富士フイルムの小型デジカメ「X half」レビュー:楽しくて、かわいくて、ちょっと高い

Geoffrey Morrison (CNET News) 翻訳校正: 編集部2025年05月29日 07時30分

 数カ月にわたってうわさされていた富士フイルムの新しい小型デジタルカメラ「X half(エックスハーフ)」がついに正式発表された。ハーフサイズのフィルムカメラや2000年代初頭のコンパクトカメラをモチーフに設計されたX halfは、縦に長い光学ファインダーとプレビュー画面を装備し、縦構図の写真や動画を撮影できる。今回は実機を数時間ほど試してみたが、触れ込み通りの楽しさだった。友達と夜に外出するときなどに、気軽に持ち歩きたい一台だ。小さなバッグやポケットにも難なく収まるため、スマートフォンがなくてもシャッターチャンスを逃すことはない。

X halfをほぼ正面から撮った写真 提供:Geoffrey Morrison/CNET
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 とはいえ、価格を見ると躊躇(ちゅうちょ)するかもしれない。今回の記事ではスペックやターゲット層を含めて、X halfの第一印象をお届けする。

  1. ハードウェアはどんな感じ?
  2. いよいよ使ってみる
  3. どんな人向け?価格は?

ハードウェアはどんな感じ?

X halfの背面 提供:Geoffrey Morrison/CNET
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  • 1774万画素(3648x4864、2-in-1記録時は7296x4864)
  • 1型センサー
  • 32mm/f2.8レンズ(35mm判換算)
  • 光学式ファインダー搭載
  • 富士フイルム独自のフィルムシミュレーション対応
  • 重さ240g

 X halfの魅力はスペックだけでは語りきれないが、興味深いことは確かだ。このサイズのカメラに1型センサーが搭載されることは珍しくない。例えばソニーの「XV-1 II」もほぼ同サイズのセンサーを搭載しているが、価格はX halfよりもずっと高い。パナソニックの「ZS99」など、手頃な価格帯のカメラの場合には、センサーサイズははるかに小さくなる。また、X halfのセンサーは背面のプレビュー画面と同じく縦に長い。これはX halfが想定している用途を物語っている。つまり、撮った画像をSNSですばやく簡単に共有することだ。アスペクト比は横3:縦4を採用しており、縦構図の写真や動画を撮影できる。

X halfの底面 提供:Geoffrey Morrison/CNET
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 注目機能の1つが、2枚の写真を並べた組写真を作成できる「2-in-1」だ。実例はあとで紹介するが、仕組みはこうだ。まず1枚目の写真を撮り、そのあとフィルムカメラの巻き上げレバーを思わせるレバーを引いてフィルムを「送って」から、2枚目の写真を撮る。撮影した2枚の画像は個別に保存されるが、2枚を組み合わせた第3の画像も作成される。これは2枚の画像を横に並べたもので、間に入る境界線のスタイルは好みのものが選べる。写真だけでなく、動画同士を組み合わせることもできるが、面白いのは写真と動画の組み合わせも可能なことだろう。

X halfとX100VI X half(左)とX100VI
提供:Geoffrey Morrison/CNET

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 富士フイルム製カメラの利点として、人気の「フィルムシミュレーション」にも対応する。これは富士フイルム独自の機能で、複雑な編集を施さなくても、撮影の意図に合わせて画像の雰囲気を手軽に変えられる。この機能はInstagramに搭載されている「フィルター」のような単純なものではなく、色やトーンのさまざまな要素を全体の調和を保ったまま、時にはがらりと変化させることが可能だ。

 選択したシミュレーションモードは、本体背面の小型サブモニターに表示される。まるでカメラの中にフィルムが実際に装填され、そのパッケージが見えているような演出だ。このサブモニターをスワイプしながらフィルムシミュレーションを切り替え、メインのプレビュー画面で効果を確認する。この他、多彩な写真表現を可能にするフィルター機能も用意されており、「トイカメラ」「ハイキー」「ライトリーク」などを選べる。すべてを試せたわけではないが、いくつかは非常に楽しかった。

 「フィルムカメラモード」では、選択したフィルムシミュレーションに固定した状態で36枚、54枚、または72枚の画像を撮影できる。撮った写真を途中でプレビューすることはできず、他にも機能面の制約がある。つまり、フィルムカメラの不自由な撮影体験をあえて再現するというわけだ。この制約に魅力を感じる人もいるだろうが、個人的には好みではない。それは、フィルム撮影の不自由さを実際に経験してきたからかもしれない。しかし、この機能を気に入る人が多いだろうことは理解できる。

