先日、ニューヨークのハイラインからフロリダ州オーランドのキア・センターまで、サムスンの「Galaxy S24 FE」を持って旅してきた。目的は、さまざまな環境やシチュエーションで、Galaxy S24 FEのカメラの実力を試すためだ。広告によれば、この649.99ドル(約9万8000円)という手頃な価格の新作スマートフォンには、兄貴分の「Galaxy S24」と同じGalaxy AI機能が搭載されているという。しかし、「Galaxy A35」(399.99ドル、約6万円)やGoogleの「Pixel 8a」(499ドル、日本では7万2600円)など、さらに安価な端末も存在するなか、あえてGalaxy S24 FEを検討すべき大きな理由は、その「カメラ」にある。
Galaxy S24 FEは、背面に3種類(広角、超広角、望遠)のレンズを搭載している。Galaxyシリーズのフラッグシップモデル「Galaxy S24 Ultra」(1299.99ドル、日本では18万9700円)に搭載されている100倍ズームや、Galaxy S24(799.99ドル、日本では12万4700円)が誇る高性能なカメラやプロセッサーはないものの、明るい屋外でも、薄暗いバーでも、光と影のコントラストが強いコンサート会場でも、Galaxy S24 FEのカメラはしっかりと機能した。クリアで鮮明な写真もあれば、及第点レベルのものもあったが、おおむね品質は十分と感じた。
この記事では、実際にGalaxy S24 FEで撮った写真を紹介しながら、このスマホのカメラの万能さと限界を示したいと思う。
Galaxy S24 FEのメインカメラは、F値1.8の広角レンズと5000万画素センサーを備えている。光学式手ブレ補正機能を搭載しているため、シャッタースピードが遅くなる低照度環境での撮影にも対応できる。
上の写真は、ニューヨークのハイライン公園から撮影したものだ。明るい屋外という理想的な環境では、どの程度の処理が可能かを示している。太陽がフレーム内に入っているにもかかわらず、影はつぶれていない(路面を見てほしい)。遠景にはマンハッタンの水上公園、リトルアイランドが見える。舗装道路の質感も表現されており、右側に写っているバスに描かれた小さな文字さえ判読できる。
一方、上の写真はニューヨークのアストリアにあるバー「ハート・オブ・ゴールド」の店内で撮影したものだ。テーブルに置かれていた照明器具は別の場所に移動させたため、さらに薄暗くなっているが、ビールのグラスに付いた水滴も、パスタにちりばめられたスパイスも、かなり正確に描写できている。もちろん完璧ではない。右のフォークはほぼ黒色になってしまった。しかし、かなり暗い環境だったにもかかわらず、しっかりとフォーカスの効いた画像に仕上がった。
次はフロリダ州に移動し、オーランドのキア・センターへ行った。シンガーソングライターのCharli xcxとTroye Sivanによるパフォーマンスを観るためだ。この写真は、オープニングアクトのShygirlを迎えるために、照明が落ちた会場を撮影したものだ。筆者は会場の後方にいたため、ステージまでは距離があり、さまざまな照明が混在する会場は、光と影のコントラストが強烈だった。Galaxy S24 FEのカメラで撮影した写真は、ステージ周辺はソフトフォーカスがかかったようにぼやけ、ステージ上で動いているものはすべて、ぼんやりとした色の塊になった。
しかし、静止している部分をよく見ると、背景の旗やステージ正面の「SWEAT」ロゴを確認できる。観客がショーの始まりに備えて、スマートフォンをチェックし、ステージを見つめている姿も見える。照明も暗く、撮影条件は悪かったが、さまざまな光源を取り入れ、ノイズは最小限に抑えることができた。会場の人々をもう少し鮮明に捉えられれば素晴らしかったと思うが、この価格帯のスマートフォンのカメラとしては、十分に満足できる出来だ。
1200万画素の超広角カメラは、メインカメラよりは一段落ちるものの、けっして悪くない。メインカメラに内蔵されている手ブレ補正機能やピクセルビニング機能は使えないが、明るい環境ではよい仕事をしてくれた。
この写真は、曇りの日にニューヨークのコロンバスサークルに近い交差点で、超広角カメラを使って撮影したものだ。理想的な光のおかげで、細部まで鮮明な写真を撮影できた。左端を見ると、道路の通気口から蒸気が立ち上っているのが見える。右側には地下鉄の入り口があり、目をこらせば看板に書かれた文字も判読可能だ。
はるか遠景に見えるコロンバスサークルは、ややぼんやりとはしているものの、かなり細い部分まで描写できている。例えば、ニューヨークの通勤に欠かせないレンタル自転車「Citi Bike」に乗っている人の姿が見える。自転車に書かれた文字までは判別できないが、トレードマークの青色は認識可能だ。一方、交差点の右側にある「Columbus Circle」の道路標識は、拡大してもよく見えない。
