M4搭載「Mac mini」の驚くべきところは、より一層小さくなったことではない。M2搭載モデルよりもはるかに小さく、しかもさらに強力なM4チップを搭載しているのに、冷却性能を維持できている点だ。この新型Mac miniは手のひらに収まるサイズで、普段使いのホームオフィスコンピューターから、本格的なプロ向けのコンテンツ制作マシンまであらゆる用途に対応でき、最大で3枚の6Kディスプレイを使用できる。M4版とM4 Pro版のMac miniでは値段にかなりの差があるが、筆者が試した799ドル(日本では税込12万4800円)のM4版でも、メディアを制作したりAppleのAIツール群である「Apple Intelligence」を使ったりするのに十分なパワーを備えている。
筆者がレビューしたMac miniの概要
M4搭載Mac miniの発売は、最新のmacOSである「macOS 15.1 Sequoia」や、日常的な作業を手助けしてくれる、ローカルで動作する個人向けAIであるApple Intelligenceがリリースされてから間もなくのことだった(ちなみに、すべての新型Macに16GB以上のユニファイドメモリが搭載されている理由の1つは、Apple Intelligenceを使えるようにするためだ)。
Sequoiaには試してみる価値がある新しいツールがいくつか導入されたが、これらはMac miniでもすべて問題なく使えた。特に「iPhoneミラーリング」には、多くの人が興味を持っているだろう。その名前からも分かるとおり、これはディスプレイにiPhoneの画面が表示され、そこからiPhoneのあらゆるものにアクセスできるというものだ。例えば、ソーシャルアプリを開いて何かを投稿したり、通知をチェックしたりすることもできる。筆者のiPhoneは仕事用なので、Mac miniでこのレビュー記事を書いている間にも、iPhoneミラーリングを使ってメールやSlackのメッセージを読み書きしたりしていた。ただ、動作自体はスムーズなのだが、タッチスクリーンなしでタッチスクリーンを前提としたデバイスを操作することになるので、使い勝手は最高とはいえない。
一方で、Mac miniとApple Intelligenceは完璧な組み合わせに思えたし、特にホームオフィスでは役に立ちそうだった。ツールの多くは、仕事や際限のないやることリストを手早く片付けるためのものだ。例えば、メールを要約したり、返信を生成したり(「メッセージ」アプリでも同じことができる)、Siriで自然言語を使ってデバイスの設定項目を探したり、「メモ」アプリで音声を録音して文字起こしをし、そのあとApple Intelligenceでそれを要約するといったことができる。
しかし、筆者が特に気に入ったのは「フォト」アプリの2つの機能だ。1つ目は「クリーンアップ」で、これを使えば写真から人物やものを簡単に取り除くことができる。これはGoogleやAdobeなどが提供しているAIツールに似たもので、修正能力はかなり高いが、いつでも完璧に消せるわけではない(ただしそれは競合他社の製品にも言えることだ)。
もう1つのお気に入りは自然言語を使った検索機能で、探しているものを入力するだけで、探している写真を掘り起こしてくれる。筆者はカクテルのレシピを含むたくさんのレシピの写真を撮影して貯め込んでいるのだが、試しにそれを探してみたところ、「カクテル」で検索してみると、飲み物や飲み物を飲んでいる人の写真が出てきた。そこで、検索ワードに「レシピ」を加え、最後に「ウイスキー」を加えると、筆者が探していた画像を見つけることができた。しかも筆者は、写真へのタグ付けなどの作業を一切やっていなかったのにだ。整理整頓が得意なタイプの人なら、人の顔に名前を割り当てておけば、検索で非常に役に立つだろう。
ベースモデルのM4搭載Mac miniは599ドル(日本では税込9万4800円)で、これはかなり割安な価格だと言えるだろう。このモデルには、10コアのCPU、10コアのGPU、16GBのユニファイドメモリー、256GBのSSDが搭載されている。筆者が試したのは799ドルのモデルで、違いはストレージ容量が512GBだったことだけだ。999ドル(同15万4800円)払えば、メモリーが24GB、ストレージが512GBのモデルを購入できる。基本的に、メモリーやストレージが1段階増えるごとに価格が200ドルずつ上がるしくみになっており、(Proではない)M4搭載で1799ドル(同27万4800円)の最大構成では、メモリーが32GB、ストレージが2TBになる。
一般論として言えば、1段階につき200ドル高くなることを考えれば、お金はストレージではなくメモリーに使った方がいい。ストレージが256GBでは少ないと感じるだろうが、高速アクセスが可能なThunderbolt 4のUSB-Cポートが3つ用意されているため(M4 Proチップ版なら、さらに高速なThunderbolt 5が使用できる)、必要なら高速な外付けストレージを追加すればよく、その方が安く上がる。
