「質問がひどすぎる」フジ会見で記者側に批判--経営陣が同情される異例の事態に(石川温)

 1月27日夕方から28日未明にかけて開催された「フジテレビ、やり直し会見」をオンラインで視聴した。仕事の都合もあり、1時間ほど中座してしまったが、結局、9時間近くも見続けたことになる。

 最初こそ「フジテレビ経営陣の対応はどうだったのか」という関心で見ていたが、途中からは「経営陣は頑張っている。メディア側がひど過ぎる」という感想に変わり、24時を過ぎたころには老体にむち打っている経営陣の身体を心配し、思わず応援してしまったほどだ。SNSでも同様の投稿が相次ぎ、Xでは「フジテレビかわいそう」がトレンド入りした。。

  1. 10時間近く続いた会見で「乱暴なメディア」が可視化
  2. 今や会見はオンラインで全国に配信
  3. フジテレビ側の準備も不足していた

10時間近く続いた会見で「乱暴なメディア」が可視化

 ただ一方で、乱暴に振る舞うメディアにフルボッコにされたからこそ、経営陣に同情票が集まったという側面もある。

 筆者もIT業界の端くれにおり、各企業が開催する記者会見に日々、足を運んでいる。もちろん、フジテレビのような謝罪会見にもたびたび参加している。

 フジテレビの会見で目に余ったのが、「質疑応答」にも関わらず、長時間、自分の主張、感想、鬱憤を経営陣にぶつけるだけぶつけ、肝心な質問をしないという記者だ。

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 質疑応答は自分の意見を述べる場ではない。質問をする時間だ。仮に経営者に自分の意見を伝えたいのであれば、自分の「記事」や「映像」に落とし込むべきだ。

 本来、記者会見の時間は有限であり、多くの記者が簡潔に質問をしていけば、10時間以上もかからなかったのではないか。

 経営陣の返答に対して、怒号を飛ばしたり、マイクを持っていない人間が延々と持論を主張するなど、不規則発言が本当に目立った。あれでは、企業側があらかじめ「クローズドな会見」にしたいというのもよくわかる。

 前回の会見を完全なクローズドにしてしまったフジテレビの落ち度はあるが、誰もが参加できる記者会見にする必要がどこまであったのか。

 テレビ業界や芸能関係など、「普段から、この業界を取材しているメディア」という参加資格を設け、記事や映像をアウトプットしている実績を求めてもいいだろう。

 YouTuberなどPVを稼ぎたいという、単なる「野次馬」まで参加させる必要はない。

 世間ではマスコミのことを「マスゴミ」と揶揄する声が多いが、感情をむき出しにして、経営陣に罵声を浴びる記者はそう呼ばれても仕方ないかもしれない。

 記者会見という、企業と記者が面と向かう場面は、何もメディアが上の立場ということはなく、どちらも対等な関係だ。フジテレビはメディアを通じて、いま何が起こっているのかを視聴者やスポンサー、社員、関係者に伝えていくべきだし、メディアはその声を自分の媒体を通し、独自の視点をつけて発信するに過ぎない。

 「記者会見で経営陣を懲らしめてやろう」という正義感なんて誰も求めていないし、見ていてこちらが恥ずかしくなってくる。

今や会見はオンラインで全国に配信

 記者のなかには「フジサンケイグループのドン」と言われている日枝体制や、総務省からの天下り(質問した記者の認識)を上から目線で批判し、「俺って巨大権力に立ち向かっていてカッコいい」と悦に浸っている記者もいたが、あまりに勉強不足で、SNSで批判されていたのが、本当に痛々しかった。

 会見では、港浩一社長を筆頭に「経営陣が時代の変化について行けなかった」ことが反省点として挙げられていた。しかし、本当に時代の変化について行けていなかったのは参加していていたメディアの方ではなかったか。

 会見の映像が10分遅れとはいえ、フジテレビを始め、TVerやYouTubeなどで配信されていた。記者の不規則発言、プライバシーを全く無視し、セカンドレイプにつながりかねないやりとりが日本中に可視化されていた。あれをみて、「フリーランス記者はろくな人間がいない」と怒りを感じた人も多かっただろう。

 しかし、そんな混乱が生じた会見でも、自分勝手な記者を制する冷静な記者や、経営陣への挑発的な質問こそがプライバシーの侵害に当たると指摘した冷静な記者も少なからずいた。そうした横暴なメディアをなだめた記者に対しては思わず拍手を送ってしまった。

 「フリーランス」だからといって、すべての人間がルールを守れない記者というわけではないことを世間に示してくれたことは、同業者として本当に勇気づけられた。

フジテレビ側の準備も不足していた

 一方で、フジテレビの記者会見における体制も、準備不足があったのは否めない。質疑応答のすべてを経営陣5人に委ねるのはあまりにリスクがありすぎた。

 もっと、広報やコンプライアンス室の社員が経営陣を手助けできる環境を作っておくべきだった。

 かつて、KDDIの「通信障害会見」では経営陣の前に小さなモニターが設置してあった。万が一、社長など経営陣が言葉に詰まったときは、モニターに社員が資料などを投影し、発言をフォローしていた。

 テレビ局は毎日カンペを多用して番組を進行している「カンペのプロ」だ。それだけに、もっとモニターを使ったカンペを活用すれば、ここまで長時間な会見にならなかったのではないか。

 さすがに2時間を超えると、質問する記者も回答する経営陣も集中力が切れ、頭が回らなくなり、的確な質問、回答ができなくなるものだ。ましてや深夜0時を回り2時まで終わらないような会見になってしまっては、同じような質問が延々と出るばかりで、ちっとも生産的ではない。

 今回のフジテレビによる会見は、是非とも他の企業は「謝罪会見におけるバイブル」として、検証および研究すべきだ。今後、自分たちの企業が謝罪会見をするような状況に追い込まれた際、いかに中継映像を通じて「これまでの雰囲気を変えるか」という参考例になることだろう。

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