過去最高収益のNTT島田社長、「ポイ活」でドコモのARPU反転に意欲--顧客減は「そろそろ限界」

 NTTは8月7日に2024年度第1四半期決算を発表。売上高は前年同期比4.1%増の3兆2400億円、営業利益は前年同期比8.2%減の4358億円と、増収減益の決算となった。

  1. 増収減益も、第1四半期で過去最高の収益--「銀行」の設立は
  2. NTT法の重要事項は「モバイル通信でユニバーサルサービスをカバーすること」

増収減益も、第1四半期で過去最高の収益--「銀行」の設立は

 同社の代表取締役社長である島田明氏によると、売上高はNTTドコモを中心とした総合ICT事業や、NTTデータを中心としたグローバル・ソリューション事業のセグメントの増収に加え、為替差益800億円の反映によって、第1四半期では過去最高の収益を更新したとのこと。とりわけ総合ICT事業セグメントでは、NTTドコモのスマートライフ事業における金融・決済事業の売上増が大きく貢献したという。

決算説明会に登壇する島田氏。今回の決算では、子会社のNTTソノリティが7月に発売したオープンイヤー型ヘッドホン「nwm ONE」(ヌーム ワン)を自ら装着してアピールする場面も見られた
決算説明会に登壇する島田氏。今回の決算では、子会社のNTTソノリティが7月に発売したオープンイヤー型ヘッドホン「nwm ONE」(ヌーム ワン)を自ら装着してアピールする場面も見られた

 一方で営業利益の減少要因としては、NTT東日本・NTT西日本(NTT東西)を中心とした地域通信事業セグメントで不要な資産を撤去したり、災害復旧に費用がかかったりしたこと、そして総合ICT事業セグメントでNTTドコモの顧客基盤強化に向けた投資が増加したことを挙げている。

 中でも後者に関して、島田氏は「少し量販店での販売を強化しないといけないと考えている」と話しており、実店舗の販売チャネルの強化が投資増の要因になっていると説明する。

 実際に7月26日からは、従来店頭で端末購入ができなかったオンライン専用プラン「ahamo」の契約者に対しても、店頭で機種変更ができる「ahamo機種変更フェア」を開始。さらに8月からは、新料金プラン「eximoポイ活」の提供に合わせてマーケティング施策を強化しているという。

 島田氏はこれら販売施策に関して、効果が出るのは「下半期くらいから」と話しているが、既に最上位の「eximo」を選択する率がかなり高まっているとのこと。「予想以上にeximoを選択する顧客が、ここのところ増えている」と島田氏は話し、近いうちにeximoの選択率が、低価格の料金プラン「irumo」と均衡するのではないかとの見解を示している。

 ただし、今四半期のARPUは3910円と、前年同期と比べ80円ほど下がっており、下げ止まりの傾向は見られない。その要因について島田氏は、やはりirumoの販売が伸びているためと説明している。

 島田氏は「NTTドコモは顧客基盤をずっと減らしてきた歴史があるが、私としてはそろそろ限界と思っている」と、戦略的に顧客基盤を減らさないことに重きを置いている様子を見せる。それだけに「irumoは競争対抗上、戦略的に出していく商品」と話し、解約を増やさないため今後もそのアピールを継続していくという。

 ただ一方で、ARPU引き上げに向けた取り組みも進めており、そのためにも大容量プランの利用増によるeximoの契約拡大、そして「ドコモポイ活プラン」の契約拡大に重点を置いているようだ。eximoポイ活に先んじて4月から提供を開始している「ahamoポイ活」について、島田氏は「おかげさまで順調」と好調が続いている様子を示しており、eximoポイ活の開始によって上位プランの契約に弾みが付くことを期待しているようだ。

 その上で、ARPUが上昇に転じる時期について「今年度中には」と島田氏は言及。顧客基盤を高めてARPUを改善した上で、今後大きな伸びが期待できるスマートライフ事業や法人事業に注力し、総合ICT事業セグメントにおける通期での増益達成を目指すとしている。

 そのスマートライフ事業で注目されているのが、競合にあってNTTドコモにない銀行の設立である。島田氏はこれまでマネックス証券やオリックス・クレジットを子会社化して金融事業を拡大してきた経緯を踏まえ、「顧客の利便性を考えると、銀行口座がある方が利用しやすい」と、銀行を持つことには前向きな様子を見せる。

 ただその手法に関して、島田氏は「M&Aでやるか、自ら作るかさまざまな選択肢はあると思うが、いずれにせよ金融総合サービスを展開する上で、必要な要素は一段と強化したい」と回答するにとどめており、具体的な方針は示さなかった。

NTT法の重要事項は「モバイル通信でユニバーサルサービスをカバーすること」

 また島田氏は、現在総務省で議論が進められており、重要な課題に対する論点が出揃った、いわゆるNTT法の見直しに関しても言及。一連の議論の中でも、同社にとって重要なことはユニバーサルサービスの今後であるとし、モバイル通信でユニバーサルサービスをカバーすることを原則とすべきと改めて主張する。光回線の整備にこだわらず、モバイル通信を積極活用することで、赤字負担を減らしながらユニバーサルサービスを確保することが重要としている。

 その根拠となっているのが、ユニバーサルサービス制度のためにNTT東西に生じている、固定回線を維持するための赤字だ。島田氏はその規模について「現状600(億円)くらい」と話す。それだけに地域通信事業に関して抜本的なコスト削減を進めるとしており、既に7月には「タウンページ」などの電話帳サービスや、「104」の番号案内サービスなどの終了を打ち出している。

 その上で島田氏は「サービスの高度化を考えた場合、そういう無駄な投資とか、費用をかけていくよりも、新たに高度なサービスにお金をかける方向に早急に移すのが望ましい」と説明。制度そのものの見直しで事業環境を改善し、AIなどの新しい技術に投資して高度なサービスを提供していきたい考えを示した。

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