華為技術(ファーウェイ)から登場した「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」は、まさに語りたくなる1台だ。これは、実際に買える世界初の3つ折りスマートフォンであり、ディスプレイを完全に広げれば、史上最薄級のスマートフォンとなる(他のスマートフォンメーカーも多重折りディスプレイを持つコンセプトデバイスを作っているが、実際に販売しているのはファーウェイのみ)。HUAWEI Mate XTは価格も突き抜けており、最低でも1万9999元(約42万円)、ストレージ容量が最も多いモデルは2万3999元(約50万円)もする。この最新のスマートフォンを実際に触ってきたのでレポートしたい。
HUAWEI Mate XTは、2つ折りのブック型端末を中心とする折りたたみスマートフォンを、新たなレベルに引き上げようとしている。10.2インチの大型ディスプレイは3つのセクションからなり、2カ所のヒンジ部分で折りたためば、ポケットに入る標準的なサイズのスマートフォンになる。このデザインのおかげで、フルサイズのタブレットをポケットに入れて持ち歩くという画期的な体験が可能になった。
ファーウェイにとって、折りたたみスマートフォン市場を制することは重要な目標だ。同社はサムスンやGoogle、小米科技(シャオミ)といった大手ライバル企業とともに、折りたたみスマートフォンの普及に取り組んできた。しかしHUAWEI Mate XTについては、消費者を価格面でも説得しなければならない。米CNETが9月に実施した調査によると、スマートフォン所有者の過半数(52%)は折りたたみスマートフォンの購入に興味がないと回答している。
簡単には手の出ない価格であることを考えると、HUAWEI Mate XTがファーウェイの稼ぎ頭になる見込みはなさそうだ。しかし米国の制裁措置にもかかわらず、ファーウェイは折りたたみスマートフォン競争に勝つという野心を放棄していない。実際、International Data Corporation(IDC)の第2四半期レポートによると、折りたたみスマートフォンの出荷台数でファーウェイは世界1位となっている。世界シェアはファーウェイが27.5%、人気の「Galaxy Z Fold」と「Galaxy Z Flip」シリーズを展開するサムスンは16.4%だ。
筆者は9月下旬に中国の深センを訪れ、街の中心部にあるストアでこの唯一無二のスマートフォンを実際に触ってきた。短い時間だったが、HUAWEI Mate XTのインパクトに圧倒される体験だった。
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HUAWEI Mate XTは、正面から見ると普通のスマートフォンだ。折りたたんだ状態での画面サイズは6.4インチで、縦長の一般的なスマートフォンとそう変わらない。しかし端末を横や上から見ると、HUAWEI Mate XTの特徴であるアコーディオン状のデザインに気づく。折りたたむと3枚のディスプレイが重なった状態となり、完全に開くと対角10.2インチの大型ディスプレイが現れる。
ディスプレイには、一般的な折りたたみスマートフォンにも見られる折り目が2本走っている。しかし動画を見ているときは、画面の明るさや鮮やかさのおかげで折り目は気にならず、没入感が得られた。使用感はまるでタブレットだ。薄い部分はわずか3.66mm――SIMカードを4、5枚重ねた程度しかない。
完全に広げると驚くほど薄いが、折りたたんだ状態では厚みが感じられる。完全に閉じると、ディスプレイが3枚重なった状態となり、全体では12.8mmの厚みになる。筆者の場合、片手では操作が難しかったり、時間がかかったりしたため、基本的には両手で操作した。
12.8mmという厚みは、一般的なブック型折りたたみスマートフォンよりも明らかに厚い。例えば「Galaxy Z Fold6」の厚みは12.1mm、「Pixel 9 Fold Pro」の厚みは10.5mmだ。この2つの端末は、内側ディスプレイもHUAWEI Mate XTより小さく(7〜8インチ)、ブック型なので折り目は1本しかない。
HUAWEI Mate XTには、ブック型スマートフォン(例:Galaxy Z Fold6、Pixel 9 Pro Fold)のように使えるデュアルスクリーンモードと、タブレットのように使えるトリプルスクリーンモードがある。この新しいデザインに慣れるまでに少々時間がかかった。ヒンジは2カ所にあり、それぞれ別の方向に開く。ディスプレイを完全に開くためには、まず本のように開き、次に3つ目のセクションを広げる。さまざまなモードを試すために、端末を折りたたんだり広げたりを繰り返したが、ヒンジがゆるんだり、がたついたりすることはなかった。しかし、長期にわたって折りたたみを繰り返した場合の耐久性は未知数だ。また、防水・防塵性能を示すIP等級も公表されていない。
最初は使いにくいと感じるかもしれない。2つのヒンジは別々の方向に開くため、間違った方向にたたもうとしてやり直すはめになる。
