週末は海辺の風景を、自宅では猫たちのかわいい姿を、仕事では米CNETの記事用にガジェットを撮影するといった具合に、筆者は「iPhone 16」のカメラをよく使う。しかし、たいていは新しい「カメラコントロール」ボタンの存在を忘れ、ロック画面やホーム画面のカメラアイコンをタップしてしまう日々だ。
しかし、iPhone 16から追加されたこの新しいボタンには、カメラの起動や操作にとどまらない、壮大な計画が準備されているようだ。新しい「Visual Intelligence」機能が利用できるようになれば、カメラコントロールボタンは実質的にAIボタンとなり、ボタンを押すだけでAppleや「ChatGPT」、Googleを通じて、何でも質問できるようになる。
しかし、この機能はまだ体験できない。iPhone16を1カ月間使ってみて、現在の感想は9月の初レビュー時と同じだ。カメラコントロールをいじるのは楽しいが、iPhone 16を買う決め手にはならない。むしろ、iPhone 16の魅力は「アクションボタン」や「Dynamic Island」、今回追加されたカメラコントロールボタンなどの小さな変化の総体として感じられる。いくつもの小さなアップデートを総合的に考えたとき、iPhone 16は2年前に発売された、こうした追加機能を持たない「iPhone 14」よりも買い得だと感じられるはずだ。
それ以外の点で、iPhone 16が2023年発売の「iPhone 15」と違うところは、バッテリー駆動時間が少し伸び、パフォーマンスがやや向上したことくらいだ。もし「iPhone 12」など、数年前のiPhoneからアップグレードするなら、カメラ性能の飛躍的な進化を感じるだろう。
iPhone 16の発売時点では、Apple Intelligenceは未搭載のため、カメラの起動や調整ができるカメラコントロールボタンが最も重要な新機能となる。このボタンを使えば、カメラの設定やズーム倍率を素早く変更できるが、筆者はまだこの動作に慣れておらず、ディスプレイ上のカメラアプリをタップするほど自然にはできない。
正直に言えば、カメラコントロールボタンの存在さえ忘れていることが多い。長年の習慣を変えるのは難しい。特にカメラを起動するといった日常的なアクションは、iPhoneを使い始めてからずっと同じやり方を繰り返してきたので、すっかり体に染みついている。スマホカメラのような頻繁に使うものに新しい仕組みを導入するなら、これまでよりも明らかに速いか、明らかに簡単なものにしなければならない。現在のカメラコントロールが、この目標を達成しているとは思えない。
とはいえ、カメラコントロールボタンはカメラの起動だけでなく、サードパーティーのカメラアプリや「拡大鏡」、「コードスキャナー」の起動などにも利用できる。露出や深度、ズーム、「フォトグラフスタイル」、色調の調整もスワイプ動作で可能だ。カメラレンズも切り替えられる。画面を指で隠さずに設定やモードを変更できるのは便利だが、iPhone 16に買い換える理由になるほど大きな撮影体験の変化とは感じられない。
カメラコントロールボタンは、片方の手がふさがっていて、もう片方の手だけで写真を撮りたいときなどは便利だ。片手操作の場合、画面をタップするよりも、iPhoneの側面にあるカメラコントロールボタンに指を伸ばす方がたやすい。写真の構図を考えながら、カメラコントロールボタンを使ってフォトグラフスタイルをあれこれプレビューするのも楽しかった。フォトグラフスタイルは個人的に、iPhone 16で一番のお気に入り機能だ。
数世代前のiPhoneから乗り換えるなら、カメラ機能が飛躍的に進化したと感じるだろう。iPhone12と比較したところ、色は鮮明に、ズーム時の画質はシャープになり、肌色の表現も正確で、色あせた感じがなくなった。
下のピンクの花の写真を見てほしい。これはiPhone 16のカメラがiPhone 12のカメラよりもいかに優れているかを示す良い例だ。iPhone16の方がピンクの発色が鮮やかで、実物に近い。草や葉も、よりシャープに表現されている。
