80インチテレビの前に座って「グランツーリスモ7」をプレイするのは、没入感のある体験だ。8K解像度だと、リアルさがさらに増す。筆者は運転がうまくはないが、それは目の前の景色の精細さに驚いていることも一因だ。他の車の車体に自分の車が反射して映し出される新しい4Kレイトレーシングモードにも驚嘆した。まるでヘッドセットなしでVRの世界に入り込んだかのようだ。
筆者がいるのは、米カリフォルニア州サンマテオにあるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)本社の一室だ。テレビが多数置かれていて、「ラチェット&クランク」や「Marvel's Spider-Man 2」といったおなじみのゲームのデモが流れている。これらのゲームを動かしているのは、11月7日に発売予定の新しい「PlayStation 5 Pro」(PS5 Pro)だ(価格は699.99ドル《日本では税込11万9980円》、9月26日《日本では30日》に予約開始)。PS5 ProのリードシステムアーキテクトであるMark Cerny氏が、PS5 Proと「PlayStation 5」(PS5)の画面が並んだモニターでPS5 Proの改善点を説明しながら、それぞれのデモを見せて回ってくれた。
2つの画面を見比べると、その違いが分かる。すべてがより鮮明に、より滑らかに、あるいはその両方になっている。個人的には、プレイするならPS5 Proだ。Proではない無印のPS5は現在499.99ドル(日本では税込7万9980円)で販売されており、おそらくこの先はクリスマスセールで値引きされるだろう。そのため、時にはわずかな違いのアップグレードが、多くの人にとって価格に見合うだけの価値があるかどうかは分からない。PS5 Proは「PlayStation 6」(PS6)ではなく(PS6はあと3~4年は発売されないだろう)、万人向けでもない。PS5 Proは、グラフィックが強化された大型ハードウェアだ。絶えず変化するPCに対抗できるだけでなく、いくつかの点ではPCを上回っているかもしれない。
PS5 Proが目指しているのは、大型テレビでのゲーム体験をより楽しいものにすることだ。強化されたGPUにより、PS5 Pro向けにアップグレードされるゲームは、全体的にレイトレーシングが強化され、4K/60fpsで滑らかにプレイすることができる。PlayStationライブラリーの他のゲームには、AIによる自動アップスケーリングが適用される。それに、光をシミュレートする高度なグラフィック技術のレイトレーシングも大幅に進化することが期待される。PS5 Proのアップグレードされた性能に対応するゲームも複数登場するだろう。SIEによると、11月のPS5 Pro発売時には、約40~50タイトルにパッチがリリースされる予定だという。
筆者はPS5 Proで6タイトル以上をプレイし、Cerny氏と、さらにSIEでプラットフォームビジネスグループの最高経営責任者(CEO)を務める西野秀明氏と話をした。そして、このアップグレードがPlayStationのゲームの未来にとってどのような意味を持つのか、次の展開はどうなるのか、といったことを語り合った。
PS5 Proの本体は超大型というわけでなく、これには衝撃だった。大きさは旧型のPS5とほぼ同じで、むしろPS5 Proの方が小さい。一方、2023年に発売されたスリム版の新型PS5は、Proよりも確かに小さいが、サイズはそれほど違わない。
本体のデザイン面での最大の違いは、PlayStationの30周年記念ロゴでもひそかにお披露目されていたが、本体の中央部分を斜めに横切る3本線の黒い通気口だ(つまり、現行のPS5用本体カバーはPS5 Proでは使用できない)。背面には、USB-AではなくUSB-Cの追加ポートも付いている。PS5 Proは、2016年に発売された分厚い「PlayStation 4 Pro」(PS4 Pro)と違って、旧型のPS5と同じ棚に収納できるはずだ。お好みで、別売りのスタンド(29.99ドル、日本では税込3980円)に縦に取り付けることもできる。
