「iPhone 16」で筆者が最も高く評価しているのは、多数のテキストメッセージや「Slack」のメッセージを受信した後、ロック画面を見るだけで、急ぎの対応を必要かどうかを判断できることだ。
「iOS 18.1」の一部として、Apple Intelligenceで最初に提供された機能の中で、メッセージと通知の要約機能が最も役に立つ。この手の機能は、まさに筆者がスマートフォンに今後さらに搭載されることを期待している、パッシブで実用的なAI機能だ。
それ以外では、Apple Intelligenceの最初の機能は主に写真の編集や電子メールの作成など、特定のタスクに向けたものだ。筆者はこれらをiOS 18.1の開発者向けのプレビュー版でテストしてきた。
Apple Intelligenceのより楽しみな追加機能は、今後リリース予定のiOS 18.2で登場するだろう。iOS 18.2では、「ChatGPT」連携、iPhone 16のカメラを通じて周囲のものについて把握できる「Visual Intelligence」、画像生成ツールの「Image Playground」「ジェン文字」などが提供される見込みだ。
Apple Intelligenceは、iOS 18.1を搭載するiPhone 16、iPhone 16 Pro、iPhone 15 Proで利用できる。対応するモデルの「Mac」と「iPad」でも利用できるが、筆者はiPhone 16でのみテストしている。
現代のスマホユーザーの大きな悩み、つまり通知が多すぎるという問題にAppleが取り組もうとしていることに感謝したい。Apple Intelligenceは、スマートフォンに届いたメッセージやアラートを要約してくれる。筆者が試した限り、内容を大まかに把握できる程度には正確だ。
例えば、友人たちと金曜の夜に食事をする計画を練っていたときや、編集者のスケジュールを確認したかったときなどは、要約機能が役立った。この機能は「Discord」やSlack、「Google Chat」、「WhatsApp」といったメッセージアプリの通知にも対応している。参加者が多いグループチャットで未読のメッセージが溜まってしまったときなどは便利だ。写真が送信されると、Apple Intelligenceが簡単な説明を添えてくれるが、そうならないこともあった。
こうした要約は、「メール」アプリの要約機能よりも便利だと感じた。メールの場合、プレビュー画面が小さすぎて内容を理解しきれない。
メールの内容を確認するためには結局、通知を開く必要がある。Apple Intelligenceは簡単なメッセージならうまく要約できるが、友人や家族との会話はシンプルとは言いがたい。たいていは内輪のジョークや皮肉、人間同士、特に普段よく話している人間同士でなければ理解できない言い回しが盛り込まれている。Apple Intelligenceは明らかに、こうした文脈を拾いきれていない。
その例として、Apple IntelligenceがGoogle Chatでの会話を要約したときの画面を見てほしい。筆者は友人たちと、週末に親戚の集まりがあるため、同じ週末に開催される友人の誕生会に参加できない友人の話をしていた。また、一部の友人たちは、誕生会に着ていく服について冗談を言い合っていた(訳注:Apple Intelligenceの要約結果は「プリシラのお父さんの60才の誕生会。参加者はウザい格好をする」)。
Apple Intelligenceは特定の情報をごっそり落としてしまうことにも気づいた。結論として、Apple Intelligenceに頼りすぎるのはやめておいた方がいい。
筆者が試した限り、Apple Intelligenceは露骨な情報やセンシティブな情報、例えば自傷行為への言及などを含むメッセージは要約しないようだ。
メッセージの要約機能は完璧にはほど遠い。言葉を額面通りに受け取ってしまい、内容を正しく理解できないことも多い。とはいえ、現時点ではApple Intelligenceの力を最も自然かつ実用的な形で生活に取り入れられる機能になっていると思う。
最近のAIツール全般に対する筆者の大きな不満は、ユーザー自身がプロンプトを考えたり、工夫したりしなければ、うまく活用できないことだ。筆者はApple Intelligenceのメッセージ要約機能のような、OSに統合され、ユーザー側の努力を必要としないパッシブな機能が好きだ。もし「iPhone 15」に戻らなければならないとしたら、要約機能は筆者が名残惜しく思う、数少ないApple Intelligenceの機能となるだろう。
AI機能はユーザーの個人情報を扱うことが多いため、Appleは「プライベートクラウドコンピューティング」を採用した。Appleの説明によると、このシステムはユーザーのリクエストがiPhone上で実行できるものか、より強力なクラウドベースのコンピューティングを必要とするかを判断し、クラウドが必要な場合、そのタスクの完了に必要な情報だけを共有するという。その情報をAppleが保存したり、読み取ったりすることはない。
Googleやサムスンと同じように、Appleも写真から不要なオブジェクトを除去できる機能を導入した。この新しいツールは「クリーンアップ」と呼ばれ、写真に写っている不要なものを丸で囲むだけで消去できる。
特に注目したいのは、ユーザーが不要だと考えそうなオブジェクトをAIが自動で判断し、選択してくれることだ。この判断は精度が高いと感じた。テストでは、筆者がベンチに座って冷たい抹茶ドリンクを飲んでいる写真にクリーンアップツールを適用してみたところ、筆者の近くにあった同僚のバックパックとドリンクが消去候補として選択された。
Googleやサムスンの類似ツールと同じく、小さなオブジェクトなら、かなり自然に消去できる。しかし大きなオブジェクトを消去した場合は、写真がゆがんで見えることがあった。うまくいくかどうかはケースバイケースなので、結果に不満があるときは再挑戦してみよう。
下の写真はクリーンアップツールを適用した後のものだ。写真のどこにバックパックがあったか探してみてほしい。
画像の加工に対するAppleのアプローチはGoogleよりも控えめだ。Googleのスマートフォン「Pixel」では、もとの写真に存在しないものを追加したり、画像間で表情を入れ替えたりできる。それに対して、Appleの機能はオブジェクトの消去に重点を置いている。
