会議や通話、講義などでAIの文字起こしサービスを使ったことがあるなら、会話の細部を正確に捉えてテキスト化するその実力はよく知っているはずだ。では、自分が現実世界で交わすすべてのやり取りをAIが文字起こししてくれる世界を想像してみてほしい。そこに登場するのが、BeeのAI搭載ウェアラブルデバイスだ。
Beeの最高経営責任者(CEO)であるMaria de Lourdes氏は米国時間7月22日、AmazonがBeeを買収したことをLinkedInへの投稿で発表した。Beeのコンセプトはシンプルだ。マイクとAIを搭載した49ドル(約7200円)のリストバンドを常時装着しておくと、そのバンドが日々の会話を聞いて文字に起こし、会話の検索や行動の提案など、追加の知見を提供してくれる。
買収取引の詳細は明らかにされていない。しかしAmazonが買収に動いたこと、そしてMetaとOakleyのAIスマートグラスなど他のAIハードウェア製品の登場とその人気を踏まえると、AIファーストのハードウェアが大きな転機を迎えようとしているのは間違いない。
BeeのAIウェアラブルデバイスは、日中ずっと受動的に寄り添うAIコンパニオンを目指している。最初は干渉的で余計なものに思えるかもしれないが、筆者はCES 2025でこのリストバンドを装着してデモを体験し、現実世界での有用性を実感した。
このリストバンドはボタンで手動で停止しない限り、一日中会話を記録する。やがてユーザーについて学習し、会話のAI要約や文字起こし(チャットボットのインターフェースを使って分析できる)、実行可能なインサイトを提供する。バッテリーは7日間持続するとされ、ユーザーは充電について気にすることなく、一日を通してこれを「相棒」として使うことができる。
ユースケースは数え切れないほどある。分かりやすい例は、会議に出席し、後でメモを参照したい場合だ。さらに、通常なら後で参照できないようなこと、例えばルームメイトに買い物を頼まれた際の会話、さっき会った人の名前、友人が教えてくれた誕生日なども振り返ることができる。「あの状況で、どうすればもっとうまく対応できたかな?」のように、自分の行動に対するフィードバックを求めることすら可能だ。
もちろん、日中のあらゆる瞬間を「聞き続ける」ウェアラブルに不安を感じる人もいるだろう。CESでBeeの共同創業者であるEthan Sutin氏に話を聞いたところ、人間が会話の内容を見ることはなく、データは販売されることもトレーニングに使われることもないと説明して安心させてくれた。
Amazonがこのバンドをどう位置づけるのかは明らかではない。最終的な製品は大きく姿を変えて、既存のAmazonのAI製品群と足並みをそろえ、「Alexa」のエコシステムに組み込まれる可能性が高い。Amazonは「Nova」という基盤モデルを通じてAI分野に深く関与しており、それを組み込むことで製品を強化できるだろう。
生成AIは広く普及し、さまざまな製品に組み込まれるようになった。今日では、ほとんどすべての新しいスマートフォン、ヘッドホン、スマートウォッチ、ウェアラブル機器が、ユーザーとデバイスのやり取りを最適化する生成AIの機能や体験を備えている。しかし、AIアシスタンスを次のレベルに引き上げるには、可能な限りリアルタイムに情報を取り込むデバイスが必要であり、新たなカテゴリーの製品が求められる。
この種の試みは、「rabbit r1」や「Humane Ai Pin」など過去にもあった。ただし、それらのローンチにおける最大の課題の1つ(性能以外)は、通常なら敬遠される余分なデバイスを人々に持ってもらう必要があった点だ。そのため、各社はユーザーがさりげなく容易にAIへアクセスできる、新しいフォームファクターを模索している。
OpenAIはJony Ive氏のスタートアップを買収したことからも分かるように、AI搭載のハードウェアを開発中だ。Googleは開発者会議「Google I/O 2025」で、「Android XR」搭載スマートグラスの詳細をさらに明らかにした。同製品は、「Gemini」の支援機能、レンズ内ディスプレイ、スピーカー、カメラ、マイクを従来型の眼鏡の形状に収めている。Metaは高級アイウェアブランドのOakleyと提携し、バッテリー持続時間を向上させた「Meta AI」内蔵スマートグラスを投入し、ユーザーがアシスタントに常時アクセスするのを容易にしている。
各社は、ユーザーが常時使うデバイスの1つに加えたくなるほど、AIを手軽かつ魅力的にするウェアラブル製品をリリースしようと競っている。この市場は近い将来、徐々に飽和していくだろう。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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