「iPhone 16 Pro」のカメラは優秀だ。数あるスマートフォンの中でも、最高水準の写真を撮影できる。複数の高性能なレンズと新しい「フォトグラフスタイル」のおかげで、要求の厳しい写真家もうなるような写真を撮影できる。その性能は「Galaxy S24 Ultra」や「Pixel 9 Pro」、「Xiaomi 14 Ultra」といったカメラ自慢のライバルたちにも引けを取らない。
とはいえ、完璧なカメラとも言い切れない。筆者は長年スマートフォンをレビューしてきた記者として、またプロの写真家として、ハイエンドのスマホカメラには大いに期待している。iPhone 16 Proを発売日から使ってきて、いくつか気になる点も出てきた。
そこで9月に登場するとみられる「iPhone 17」のカメラに望むことをまとめた。
iPhone 16 Proのメインカメラのセンサーサイズは1/1.28インチだ。決して小さくはない。Galaxy S24 Ultraの1/1.33インチと比べれば、やや大きいくらいだ。しかし、もっと大きくできる余地はある。イメージセンサーが大きいほど、取り込める光の量が増え、ダイナミックレンジは広くなる。これが高性能デジタルカメラの多くが「フルフレーム(フルサイズ)」のイメージセンサーを採用している理由だ。Hasselbladの「907X」のような最高級カメラになると、被写体を緻密に描写するために、さらに大きい「中判」センサーを搭載する。
小米科技(シャオミ)が「Xiaomi 14 Ultra」に1インチのセンサーを搭載した理由はここにある。1インチというサイズは、ほとんどのスマートフォンのイメージセンサーより大きい。これにより、Xiaomi 14 Ultraはさまざまな環境で魅力的な写真を撮影できる。少なくともAppleには、Xiaomiと同じ1インチのセンサーを採用してほしい。夢物語かもしれないが、iPhone 17はフルフレームのイメージセンサーを搭載した初のスマートフォンになるかもしれない。しかし大型イメージセンサーを搭載するためには、本体とレンズも大型化する必要がある。となると、むしろミラーレスカメラに通話機能を追加した方が合理的かもしれない。
Xiaomi 14 Ultraがずば抜けた写真性能を誇る理由はもう1つある。メインカメラに搭載された可変絞り機構だ。絞りは最大でF1.6となっており、iPhone 16 ProのF1.78よりかなり広い。このおかげで、薄暗い場所でも多くの光を取り込み、被写体の周辺に自然なボケを生み出せる。
一方、F4.0まで絞ることができ、そうすると点光源の周囲に光芒を発生させられる。筆者はスマートフォンを利用した夜景撮影で光芒を発生させるのが好きだ。まるでプロ用のカメラやレンズで撮ったような写真を撮影できる。同じ光源をiPhoneのカメラで撮影しても、丸い光の点のようにしか見えない。
AppleはiPhoneのカメラにさまざまなスタイルや効果を組み込んできた。iPhone 16シリーズはさらなる進化を遂げ、効果をより自由にコントロールできるようになり、色調の選択肢も増えた。米CNETシニアエディターのLisa Eadiciccoも、今回のフォトグラフスタイルを「新しいiPhoneに追加された新機能の中で一番のお気に入り」と称賛している。
筆者も、この機能は素晴らしいと思う。いや、「素晴らしいスタート」というべきか。「アンバー」や「ゴールド」などのスタイルは写真に温かみを加え、「クワイエット」スタイルはヴィンテージフィルムのような色あせた効果を生み出す。それでも選択肢はまだ多いとは言えない。次のiPhoneではフォトグラフスタイルをさらに強化し、もっと多くの色調――願わくは、コダックや富士フイルムのヴィンテージフィルムを再現したような色調を取り入れてほしい。
もちろん「VSCO」や「Snapseed」のようなサードパーティー製アプリを使えば、いくらでもカラーフィルターで遊べる。しかし、Appleが用意したスタイルから選択できれば、最初から指定した雰囲気で撮影し、気に入らなければ後から変更することも可能だ。画像に不可逆の変更が加えられることはない。
フォトグラフスタイルはHEIF(高効率画像フォーマット)で撮影した画像にしか使えない。この仕様は、フォトグラフスタイルの可能性を狭めたように思う。残念ながら、「Apple ProRAW」モードで撮影した画像にフォトグラフスタイルを適用することはできない。筆者はApple ProRAWの編集の自由度が気に入っている。HDR合成など、iPhoneの高い処理性能を活かしながら、編集しやすいDNG形式のRAWファイル(.dng)を出力できるからだ。
一般に、DNG形式のファイルは画像の暗い部分を明るくしたり、ハイライト部分を抑えたりする際の自由度が高く、汎用性に優れる。以前はProRAWでの撮影時にAppleのカラープリセットが使えたので愛用していた。ハイコントラストのモノクロモードでストリート風の写真を撮っては、あとでRAWファイルを編集したものだ。
しかし今は、同じようなモノクロ映像を作るためにはHEIF形式で撮影しなければならず、ProRAWの利点を得られなくなった。
次のiPhoneではカラープリセットとフィルターを動画でも使えるようにしてほしい。「iPhone 15 Pro」からProRes Logでの動画撮影が可能になったが、iPhoneカメラから出力されるLogファイルの映像は非常にコントラストが低く、灰色がかった色になってしまう。基本的に、このLogファイルはiPhone以外の場所で編集を加え、LUT(ルックアップテーブル)と呼ばれるコントラストや色のプリセットを適用して仕上げることが想定されている。LUTとは、映像の色味を調整するためのプリセットツールのことで、例えばホラー映像なら暗い青系統の色、恋愛ドラマのような雰囲気にしたいなら暖色系の明るい色調に調整する。
Appleは、ProRes動画をiPhone上で編集するためのLUTを提供していない。しかしコントラストを上げるだけでは、Logファイルを十分な水準の映像に仕上げることは不可能だ。そもそもProRes機能自体が、撮影した映像はiPhoneから取り出し、「Davinci Resolve」のようなソフトウェア上で適切なカラーグレーディングを施し、洗練されたプロフェッショナルな映像に仕上げることを想定しているのだろう。
しかし個人的には、iPhoneに残っている未編集のLogファイルをなんとかしたい。筆者のギャラリーは、外部ソフトウェアでのカラーグレーディングを待っている、ほとんど手つかずの動画ファイルでいっぱいだ。もし可能なら、どんよりとした色合いの映像を美しく調整してから「Instagram」に投稿したり、「WhatsApp」で家族と共有したりしたい。
iPhone 17では(あるいはソフトウェアアップデートを通じてiPhone 16でも)、iPhoneに保存されているProRes動画に直接、Apple製LUTを適用できるようになってほしい。
こうした変化がすべて実現したなら(さすがにフルフレームのセンサーはあきらめるとしても)、iPhone 17は圧倒的なカメラ性能を誇る唯一無二のスマートフォンになるだろう。
Apple
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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