AI開発企業Anthropicが著作権で保護された書籍をAIの訓練に使った行為は「著しく変革的」でありフェアユースに該当するとの判決を、米連邦地裁のWilliam Alsup氏が米国時間6月23日に下した。フェアユースをめぐって裁判所がAI企業を支持したのは初めてで、生成AI企業にとっては大きな勝利、クリエイターには打撃となった。
フェアユースは米国の著作権法に組み込まれた原則で、4つの基準を満たす場合に限り、権利者の許諾なく保護対象のコンテンツを特定の目的で使用できる。例えば学術論文を書く際などだ。テクノロジー企業は、高度なAIシステムを開発するには人が制作した大量のコンテンツへのアクセスが不可欠で、そのための例外としてフェアユースが認められるべきだと主張している。
一方で作家、俳優をはじめ多くのクリエイターは、自分たちのコンテンツをAIの推進力として利用することはフェアユースではないと明言してきた。出版社やアーティスト、コンテンツカタログの権利者は、OpenAI、Meta、MidjourneyなどのAI企業が高額だが一般的なライセンス手続きを回避するために、知的財産を侵害しているとして訴訟を提起している(米CNETを保有するZiff Davisも2024年4月、OpenAIを相手取り、同社がZiff Davisの著作物をAIの訓練・運用に無断使用したとして提訴した)。
Anthropicを著作権侵害で訴えている作家たちは、自分たちの書籍が違法なやり方で、つまり海賊版として入手されたと主張する。このことがAlsup氏の判決における2つ目の要点につながる。同氏はこの入手方法に懸念を示した。判決文によれば、Anthropic共同創業者のBen Mann氏は、海賊版であることを知りながらLibGenから500万冊の書籍をダウンロードした。Anthropicは同様に、Pirate Library Mirror(PirLiMi)からも200万冊の無許可書籍をダウンロードしたとされる。
判決文はまた、Anthropicが紙の書籍を購入し、「独自の書誌メタデータのカタログ」を構築した経緯も示している。それによると、Anthropic副社長のTom Turvey氏は「世界中のすべての書籍」を入手しつつ「法務・実務・ビジネス上の面倒」を最小化するよう命じられていた。その結果、同社は出版社から数百万冊にのぼる紙の書籍を購入し、製本を剥がして裁断、機械でスキャンして元の書籍を廃棄した。
Anthropicが紙の書籍を購入してデジタル化した行為自体はフェアユースに当たると判決文は述べる。一方、「恒久的かつ汎用的なライブラリーを作ること自体はフェアユースではなく、Anthropicの海賊行為を正当化するものではない」として、新たな審理を命じた。
Anthropicは著作権侵害で訴えられている多数のAI企業の1社であり、今回の判決は業界全体に大きな波紋を広げるだろう。海賊版入手に関する訴えがどのように決着するかが、Anthropicが支払う損害賠償額を左右する。しかし、複数のAI企業にフェアユースの例外が認められるようになれば、クリエイティブ業界とそこに従事する人々も確実に損害を被ることになる。
判決文(PDF)この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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