デジカメの人気が再燃している5つの理由--スマホに追いやられたはずがなぜ?

Geoffrey Morrison (Special to CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2025年03月12日 07時30分

 読者の皆さんが一定以上の年齢なら、初めて使ったデジタルカメラを懐かしく思い出すことがあるかもしれない。デジタルカメラと聞いたとたん、サイズや形、いろいろなボタンがありありと思い浮かんだはずだ。その素晴らしいデバイスで撮った瞬間がよみがえった人もいるに違いない。そう、友だちや家族、出かけた先の体験を写真に収められるというのは、画期的なことだった。さらに上の年齢であれば、フィルムという制限がなくその費用もかからないというのも、これまでの人生で起こった画期的な出来事だっただろう。

コンデジを構える女性 提供:GettyImages/Pawel Wewiorski
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 そんな世代の方からすれば、デジタルカメラの人気が再び上昇していると聞いたら、驚くだろうし、少し困惑するかもしれない。かつては人気商品だったが、その後、誰もがスマートフォンのカメラに移行したのは、ご存じのとおりだからだ。そう思うのも、あながち間違いではない。カメラ市場は2010年代の後半に入って急落し、メーカー各社はローエンドとミッドレンジのデジタルカメラの製造をほとんど、またはすべて終了した。

 ところが最近になって、中古カメラ市場が活況を呈しているうえ、それ以上の変化が見られるようになっている。キヤノン、ニコン、パナソニック、富士フイルムといったメーカー各社が旧モデルにUSB-CやBluetoothといった新しい機能を追加してアップデートしたり、全く新しいモデルをリリースしたりしているのだ。なぜこの現象が起こっているのか、5つの理由を説明しよう。

1. レトロ感

 「古きものはまた新しくなる」という古くから伝わる格言が、今でも当てはまる。どの世代も、それ以前に存在したテクノロジーや文化に魅力を覚える。人は、一定の年齢に達すると、親たちが同じ年齢の頃に知っていたこと、やっていたことに関心を持つようになる。近年になってアナログレコード、カセットテープ、フィルムカメラ、インスタントカメラが人気を集めたのがいい例だ。

ソニーの「Cyber-shot」 ソニーの「Cyber-shot」
提供:CNET

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 若い頃に持っていたポケット全自動カメラを持ち歩くことは、「年配」になった人にとっては、面白さや心温まるノスタルジーも感じられるのだろう。

2. 特別感

 スマートフォンで写真を撮ることは、かつて目新しかったが、今では当たり前になった。確かに、ある瞬間を捉えられるようになったが、多くの人にとって写真そのものは特別ではなくなっている。写真から思い出される瞬間や記憶は特別かもしれないが、高度な処理を経た画像そのものに特別感はない。カメラを取り出し、電源が入るのを待ってから、その瞬間を、この特別な1枚を撮るということにフォーカスする。そういう行為で特別感が増すのである。

3. スマートフォンから切り離されている

 筆者がこれに気づいたのは、「PENTAX 17」のレビューをして、フィルムカメラに戻るようになってからだ。スマートフォンを取り出して写真を撮るつもりだったのに、ついつい別の用件に注意が向いてしまうことがある。「メッセージが来た」とか、「メールや『Slack』、『Teams』を今すぐチェックしなければ」ということになる。写真を撮ることだけに特化したデバイスを手にすれば、スマートフォンはポケットやハンドバッグなどにしまったまま、視界に入れずに済ませることができるし、その貴重な瞬間だけはその存在を忘れていられる(同じことはMP3プレーヤーにも言える)。

カメラを構える少女 提供:GettyImages/Crezalyn Nerona Uratsuji
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 最近のカメラの売り上げ上昇を後押ししている若い世代は、子どもだった頃、親たち(何を隠そう、筆者はその親世代だ)がいつもスマートフォンどっぷりだったという点も一考に値する。Z世代(1990年代後半から2010年頃に生まれた世代)の後半からアルファ世代(2010年代序盤から2020年代中盤に生まれた世代)の前半にかかるくらいの層に聞いてみると、オンラインを好まない人が多い。物心ついた頃にはネットがあり、ネットというものが外から見ても中から見てもいかにひどいか、よく分かっているからだ。オンラインではない、自分と友だちだけの場所を作りたがっている。「その場所、その瞬間を大切にしたい」と感じているのである。

4. 写真が良くなる、または少なくとも別物になる

 最新のスマートフォンは、ほとんどどれでも素晴らしい写真が撮れる。イメージセンサーが比較的小さく、レンズがかなり小さいにもかかわらず、だ。その画質性能の大部分は、驚くほど細かな画像処理によって実現している。ただし、そのせいで、スマートフォンで撮った写真は一定の「見た目」になることも多い。

キヤノンのPowerShot 提供:CNET
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 デジタルカメラといってもさまざまで、旧式の全自動タイプからフルサイズのデジタル一眼まで、またその中間など、多種多様である。デジタルカメラで、より優れた写真を撮ることは可能ではあるが、結果は保証されていない。それより簡単で可能性が高いのは、スマートフォンで撮った写真とは見た目が違う1枚が撮れるということだろう。

 デジタルカメラで撮った写真が、スマートフォンほど美しくない可能性もある。だが、それこそがポイントだ。「完璧」な写真がほしければ、スマートフォンで撮影すればいい。独特のスタイルや異なる趣きを求めるなら、低画質で、よく言っても時代後れ風の仕上がりの写真が撮れるカメラを使うに越したことはない。もちろん、フィルターを使えば、スマートフォンの写真を「2000年前後」のヴィンテージ風に見せることはできる。それでも、その見た目を実現したければ、昔のデジタルカメラで撮る写真の方が勝っている(ここで「勝っている」というのは、客観的には劣っているという意味になる)。

5. 「TikTok」

 「TikTok」のトレンドは、ポップカルチャーをめぐる議論を左右することが多い。良いことではないが、現実にそうなっているのだ。そのTikTokで最近何が流行しているか、想像がつくだろう。

 TikTokでの人気は、その外の世界にも拡散し、最終的にはネットに張り付いているようなユーザー(筆者もそうだ)にまで広がっていく。判断は皆さんに委ねるが、これは確かな傾向であり、いったんは死に絶えた、あるいは少なくとも死に絶えかけていたテクノロジーが復活した大きな要因になっている。だから、喜ぶべきなのかもしれない。

手元の「COOLPIX」や「Cyber-shot」はとっておこう

 短期間でこれほど人気が高騰した関係で、一部の人気機種は入手がかなり困難になっている。そういうカメラは、実際に使う人、できれば写真に興味を持ってくれる人の手(レコードを買ってもプレーヤーを持っていない人も多いので、そういう層にではなく)に渡ってほしい。高価な趣味ではあるが、筆者も大好きな趣味であり、楽しむ人が増えてほしいと考えている。長い目で見れば、多くの大手メーカーから新モデルが出る、少なくともアップデートモデルが出ることになるので、写真を趣味にしている人にとっては恩恵になりそうだ。

カメラのシャッターを押す仕草をする犬 提供:GettyImages/David Petrus Ibars
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 そういうわけで、長らく開いていない引き出しの中や、クローゼットの奥の方を探してみよう。昔の「デジカメ」がほこりをかぶっていたり、ずっと忘れていた写真に埋もれたりしているかもしれない。流行に乗ってクールなレトロカメラを使うようなことをしたくなければ、ネットオークションに出すという手も残っている。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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