写真アプリにはもう1つ、プロンプトを使ってオリジナルのメモリームービーを作る機能も追加された。見つけたい写真の説明(「歩く練習をするグレイセン」など)を入力すると、Apple Intelligenceが説明に合致する画像を自動で集めて、ムービーを作ってくれる。
筆者が試した限りでは、出来は当たり外れがあった。例えば、名所の画像などはうまくいったが、何度試しても思うような結果が得られないこともあった。「イタリアで食べた最高のもの」という説明を入力したのに、食べ物が写っていない写真が大量に選ばれたこともある。
写真アプリの検索機能についても同じことが言える。Apple Intelligenceを活用することで、自然言語で見つけたい画像の説明を入力し、検索できるようになった。しかしメモリームービーと同様に、検索の精度はまちまちだ。「かわいいオスカー」という検索語を入力したときはうまくいき、筆者の膝で寝ている愛猫の画像が何十枚もヒットした。しかし、「夕食をとる私とコートニー」といった検索語では、ライブラリーの写真の一部しか表示されなかった。
バーチャルアシスタントの「Siri」に関しても、ChatGPTとの連携やパーソナルコンテキストの認識といった大規模なアップデートが予定されているが、現時点ではまだ使えない。しかしiOS 18.1のリリースに合わせて、Siriにもマイナーなアップデートが加えられた。例えばSiriを呼び出すとディスプレイの輪郭が光るようになり、より現代的な印象になった。また、Siriに話しかけている途中で言葉に詰まってしまったときも、ユーザーのリクエストを正しく理解できるようになった。自分のiPhoneの製品情報についてたずねたり、クエリを入力したりすることも可能になった。こうしたアップグレードは革新的とまでは言えないが、Siriが少し便利になったと感じられるはずだ。
この機能を試すため、「うーん」「実際」といった言葉を頻繁にはさみながらSiriに話しかけてみたところ、Siriはしっかりと筆者が聞きたいことを理解してくれた。「ジェニファー・ガーナーが出ている映画で一番人気は」という質問では、途中で「ジェニファー・ガーナー」を「ジェニファー・ローレンス」に変えてみたところ、Siriは正しく「X-MEN」シリーズと「ハンガー・ゲーム」シリーズを挙げた。同様に、間違って「タイマー」と指定してしまったときも、正しくアラームをセットしてくれた。
こうしたアップデートは、現時点でSiriを使っていない人がSiriを頻繁に使うきっかけにはならないだろう。しかし、すでにSiriを使っている人にとっては、Siriとのやり取りが少しスムーズになるはずだ。
生産性の向上もApple Intelligenceの大きなテーマであり、OS全体でテキストの書き直し、校正、要約ができるようになった。つまり、対象となるテキストはメールでも、メッセージでも、メモでもかまわない。書き直したいテキストを選択するだけで、「コピー」や「ペースト」といったおなじみの選択肢に加えて、「作文ツール」という選択肢が表示される。似たような機能はサムスンのスマートフォンにも搭載されている。
このツールを使って、テキストメッセージの文体を変えてみた。文体は簡潔、フレンドリー、プロフェッショナルの3種類が用意されており、さらに文章全体の校正もリクエストできる。テストではフレンドリーを選んでみた。Appleの書き直しはサムスンと比べると控えめだ。例えば「How's everything going?(調子はどうですか)」という文章は、一部の単語を変えて「How's life treating you?(調子はどう?)」に書き換えられた。これに対して、サムスンは最初のメッセージを大幅に短くした上、私が決して使わない「Yo(よっ)」という、かなりくだけた表現を付け加えた。
実際の生活において、筆者があえて「作文ツール」を使う機会はあまりないだろう。性能に不満があるわけではない。AI機能に共通して言えることだが、新しい習慣を作らなければならないからだ。ものを書く仕事をしているせいか、筆者は自分のメッセージやメールを送信前に見直したり、整えたりする作業に慣れている。しかしスマートフォンを使って、複雑な情報を改まった文体で伝えるメールを書くことに苦労している人にとっては、間違いなく実用性があるはずだ。
他にも、情報を整理するための機能がいくつか追加された。例えば「メール」アプリでは優先度の高いメールが先頭に表示されるようになった。発想は悪くないが、筆者の環境ではクレジットカード会社からのメールばかりが優先メールに選ばれてしまい、バランスが悪いと感じた。
例えばAmazonからの出荷連絡や個人間送金アプリ「Venmo」の取引通知といったタイムリーなメールも、優先メールに分類してほしい。週末にメイン州に行く計画を友人たちと練っていたときのメールが表示されたこともあったが、同じスレッド内のメールでも、ハイライトされるものとされないものがあり、一貫性がなかった。
iOS 18.1では、Apple Intelligenceが初期段階にあることは明らかだ。このバージョンににアップデートした後にiPhoneが劇的に変化することを期待すべきではない。
メッセージや通知の要約、メモリームービーなどの機能には大きな可能性がある。いずれも、デバイスに大量に保存されているアラート、メッセージ、写真の整理という、現実的な悩みを解決することを目的としている。これらの機能は常に意図した通りに動作するわけではないが、将来性を感じさせる。
しかし、最も興味深いものはまだこれからだ。iOS 18.2によって、Apple IntelligenceがiPhoneにもたらすものがより明確になることを期待している。
では、Apple Intelligenceのために新しいiPhoneを購入する価値はあるのだろうか。少なくとも現時点では、まだない。しかし、iOSのアップデートとソフトウェアのサポートが、将来的にiPhone買い替えの意思決定においてより重要となることは間違いなさそうだ。それがどのくらい先になるかは、まだ分からない。
Apple Intelligenceこの記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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