 今回のレビューでは専用アプリ「X half」は試せなかったが、フィルムカメラモードで撮影した画像の「現像」や2-in-1画像の作成・調整などに便利に使えるはずだ。

 X halfは他の富士フイルム製カメラと同じバッテリーを採用し、LEDフラッシュを搭載し、Bluetooth接続に対応する。同社のスマホプリンター「instax」と接続して、インスタント写真を印刷することも可能だ。本体カラーは3種類あり、今回のレビューでは上部がシルバーのものを使ったが、他に全体がブラックのものと、上部がチャコールのものが用意されている。

いよいよ使ってみる

 X halfは小さく、愛らしい。手のひらに乗るサイズで、使わないときはポケットにすっぽりと収まる。ロサンゼルスの街を歩きながら撮影してみたが、使っていない時は文字通り、手の中に隠れてしまい、外からは見えない。撮影を終えて電源を切っていても、次に面白い被写体を見つけたら、すぐに取り出して撮影できる。フィルムシミュレーションの選択も、サブモニターの上をスワイプするだけという手軽さだ。

建物内部の近景と遠景を組み合わせた2-in-1写真 提供:Geoffrey Morrison/CNET
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 X halfの使用感は「GoPro」に驚くほど近い。ほとんどの操作は背面のプレビュー画面をスワイプしたり、タップしたりするだけで完了する。ダイヤルを使うのは露出と絞りを調整するときくらいだ。個人的にはダイヤル操作が好きだが、モニターを利用するX halfのインターフェースはわかりやすい。大きなカメラに慣れていない人なら、なおさらだろう。内蔵フラッシュのオン・オフは側面のスイッチで切り替えられる。

図書館内部の遠景を近景を組み合わせた2-in-1写真 提供:Geoffrey Morrison/CNET
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 2枚の画像を左右に並べる組写真は、ストーリーを伝える方法として秀逸だ。例えば1枚は全体を捉えた画像、もう1枚はクローズアップにする。あるいはテーマは同じだが、異なるアングルから撮った画像を2枚並べる。前述したように、筆者はフィルムカメラの不自由さを再現するギミックには惹かれなかったが、この新機能は気に入った。面白い構図が見つかったら、それに合う画像や対照的な画像を撮れないか、近くを探してみる。この撮影アプローチは新鮮で、(やっぱり)楽しかった。

建物の2-in-1写真 提供:Geoffrey Morrison/CNET
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 まだ数時間しか使っていないため、画質についての最終評価はできない。しかし第一印象としては色の再現性が高く、十分な水準に達していると感じた。暗所での撮影性能は素晴らしいとは言えないが、許容範囲だ。この記事に掲載した撮影サンプルには、加工は一切加えていない。

どんな人向け?価格は?

 X halfがターゲットを絞ったカメラであることは間違いない。この縦構図の小型カメラに魅力を感じない人も当然いるだろう。それはターゲット層ではないからにすぎない。X halfがささりそうな友人に話をしたところ、このカメラの特徴をすぐに理解し、欲しいと即答した。X halfにできることは、たいていのスマートフォンでもできるという人もいるだろう。もっとも、それはどのカメラについても言えることだ。X halfの利点は、面倒な編集作業をスキップできること、そしてスマートフォンに縛られないことにある。それに何より、見た目がかわいい。

ケーブルカー乗り場 提供:Geoffrey Morrison/CNET
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 唯一の懸念は価格だ。850ドル(約12万円、日本ではオープン価格)という価格は、このカメラを気に入りそうな人々の予算をはるかに超えている可能性がある。ロサンゼルスのグランド・セントラル・マーケットでX halfを試していたとき、ある店の店主がX halfに興味を持った。そこで一通り説明すると、店主は興味をそそられた様子で「高いの?」と聞いてきた。そこで価格を伝えると、がっかりした声で「やっぱり高い」という返事が返ってきた。最近はあらゆるものが値上がりしているが、もう少し予算を足せば、米CNETが旅行用コンパクトカメラ部門の第1位に選んだリコーの「RICOH GR III」も視野に入ってくる。RICOH GR IIIの方がセンサーはずっと大きく、サイズも小さく取り回しやすい。

 しかし、X halfにはRICOH GR IIIにも他のカメラにないものがある。それは「楽しさ」というファクターだ。では、X halfには価格に見合う価値があるのか。その答えは、6月下旬の発売後、さらに使い込んでから出すことにしたい。

X half

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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