節約のために手頃な価格帯のスマートフォンを買うなら、カメラ性能はあきらめるべきだろうか。Appleの「iPhone 16 Pro」やサムスンの「Galaxy S25 Ultra」といった高価格帯のスマートフォンなら、確かに美麗な写真が撮れる。しかし、こうした上位機種やカメラが売りのスマートフォンは、買うとなると1000ドル(約14万円)はくだらない。
しかし朗報がある。Googleの「Pixel 9a」は499ドル(日本では税込7万9900円)にもかかわらず、魅力的な写真を撮影できる。細部まで鮮明で、質感もしっかりと表現できており、画質は上々だ。特にポートレートモードは特筆に値する。美しく自然な肌色を引き出すGoogle独自のアルゴリズムはPixel 9aでも健在だ。
しかし、2025年は興味深い展開があった。Appleが新しい低価格モデルとして「iPhone 16e」を投入し、優秀なカメラを備えたお手頃スマホの座をPixel 9aから奪おうとしたのだ。iPhone 16eはPixel 9aよりもレンズが1つ少ないが、美しい写真を撮影できる。iPhoneはスマホカメラの限界を突破し続けてきた。しかし、それは基本的にProシリーズの話だ。iPhone 16 Proは最安モデルでも999ドル(日本では税込15万9800円)。iPhone 16シリーズで最も安いiPhone 16eですら、Pixel 9aの499ドルには及ばない。
では、高いスマートフォンの方がいい写真を撮れるのだろうか。
この問いへの答えを求めて、筆者はiPhone 16eとPixel 9aを持ってサンフランシスコの街に繰り出した。そして数百枚の写真を撮影してみたところ、驚くべき結果が得られた。果たして、筆者が気に入ったのはどちらのスマホカメラだったのだろうか。
最初に言っておくと、この比較は公平とは言えない。Pixel 9aは広角、超広角、自撮りの3つのカメラを搭載しているのに対して、iPhone16eには広角カメラと自撮りカメラの2つしかないからだ。どちらもメインカメラには4800万画素のセンサーを搭載し、4つの画素を1つにまとめるピクセルビニングによって、より多くの光を取り込む。ノイズも減るので、ノイズ除去も少なくて済む。ノイズ除去はやりすぎると画像がぼやけやすい。
どちらの機種も望遠カメラは搭載しておらず、センサーをクロップして2倍ズームを実現している。筆者がテストした限りでは、ズームでも十分な画質の写真が撮れた。
Pixel 9aにはマクロモードがあり、近接撮影が可能だ。興味深いことに、Pixel 9aは他の多くのスマートフォンと異なり、マクロ撮影に超広角カメラを使わない。残念ながら、iPhone 16eにマクロモードはない(iPhone 16シリーズの他のモデルにはある)。しかし、専用のマクロモードほどの近接撮影はできないものの、メインカメラを使ってマクロ撮影に近いことは可能だ。
iPhone 16eとPixel 9aで撮影したお気に入りの写真をいくつか紹介する。
総じて、Pixel 9aはダイナミックレンジがかなり広いと感じた。暗い場所でも細部をしっかり描写できるが、明度を上げすぎる傾向がある。例えば猫のMaisieを写した下の写真を見てほしい。全体にかなり明るく補正されている。一方、iPhone 16eで撮ったMaisieの画像は、毛のディテールや質感をあまり再現できていない。この2枚の写真の中間くらいがMaisieの実際の姿だ。
Pixel 9aは寒色寄りだ。iPhone 16eは、特に屋外の場合はコントラストが強い。次の写真は、サンフランシスコのミッション地区にあるレンガ造りの建物を撮影したものだ。両方の写真に写っているレンガに注目してほしい。
ポートレートモードに関しては、Pixel 9aもiPhone 16eも専用の望遠レンズは搭載していない。iPhone 16eに至っては背面カメラが1つしかないため、AIと機械学習のみを使って深度を判断し、背景をぼかしている。
続いて、米CNETのスタッフであるFaith Chihilをポートレートモードで撮影した下の写真を見てほしい。写真を見比べて、まず気づいたのは黄色いセーターと緑色の椅子の質感がかなり異なることだ。iPhone 16eの写真は、緑色の椅子を除けば被写体と背景の境界は自然に見える。肌の色はPixel 9aが最も忠実だ。iPhone16eは肌がくすんで見える。
また、iPhone 16eのポートレートモードは人間のみを被写体として認識するようだ(iPhone 16とiPhone 16 Proは動物もポートレートの被写体として自動認識する)。そのため、カップケーキなど人間以外を被写体として背景をぼかしたドラマチックな写真が撮りたいならPixel 9aを勧める。またしても猫の写真で申し訳ないが、猫のMaisieをPixel 9aのポートレートモードで撮影した画像も見てほしい。
iPhone 16eとPixel 9aはどちらもナイトモード(Googleでは「夜景モード」)を搭載する。下の写真は、レゴで作ったスペースシャトルを薄暗い部屋で撮影したもので、どちらもいい写真とは言えない。iPhone16eの方がノイズは少ないが、コントラストが強い。個人的にはPixel 9aの方が好みだ。
夕暮れ時の住宅街でも撮影してみた。街灯の影響で、iPhone 16eのナイトモード写真はオレンジ色が強く出ている。明度もiPhone 16eの方が高い。次は、画像の上部を横切っている電話線に目をこらしてほしい。iPhone 16eは電線をつながった線として表現しているが、Pixel 9aの電線は小さなギザギザの断片で構成されている。
iPhone 16eとPixel 9aはどちらもカメラ性能に関しては欠点がある。とはいえ、カメラ性能だけを基準に低価格帯のスマートフォンを買う人はほとんどいないだろう。どちらを買っても十分に満足できる写真を撮影できるはずだ。
iPhone 16eの方が価格は高く、超広角レンズもないが、写真の画質は十分だ。Pixel 9aは499ドルという価格にしてはカメラ性能が高いと感じるため、個人的にはPixel 9aを選ぶだろう。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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