実際に触ってみた結果、HUAWEI Mate XTとその斬新なデザインについて気になる点も出てきた。1つは、折りたたんだ状態でもディスプレイの端がデバイスの側面に露出してしまうことだ。ファーウェイは摩耗や破損を避けるためにケースをつけることを推奨しているが、ケースをつければ当然、すでに重いデバイスがさらに重くなる。それでも高額な端末であることを考えれば、重さを我慢する価値はありそうだ。
第二に、バッテリー容量が問題になる可能性がある。HUAWEI Mate XTは5600mAhの大容量バッテリーを搭載しているが、10.2インチという大型ディスプレイに電力を供給しなければならないため、必然的にバッテリーの消費は激しくなる。バッテリーの持ちをテストし、2つ折りのブック型スマートフォンや折りたためない普通のスマートフォンと比較するのも面白いかもしれない。
HUAWEI Mate XTは、発売にこぎつけた初の3つ折りスマートフォンだが、デザイン自体は既視感がある。端末を裏返したときに現れる八角形のカメラバンプは、栄耀(Honor)の軽量ブック型スマートフォン「HONOR Magic V3」のカメラと驚くほどそっくりだ。実際、HUAWEI Mate XTのデザインは、色から縁取り、仕上げに至るまで、HONOR Magic V3に酷似している。もっとも、ファーウェイは米国から制裁措置を受けた2020年後半にHonorを売却するまで、7年間にわたってHonorを所有していたため、両者の端末が似ていたとしても驚くには値しない。
HUAWEI Mate XTのカメラバンプには5000万画素のメインカメラ、1200万画素の超広角カメラ、1200万画素のペリスコープ望遠カメラが搭載されている。カメラも軽く試してみたが、諸般の事情により、共有できる写真はない。明るい場所と暗い場所の両方で撮影してみたが、ディスプレイ上で見る限り、画質はまずまずだった。望遠レンズも数分試してみたが、薄暗い室内で10倍いっぱいまでズームすると、鮮明な画像の撮影は難しかった。
このようにカメラ性能は普通だが、意外ではない。HUAWEI Mate XTはカメラが売りの端末ではないことを考えれば、むしろ予想通りと言っていい。HUAWEI Mate XTの主役は折りたためる巨大なディスプレイだ。ディスプレイが多くのリソースとスペースを占めているため、カメラなどの部分で妥協しなければ製品化は難しかっただろう。
HUAWEI Mate XTは純正チップセット「Kirin 9010」を搭載しているとみられるほか、16GBのRAMと256GB/512GB/1TBのストレージを搭載している。今回の限られた時間ではパフォーマンスを正確に評価することは難しいが、動作は軽快で、各アプリのナビゲーションもスムーズだった。ただし、限界まで負荷をかけるようなテストはできなかった。
時間の制約から、3つの画面のすべてでアプリをテストすることはできなかった。しかし、マルチタスクは画面分割を利用して2つ、さらにフローティングウィンドウを使って3つ目を動かせるようだ。これはブック型の2つ折りスマートフォンにできることとあまり変わらない。将来的には、3つのセクションすべてをマルチタスクに使えるようになることを期待したい。今後のソフトウェアアップデートで、こうした機能強化が行われる可能性は十分にある。
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HUAWEI Mate XTは世界初の3つ折りスマートフォンであり、この点だけでも特筆すべき存在だ。筆者は、10.2インチのディスプレイが難なくポケットに収まることに驚嘆した。確かに厚みはあるが、普通の折りたたみスマートフォンと比べて、それほど重いわけではない。
ハードウェアとしての出来は世界でもトップクラスであり、ヒンジの安定感は、長く使い続けられるように設計されていることを確信させるものだ。しかし、これだけ高額な端末なら、防水・防塵性能を示すIP等級の記載は欲しい。端末の側面にディスプレイが常に露出していることも気にかかる。内側ディスプレイの大きさを考えれば、バッテリーの持ちに問題が生じてもおかしくない。5600mAhという容量は、もっと画面の小さいブック型折りたたみスマートフォンのバッテリーと比べて、それほど大きいわけではないからだ。
今回触ってみた印象では、価格帯の問題もあり、ヒットするとは考えにくい。HUAWEI Mate XTが目指しているのは販売台数ではなく、米国がいくら制裁を発動しようと、ファーウェイは最先端のデバイスを製造できるのだと高らかに宣言することなのかもしれない。
HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGNこの記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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