIFEBOOK NH/AH」シリーズに2011年末から導入されている。PC内蔵のスピーカとは思えない、広がりと迫力のある音が楽しめ、通常のPCとは次元の異なる音が再現できる。
また、2011年末にはASUSがBlu-ray Discドライブやサブウーファを付属した「All-in-One PC ET2700INKS」を発売。こちらには「DTS Surround Sensation UltraPC2」を採用し、高音質化を図っている。
ボイス・クラリフィケーション・テクノロジ | 音声信号の明瞭度を高め、Blu-ray DiscやDVDに含まれるセリフの声の音質を向上させる |
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バス・エンハンスメント・テクノロジ | 低音域の周波数を聞こえやすくすることで、サブウーファを追加するだけで、低音域の性能を強化させる |
サウンドステージ・エクスパンジョン・テクノロジ | 音場を広げ、センターチャンネルをファントム生成し、音の明瞭度と鮮明さを高める |
DTSのPC向けソリューションのすごいところは、これらの高音質技術をDTSのサウンドエンジニアが、それぞれのPCの個体特性に合わせて最適化してくれること
実際に視聴した時に感じたのは、とてもナチュラルな音ということ。低音が鳴り響くとか、サラウンドの音がぐるっと後ろに回りこむなどのわざとらしさはまったくない。きわめて自然で実に玄人向きの渋い仕上がりになっている。
この「自然でいい音」というのが、実使用では非常に大切になってくる。過剰に演出された音では、長時間視聴していると飽きてくるし、耳が疲れて、しまいには不快に感じられてくるはずだ。
2012年、AV、PC、モバイルの世界で大きな話題となりそうなDTSだが、その最新のオーディオソリューションを一挙に公開するセミナーが2月23日(木)に東京、3月2日(金)に大阪で開催される。
2012年1月10~13日に米国にて開催された「2012 INTERNATIONAL CES」で出展された革新的技術も詳しく説明される。最新の音響事情を学ぶ最大のチャンスだ。
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