PS5 Proには、PS5と同じ「DualSense」コントローラーが付属している。つまり、今回、コントローラーはアップグレードされていない(ワンランク上の「DualSense Edge」コントローラーがすでにある)。また、光学ディスクドライブは搭載していない。代わりに、より大容量の2TBのSSDを内蔵しており、PS5と同じく拡張ストレージとしてM.2 SSDもサポートする。また、新型のPS5で使えるのと同じ光学ドライブを外付けすることも可能だ。光学ドライブは、PS5から取り外してもいいし、新たに購入してもいい。光学ドライブが標準で搭載されていないことは、ダウンロードゲームが今の標準という意見表明のように感じられる。また、PS5 Proでは新たに「Wi-Fi 7」がサポートされているので、対応ルーターを所有している人は、ゲームのダウンロードにかかる時間も短縮されるはずだ。
PS5 Proのアップグレードはほぼグラフィックスに関するものだ。CPUや、SSDの速度はPS5と同じである。一方、SIEの発表によると、GPUはコンピュートユニットの数が67%増加しているほか、RAMも28%の高速化を実現しており、レンダリング速度が最大45%アップするという。
現在の段階で、SIEが新しいGPUの機能として特にプッシュしている大きなアップグレードが3つある。進化したレイトレーシング、AIで自動的にゲームをアップスケールする機能、そして、4K/60fpsでゲームをプレイできる新しいProモードだ。
「PlayStationスペクトルスーパーレゾリューション」(PSSR)と呼ばれるAIによるアップスケーリングモードは、ゲームライブラリー全体で機能するが、ゲームの方をパッチでアップデートしなければならない。この機能のデモは見ていないが、4Kテレビを所有している人は、この機能で古いゲームの画質を改善できるはずだ。Cerny氏によると、将来的には「PlayStation VR2」(PS VR2)のゲームもサポートする予定だという。
11月7日のPS5 Pro発売時には40~50タイトルがPS5 Pro向けにアップグレードされる予定だ。これらのタイトルは、全体的に4Kと60fpsへのアップグレードが中心だが、それ以外にもグラフィックスの強化として、新しいボリューメトリックライティングと各種エフェクト、よりリッチなグラフィックス、画面上の背景キャラクターの増加、120fpsまたは8Kゲームまで設定できるモードなども含まれる。筆者は「グランツーリスモ7」を8Kモードと、レイトレーシングエフェクトが強化された4Kモードでプレイしてみた。PCゲームと同じように、Proがきっかけとなって、さまざまなゲームモードが追加される可能性もある、とCerny氏は述べた。
また、Cerny氏によると、アップグレードパッチがなくてもゲームのフレームレートが自動で高くなるため、40~120fpsの可変リフレッシュレートをサポートするテレビであればPS5 Proの性能を引き出すことができるという。専用の120fpsモードも提供される予定だ。Cerny氏によると、PS5所有者の25%以上が120fps対応のテレビを所有しており、PS5プレーヤーの約10人に1人が可変リフレッシュレートに対応したテレビを所有しているという。8Kでのゲームプレイは楽しい追加機能だが、8Kテレビはそれほど普及していないため、この機能を利用できる既存のPS5ゲーマーの割合はさらに少ない。
Cerny氏は、発売に向けてアップグレードされるゲームのラインアップについて、「3種類のPS5 Proモードに対応した複数のタイトルをすでに確認している」と語った。「時間がたつにつれて、特にPS5 Proリリース後に発売されるゲームでは、解像度よりも、さまざまな戦略を通して画質を高めることに重点を置いた、より繊細なアプローチが増えていくだろう」
同氏によると、PCゲームを移植するプロセスは、PS4 Proの場合よりも簡単だという。同氏はPS5 Proを、超高速SSDを搭載したPS5と同様、今後のゲームトレンドを先導していく存在になると考えている。
同氏は筆者に対して、「PS5 Proでは、AMDがロードマップアーキテクチャーの次のステップとして開発した新しい高度な(レイトレーシング)機能セットを使用している」と語った。「しかし、周りを見回すと、その機能セットを使用しているほかのAMD GPUはまだない。われわれが開発を促したわけだが、それをやって本当に良かったと思っている。開発者たちの反応は極めて素晴らしいものだった」
さらに、同氏は、コンソールゲームとPCゲームが交わり続けていることを、PlayStation 5向けゲームの多くはすでにPCでもプレイできることを含め、ボーナスとみている。「こうしたゲームはハイエンドのPCでプレイされるため、PS5 Proでは、特にわれわれの役に立っている。彼らが数千ドルのPCでやったことを見てから、何をPS5 Proに移植すべきなのかを判断することができる」
