2023年、筆者は新興企業Sightfulが開発した拡張現実(AR)ラップトップ「Spacetop」を体験した。この製品は、ARメガネと「Chromebook」のキーボード部分のようなデバイスで構成され、仮想のアプリ画面を空間に浮かべることができる。ノートPCの画面の代わりにARメガネを使うというわけだ。ハードウェア製品としては、時代を先取りしているように思えた。
しかし、Sightfulの創業者らによると、このARラップトップが発売されることはない。同社はこの製品の計画を中止し、1900ドル(約28万円)の「Spacetop G1」を予約した人に電子メールを送り、100ドル(約1万5000円)の前金を返金すると伝えている。
Sightfulは代わりに、新しい「Windows」ノートPC向けのソフトウェア製品にシフトし、ARメガネと接続した同様の体験を提供する予定だ。これはWindowsアプリを実行し、Windowsの人工知能(AI)機能「Copilot」と連携するという。
ARラップトップの夢は終わったのかというと、そうでもない。既存のノートPCでも、ARに対応できる可能性がある。
メガネ型のディスプレイを使って空間に複数のウィンドウを浮かべることは、誰もが必要とするものではないが、ある意味で非常に便利な機能だ。ディスプレイを他人に見られることがないため、プライバシーを重視した移動中のツールとして使える可能性もある。
Sightfulの創設者であるTamir Berliner氏とTomer Kahan氏に話を聞いたところ、ソフトウェアベースの製品に移行する理由は、「AI」の2文字に集約されると説明してくれた。MicrosoftがWindowsのシステム全体でAIをさらに重視し、ニューラル処理ユニット(NPU)を搭載しAIに最適化したノートPC用チップセットを採用したことは、接続されたARメガネがWindows PC使用時によりうまく機能することを意味する可能性がある。
このような強化されたハードウェアは、Spacetop独自のウェブベースのデバイスでは利用できなかったであろうAIを活用できる可能性がある。Armベースのプロセッサーを採用するMicrosoftの「Copilot+ PC」は、SightfulがQualcommベースのプロセッサーをSpacetopに搭載して目指していたものに近いように思えるが、より強力だ。
「AIコンピューターに関する(Microsoftの)発表を見た瞬間、つまり、今後数年のうちに、誰もが所有するコンピューターがAIコンピューターになるという発表を見た瞬間、自分たちで統合ソリューションを構築するよりも早く、オーディエンスに力を与えられると確信した」と両氏は筆者に語った。
両氏によると、Windowsベースのソフトウェアは2025年前半に発売される予定だ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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