Googleは5月に開催したGoogle I/Oで、非営利団体Earth Fire Allianceと共同で取り組む「FireSat」プログラムを発表した。同プログラムは、高解像度の撮影が可能な新型衛星とAI解析を組み合わせて山火事をごく初期段階で特定し、延焼する前に消火できるよう支援するもの。先週、同アライアンスは初号機の衛星で撮影した最初の画像を公開し、5m四方ほどの小規模な火災でも宇宙から検出できることを示した。
既存の衛星システムも火災をスキャンしているが、解像度はより粗い。今回公開されたオレゴン州の画像では、MWIR(中波長赤外)による熱画像において、道路脇の小さな火災が明るい点として現れている。アライアンスによれば、他の宇宙ベースのシステムでは検出されなかったという。
6月15日のカナダのオンタリオ州の画像では、新たにMWIRで検出されたNipigon 6火災を示すとともに、LWIR(長波長赤外)を使って、植生が乏しいために加熱される2020年の既焼区域を識別できることも示した。下部の画像は、SWIR(短波長赤外)・NIR(近赤外)・可視赤外線を組み合わせた疑似カラー合成により、火災のライフサイクルを追跡するのに役立つ。
現在、Earth Fire AllianceはMuon Spaceが製造したプロトフライト衛星(試験機)を打ち上げ、試験を進めている。衛星が3機体制になれば、FireSatは世界各地を1日2回スキャンできる見込みだ。2030年に計画が本格運用に入ると、50機超のネットワークによってスキャン間隔は20分程度まで短縮され、火災の多い地域では9〜12分ごとになる見通し。
Googleがアライアンスに関与する主な理由の1つは、今後生まれる膨大なデータを処理することだ。Muon Spaceは、各衛星が1日あたり1億9000万平方kmをカバーし、搭載するマルチスペクトル観測装置が6チャネルで記録すると見込んでいる。GoogleがAIとソフトウェアで支援することで、誤検出を除外できるはずだ。AIは世界各地の山火事対策でますます大きな役割を担うようになっている。例えば、米航空宇宙局(NASA)は膨大なLandsat衛星データを用いて、次に火災が発生しやすい場所を予測するモデルを構築している。
「火災と誤認されうるものは数えきれないほどある」と、Google Researchで気候・エネルギー分野の責任者を務め、Earth Fire Allianceの理事会議長でもあるChris Van Arsdale氏は語る。「火災を探すことは、干し草の山から針を探すようなものだ」
現場部隊が対応可能な火災を優先することも重要になる。6月21日にアラスカ州のへき地で撮影された画像には、地上観測では把握できなかった火災が映っていた。
7月11日にオーストラリアの準州ノーザンテリトリーのボロルーラで撮影された画像では、広い範囲に複数の山火事が発生していることをFireSat衛星が特定している。こうした情報は、消防当局が連携して対応を調整するのに役立つ。
Earth Fire Allianceは現在、複数の消防機関などと連携し、データの最適な解釈方法や現場への伝達手順を検討している。
FireSatはまだ初期段階にあり、3機の衛星が軌道に投入される2026年までは運用段階とはみなされないが、初期のデータと画像は、世界の山火事対策にとって有望なツールになりそうだ。
Earth Fire Allianceこの記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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