日本電信電話(NTT)と東北大学は8月30日、さまざまな分野を横断したビジョン共有型共同研究を9月に開始すると発表した。両者は、東北大学の次世代放射光施設「NanoTerasu」(ナノテラス)と災害科学、医療、ロボティクスとNTTの人間拡張技術を組み合わせ、IOWNと融合させた新たな価値の創出に取り組むという。
共同研究は、災害科学とリモートワールドで実現する「地域の命を守るメタバース空間のヘルスケアサービス」を掲げる「テーマA」、ロボティクスとサイバネティックス技術で実現する「マルチモダリティ表現技術とロボットを活用した次世代技能遠隔学習」を掲げる「テーマB」、ナノテラスと五感情報通信技術で実現する「体験できないこと、なれないものになることができるマルチモーダル五感変換復元」を掲げる「テーマC」の、3つの軸で推進する。
テーマAは、災害などから人を救うネットワークサービスにより、社会拡張を実現。具体的には、メタバース空間にデジタルヘルスケアサービスを提供する場を作り、医師や専門医不足の解消を目指す。また災害時は、データに基づく効率的な避難支援と、災害関連死の抑制に取り組む。
テーマBは、熟練者の技能を遠隔から学べるシステムを構築する。主観的で曖昧な熟練者の技能情報を、視覚や触覚などの非言語情報に変換するマルチモダリティ表現技術やロボットによる身体的ガイダンスと組み合わせ、次世代の技能遠隔学習システムを開発する。
テーマCは、感覚を他の感覚に変換する五感相互変換、圧縮、再現技術の開発だ。これにより、例えば視覚に障害がある人が、視覚を他の感覚に変換できるのではないかと考えているという。また、ナノテラスのナノレベルの可視化技術や分析基盤技術に、NTTの人間拡張技術、IOWNの超高速ネットワークを組み合わせ、宇宙、地球、自然、原子レベルなど、人間の機能を超越した新しい世界観の発展につなげる。
本共同研究は、東北大学の国際放射光イノベーション・スマート研究センター、サイバーサイエンスセンター、工学研究科、災害科学国際研究所など7組織、NTTグループのNTT人間情報研究所、NTTネットワークサービスシステム研究所、NTTアクセスサービスシステム研究所など7つの研究所で行う。
両者はこれまでも、ビジョン型共同研究として、2期6年間の共同研究を実施してきた。第3期となる今回は、災害科学に加え、東北大学のナノテラス、NTTのIOWN構想の取り組みを活用し、体制面を複数の組織や研究者を横断したものへと強化する。
共同研究は3年間実施する。テーマAは、早期の社会実装を目指し事業会社と連携したPoC(Proof of Concept:概念実証)を来年度から実施し、3年目にはトライアルを通じてビジネスモデルを検討する。
テーマBは、初年度は技能遠隔学習プラットフォームの基礎検討を行い、2年目は技術検証と共にトライアル環境の構築を、3年目にはトライアルを行う。
またテーマCは、初年度の基礎検討、2年目の技術検証とデモ環境を通じて、3年目にはナノの世界を体験できる新しい世界観のトライアルを実施し、技術要件をまとめる。
両者は、各テーマにおいて人材と技術を連携させ、社会や地域により貢献できる研究となるよう取り組んでいくという。
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