比較のために、同じ場所を広角カメラでも撮影してみた。超広角カメラで撮った写真と比べると、手前の交差点の左右が切れてしまったが、奥のコロンバスサークルははるかに鮮明かつシャープに描写されている。「Columbus Circle」の道路標識とそこに書かれた文字、奥にある小さな像、左側にはアンダーグラウンド・マーケットにある「20以上」の飲食店を紹介する赤い標識が確認できる。この2枚の画像は、広角レンズと超広角レンズの特徴をよく捉えている。広角レンズは細部まで鮮明な写真を撮ることがき、超広角レンズは広い画角の写真を撮影できる。
次は、超広角カメラの性能を一風変わった方法でテストするために、朝食用のサンドイッチを撮影してみた。ご覧のとおり、サンドイッチから水、コーヒー、スプーンやフォークまで、テーブル全体が写っている。クロワッサン生地の微妙な濃淡もしっかりと捉えられている。ただしサンドイッチからはみ出したチーズは卵と混ざり合い、一体化してしまった。
続いて、同じ皿を今度は広角カメラで撮ってみた。卵の上に溶けたグリュイエールチーズが乗っているのが見える(超広角カメラで撮った写真では、卵とチーズは判別できないほど一体化していた)。クロワッサンの質感は、光の反射を含めて、より豊かに伝わってくる。グリルしたマッシュルームの焼き色の濃淡さえ分かる。
次は、光学式手ブレ補正と光学3倍ズームを備えた800万画素の望遠カメラだ。この望遠カメラの性能には感心させられた。Galaxy S24 FEは、最小構成で649.99ドルだ。この価格帯のスマートフォンでありながら、2倍超の望遠カメラを搭載していること自体が驚きだ。ただし画質はメインカメラより一段落ちることは否めない。
この2枚の写真はハイライン公園で撮影したものだ。1枚は5000万画素のメインカメラを、もう1枚は800万画素の望遠カメラを使った。どちらの写真にも同じ花が写っていることに注目してほしい。メインカメラで撮った方はダイナミックレンジが広い。一方、3倍ズームで撮った画像も細部までよく描写されている。
上の写真は、先ほどと同じくキア・センターのコンサート会場で撮ったものだが、撮影にはGalaxy S24 FEの望遠カメラを使った。ステージ上のTroye Sivanが、観客にスマートフォンのフラッシュライト(懐中電灯)をつけるよう求めたため、かなり明るい環境で撮影できた。ステージまでの距離はかなりあったが、Troye Sivanが座っていたベッドのような台のしわまではっきりと写っている。光源が増えた結果、ステージは見やすくなった。しかし暗部が消えてしまい、ステージ上部の照明や左上のKIA(起亜自動車)のロゴや車が目に入った。しかし、観客席を無数のフラッシュライトが覆う様は圧巻であり、ショーの様子をこんなに鮮明に撮影できたこともない。
次は、なるべくステージに寄った写真を撮影することにした。そのためには、Galaxy S24 FEの弱点であるデジタルズームを使わなければならない。深呼吸をしてから、なるべく端末を動かさないように持ち、ステージ上のTroye Sivanに焦点を合わせて、30倍ズームで撮影した。お世辞にもいい写真とは言えないが、衣装や髪型、マイクを握っていること、パフォーマンスの最中であることはかろうじて分かる。これが限界だ。しかし、この価格帯、またはさらに安価な機種では、頑張ってもただの光の塊にしかならなかっただろう。今回は光の塊というよりは、絵に近い1枚となった。
最後に紹介するのは、1000万画素の前面カメラだ。今回は米CNETのTVラボのような、条件の悪い環境でどの程度のセルフィーが撮れるかを試してみた。
上の写真は、遮光カーテンを閉め、ほんのわずかな光しか入らない状態にしてから、フラッシュを有効にして撮影したものだ。ノイズが多く、ややぼけてはいるものの、クリアな写真が撮れた。ぼけてしまったのは、光を取り入れるためにシャッタースピードが遅くなったことと、筆者の手ぶれのせいだと思われる。顔の産毛やシャツのしわは見えるが、髪は暗い背景と同化している。基本的に、真っ暗に近い環境はスマートフォンのカメラによる自撮りに適していないが、Galaxy S24 FEは必要に応じて、実用に耐える写真を撮影できる。
このカメラテストを締めくくるため、コンサートの最後にRyanと撮ったセルフィーを紹介する。照明は混じり合っており、明るいアリーナの逆光で顔は少し暗くなっていた。そのため、Galaxy S24 FEはわれわれの姿を補正して明るくする必要があったが、背景がすべて明るくなりすぎて色あせたように見える。それでも、この写真には魅力がある。素晴らしいショーを見た直後の、喜びの瞬間が切り取られているのだ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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