筆者は少々古いタイプで、服を買う時には、店舗で服を試着して実際に触れた感触を大事にしている。世の中ではAmazonやオンラインショッピングが全盛時代を迎えているが、オンライン上のレビューを熟読して服を選ぶよりも、実店舗の試着室で試してみたいのだ。
日々溜まっていく段ボール箱の山や無駄なゴミもこれ以上増やしたくないし、どうしてもオンラインで注文しなければならないなら、大丈夫だと自信を持って購入したい。そこで筆者は、最近は多くのブランドが人工知能(AI)でカタログや写真を生成しているであろうことを考えれば、自分の購入をAIに手助けしてもらってもいいかもしれないと考えた。
支払うお金や、返品の数や、試着する時の気まずさを減らせるのであれば、AIを使って洋服を「試着」するのもよさそうだ。そこで、2つのテストをやってみることにした。1つ目のテストは、AIで新しい服を試着するというもので、2つ目は、すでに持っている服を使って、AIの再現結果がどのくらい正しいかを検証してみるというものだ。
服装を扱うAIを検索したところ、「The New Black」というサービスに行き当たった。ファッションデザイナーやブランドが利用しているプラットフォームだという。このサイトには、スケッチからデザインを起こす機能や、モデル生成機能、AIスタイリストアシスタント、さらには香水ボトルなどのデザイン生成機能もある。
The New Blackでデザインを作成するためには、月額利用料(5ドル~)を支払なくてはならない。しかしバーチャル試着機能は、サインアップ時にもらえるクレジットを使うことで、無料で利用可能だった。筆者は、電子メールで送られてくるコードを使って無料クレジットを受け取った。
さあ、「着せ替え」の時間だ。
筆者は、メニューの「Virtual Try On」(バーチャル試着)タブに移動し、仕様を確認した。テキストプロンプトで指示をしたり、アイテムの画像をアップロードしたりすることで、バーチャルな「試着」ができるようだ。また、AIに衣装を生成させて、それを試着することも可能だった。すごい!
1つ目のテストに使う衣装には、かねて目をつけていたFree Peopleのジャケットを選んだ。この服は200ドル以上もするため、それだけのお金を払う前に、自分に似合うかどうか確かめたかったのだ。
ブランドのウェブサイトでジャケットの画像を保存した後、画像から試着結果を出力するプロンプトを使用するために、アップロードする自分の写真を選んだ。
これが、筆者がアップロードしたジャケットと自分の写真だ。
その後、「tops」(トップス)を選んで、「try on now」(試着する)をクリックした。
するとAIは筆者を、リップドジーンズを穿いていた過ぎ去りし日々に逆戻りさせてしまった。タトゥーは正しく表示されたが、腕は一本なくなった。また、ジャケットも輝きをなくしてしまい、独特な色とストライプはほとんど消えてしまった。またなぜか、写真のモデルのスカーフが私にも巻かれていた。
筆者は、無料クレジットを使い果たしてしまわないように、テキストのプロンプトを試してみようと考えた。AIは筆者の年齢と国籍について、30歳のイタリア人だと自動的に判断していた(これは褒め言葉として受け取っておこう)。
そこで国籍をオーストラリアに変え、できるだけ近い画像が得られるように、「ChatGPT」でジャケットの説明文を作成してもらった。
その後、もう一度実行してみた。しかし、その結果はひどいものだった。
出力されたジャケット自体は気に入ったのだが、それはAIが勝手に生成したものであったため、筆者の目的にはあまり役に立たなかった。画像の問題ではないことを確認するために、ジャケットと筆者の別の写真をアップロードしてみたが、結果は似たようなものだった。
この時点でクレジットはなくなった。最後までテストを行うために、サインアップして40クレジットのパッケージを5ドルで購入した。
それは幸いだった。その後、進展があったからだ。
手は何かおかしいし、ストライプは若干変になっていたが、それ以外はそれほど悪い結果ではない。
2つ目のテストには、以前購入したBlankNYCのジャケットの画像と、それを着ている自分の写真を選んだ。
AIが、実際の自分の画像にどれだけ近いものを出力できるかを見たかったので、自分の写真については、モデルのポーズになるべく近い、正面から写ったものを見つけてきた。今回のテスト結果はそれほどひどいものではなかったが、AIは選んだ服に合う適切なアイテムをコーディネートするのが苦手なようで、服の印象が違って見えることもあるかもしれない。
AIを使って服を試着するのは楽しいし、非常にうまくいくこともあるが、生成される画像にはあまり期待しない方がいい。どんなAIツールにも言えることだが、出力結果はプロンプト(あるいは写真)の質とコンテキストによって決まり、服をうまくコーディネートできない場合もある。
そもそも個人のスタイルというのはそういうものだ。スタイルはその人だけのものであり、予想できるものではない。ある服を実際に(物理的に)着てみれば、あらゆるファッションのルールに反して、なぜか似合うことだってある。自分のショッピングには、棚にかかっている次の商品を見たら、たまたま気に入ったものが見つかるというような偶然の要素を残しておきたい。
AIの衣装ジェネレーターが使えるレベルになるまでには、今しばらく準備期間が必要なのかもしれない。それまでは自分のセンスを信じるしかないだろう。あらゆることをアルゴリズムに任せられるわけではない。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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