また今回の新型では、メモリーとストレージの増設に加え、CPUをM4 Proチップにアップグレードすることも可能になった。1399ドル(日本では税込21万8800円)払えば、12コアのCPU、16コアのGPU、メモリー24GB、SSD 512GBのMac miniが手に入り、さらに200ドル(同3万円)追加すれば、CPUを14コアのM4 Proにできる。M4 Pro版の最大構成は、メモリーが64GB、ストレージが8TBとなっており、さらに100ドル(同1万5000円)払えば、ネットワークストレージを利用する際に効果を発揮する10ギガビットEthernetにアップグレードできる。全部盛りにすると4699ドル(同71万3800円)で、かなりの値段になるが、得られる性能も相当なものになる。つまりM4搭載Mac miniは、お金を積めば積むほどパワーを上げられるのだ。
また、Mac miniとしては初めて、最大で3台のマルチディスプレイに対応したことも特筆に値する。Thunderbolt 5のポートを備えたM4 Proモデルなら、最大120Gbpsの転送速度が得られるため、ThunderboltまたはHDMIで最大で6K/60Hzのディスプレイを3台まで接続できる。通常のM4モデルでも3台のディスプレイを接続できるが、Thunderbolt経由で6K/60Hzで接続できるのは2台だけだ。3台目のディスプレイは、Thunderbolt経由では最大5K/60Hz、HDMI出力では最大4K/60Hzまでとなる。
M4搭載Mac miniが発表されると、ゲーム機としても使えるのではないかと話題になった。AppleはこれまでもMac miniはゲームに使えると宣伝してきたし、今ではその主張をさらに強めている。このマシンは「Apple TV 4K」よりも1.5インチ(約3.8cm)大きいだけであり、小さなテレビ台の中や上にも十分置ける大きさだ。
筆者が試してみた限りでは、カジュアルゲームには十分な性能があり、モバイルでも動くようなインディーズゲームを遊ぶことが多い人なら、特に問題はないと思われた。高いグラフィック性能を要求されるタイトルを遊びたいのであれば、グラフィックス設定を「中」にして、1440pか1080pでプレイした方が快適にプレイできるだろう。筆者は「バルダーズ・ゲート3」をウルトラ設定でプレイしてみたのだが、予想通り動きは滑らかではなかった。M4 Pro版にアップグレードするか、メモリーをもっと大きくすれば、この問題は間違いなく改善されるはずだ。
むしろ本当の問題は、AAAタイトルがかなり古いものしか見つからないことだろう。Appleがハードウェアアクセラレーションを使用したレイトレーシングのデモとして使った「Control」は2019年に発売されたゲームだったし、もう1つのリメイク版「Myst」も、2021年に発売されたものだ。確かに、M4搭載Mac miniでもゲームをプレイすることはできる。ただし、自分がプレイしたいゲームがプレイできるとは限らないし、グラフィックス性能を要求されるタイトルを遊びたいのであれば、少なくとも999ドルは払うべきだろう。
Appleのデザインは確かに優れているのだが、時々首をかしげたくなることも起こる。M4搭載Mac miniは驚くほど小さく、その性能の高さからすれば、そのデザインはちょっとした偉業だと言ってもいい。しかし、そのコンパクトさ故か、単純に隠したかったからか、Appleはその電源ボタンを本体の底面の左後ろに配置した。そのため、電源を入れたり切ったりするには、本体を持ち上げる必要がある。
本体を持ち上げるのは大した作業ではないが、それにしてもこの配置は普通ではないし、3台のディスプレイに接続していれば少々面倒な作業になるかもしれない。また、本体をディスプレイやテレビの背面に取り付けるのも、少しばかり難しくなった。Mac miniがあまりにも小さく、後ろ側はポートで埋め尽くされているため、ボタンを配置するいい場所がなかったのだろうか?
ホームオフィス用のコンピューターや、エンターテインメント用のマシンや、ライブストリーミングやポッドキャストの発信といったコンテンツ制作のためのシステムを探しているなら、M4搭載Mac miniでそのすべてに対応できる。Mac miniなら、この小さな本体でmacOS SequoiaとApple Intelligenceの優れた機能を利用できるし、基本価格も手頃な水準だ。ただし、スペックを上げようとすれば値段は跳ね上がる。M4プロセッサーの性能はかなり高そうなので(残念ながら米CNETのベンチマークテストはまだ終わっていない)、グラフィック性能やこれ以上のディスプレイ対応機能が必要でない限り、慌てて1399ドルのM4 Proモデルを買うのはやめて、まずはメモリーの増設を検討した方がいいだろう。また、学生や家族向けには、オールインワンで管理しやすいM4搭載「iMac」の方がお勧めだ。
アップルの生成AIが使える「iPhone 16」(価格をAmazonでチェック)
高コスパなシャオミのPD対応モバイルバッテリー(価格をAmazonでチェック)
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力