筆者は1つの部屋に設置された複数のテレビを回りながら、初期バージョンのPS5 Pro向けアップグレードが適用されたPS5のゲームを断片的にプレイした。PS5 Proの画面を直接キャプチャーして、アップグレードの効果を見せることは許可されなかった。おそらく、ゲームのアップデートが11月のリリース前に変更される可能性がまだ残っているからだろう。筆者は全く同じ4Kテレビを2台並べた状態で6つのゲームをPS5版とPS5 Pro版でプレイさせてもらえた。また、それよりもはるかに大きな80インチの8Kテレビでも、いくつかのゲームをプレイすることができた。
「Horizon Forbidden West」「The Last of Us Part II Remastered」「Marvel's Spider-Man 2」「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」など、筆者がプレイしたゲームの多くは、4Kにも60fpsにも対応した新しいPS5 Proモードのプレイ感に特に焦点を当てていた。そして、そのプレイ感は素晴らしかった。「The Last of Us」で草むらを走ったり、「Horizon」で滝を眺めたりするだけでも楽しかった。「Spider-Man 2」と「ラチェット&クランク」も大画面で、より滑らかに、より高いフレームレートでプレイする方がはるかに気持ち良かった。アップグレードの多くは一目で分かるものではなく、違いを確認するには、プレイをやめて、両者を比較しなければならないこともあった。
特に「FINAL FANTASY VII REBIRTH」は、現行のPS5版のぼやけたグラフィックと比べて、違いが際立っていた。すべてがより鮮明で、60fpsでの表示も滑らかだった。まるで眼鏡を新調したかのような体験だった。
「F1 24」を試したときには、雨のレース中に新しいレイトレーシング効果が現れ、コースや周囲がより写実的に感じられた。ぬれた舗装路には車と空が、近くのガラス壁には道路の向かい側にあるスタンドが映し出された。
「グランツーリスモ7」は、2つの新しいモードが追加されたこともあり、おそらく最も魅力的なデモだった。80インチの画面で見る8Kのゲームプレイは、巨大なディスプレイを使ったシムレーシングのセットアップにどう役立つのかと思わせるものだった。同ゲームに4Kモードで追加されたレイトレーシングにより、混雑したレースで車がよりリアルに感じられた。筆者は車の仕上がりを見るのに夢中になってしまい、何度も衝突してしまった。
PS5 Proのようなサイクル半ばで登場した約700ドルの上位版コンソールは、特に初代PS5が今でも非常に素晴らしいゲーム機であるため、ほとんどの人が購入するわけではないだろう。SIEはこの現実を受け入れる準備ができているようで、Cerny氏と西野氏は、過去のアップグレードもPlayStationの新規ユーザーを大いに引きつけたと語った。SIEによると、PS4 Pro購入者のかなりの割合が新規ユーザーであり、PS5も同様だという。このことは、PS5の購入を検討していた多くの人がProを選択する可能性があることを示唆している。
Creative Strategiesのアナリスト、Carolina Milanesi氏はPS5 Proについて、「ほとんどの市場にはProモデルがあり、その点ではゲーム機も同じだ。スマートフォンやPCほど大きな市場ではないというだけのことだ」と述べた。「ソニーによると、Proの新しい仕様を生かすためにゲームに求められるアップデートはそれほど多くない。コンソールとPCの比較は、優劣よりも好みの問題のはずだ。体験は一方より優れているわけではない。異なるだけだ」
その意味で、PS5 ProはゲーミングPCに代わるコンソールとして捉えられるかもしれない。2024年、PCゲームへの期待は4年前よりも高まっており、PS5 Proはアップグレードされたゲームに対応できる。筆者は今すぐPS5からアップグレードしたいとは思わないが、もし初めてPS5を買おうとするなら、今後テレビの買い換えの際にはProを積極的に検討するだろう。
PlayStation 5 Proこの記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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