こうした違いは、iPhoneのカメラがこの4年間でいかに進歩したかを伝えている。iPhone 16は4800万画素(iPhone 12は1200万画素)のメインカメラに加えて、マクロ撮影や10倍デジタルズームにも対応している。
AppleはiPhoneのカメラに毎年少しずつ、重要な改良を加えてきた。このため、古い世代のiPhoneを使っていた人ほど、その進化をはっきりと感じるだろう。iPhone 15と比べると、iPhone 16はマクロモードの追加、フォトグラフスタイルの強化、光学2倍ズーム撮影にも対応できる「Fusion」メインカメラ、超広角カメラでの低照度撮影の向上、「Apple Vision Pro」で体験できる空間写真・ビデオの撮影機能などを備えている。
そう聞くと、大きな変化だと感じるかもしれないが、カメラ機能は基本的に毎年少しずつ改良を重ねており、3、4年前とは言わないまでも、少なくとも2年前のiPhoneからアップグレードするなら、小さな進化が積み重なって、大きな変化を感じられる。
グラフィックス性能と一般的な演算処理能力のベンチマークテストでは、iPhone 16はiPhone 15をやや上回った。しかしサムスンの「Galaxy S24+」との比較では、ベンチマークソフト「Geekbench 6」による一般的な演算処理の比較では上回ったものの、グラフィックス性能のベンチマークテストでは後れを取った。
米CNETでは、バッテリー駆動時間を確認するために45分間のバッテリーテストも実施した。その結果、iPhone 16とiPhone 16 PlusはiPhone 15、iPhone 15 Plusをそれぞれ上回っていることが分かった。CNETのバッテリーテストは、45分間にわたって動画のストリーミング再生、ゲーム、10分間のビデオ通話、ソーシャルメディアの閲覧といった日常的なタスクを実行し、バッテリーがどのような影響を受けるかを調べるものだ。
45分間バッテリーテスト
米CNETでは、3時間にわたるYouTubeストリーミングテストも実施した。テストでは、輝度を最大にした状態でYouTubeの動画を3時間連続でストリーミング再生し、1時間ごとにバッテリー残量を測定した。その結果、iPhone 16、iPhone 16 PlusとiPhone 15シリーズの間にこれといった違いは見られなかった。
3時間バッテリーテスト
ベンチマークやテストですべてが分かるわけではないが、多少なりともパフォーマンスの向上を確認できたことはうれしい。というのも、iPhone 16シリーズは近いうちにApple Intelligenceに対応することになっているので、今後数年は負荷の高いAIタスクを処理しなければならないからだ。
iPhone16はiPhone15から大きくアップデートされてはおらず、また必ずしもそうでなくとも構わない。毎年、iPhoneを買い替える時代は終わったように感じる。iPhone 16がその証拠だ。今後は数年ぶりに買い替えたときに、毎年のアップデートが積み重なった結果として、スピードや利便性の向上を実感するという形になるのだろう。
iPhone16には、これまでのiPhoneほどの決定的な魅力がないと批判するのは簡単だ。そもそも、目玉機能であるApple Intelligenceが発売時点ではまだ利用できない。また、筆者が期待していた重要な改良も実現しなかった。例えば、時刻などの情報を一目で確認できる常時表示ディスプレイ、有線充電の高速化などだ。実際、カメラコントロールボタンよりも、こうしたアップグレードがあった方が個人的にはうれしかったと思うが、Visual Intelligenceが利用できるようになれば、この考えも変わるのかもしれない。
iPhone 16の魅力は、2~3年前のiPhoneと比べて、同じ800ドル(約12万円)で手に入る機能を比較したときに実感できるはずだ。
「この機能のためにアップグレードする」と言えるような目玉の機能はもうない。しかし、「iPhone 13」またはそれ以前のiPhoneから乗り換える場合は、いくつもの小さな改善を実感し、きっとiPhone 16を気に入るだろう。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス