カミナシは8月27日、都内で事業戦略発表会を開催し、新たに現場の従業員や教育管理、設備保全の領域に進出することを発表。2024年度中に新製品として3製品を加え、計5製品をラインアップしたマルチプロダクト展開を行う。第1弾として、現場従業員のマネジメントをサポートする「カミナシ 従業員」を発表し、同日より提供を開始した。
カミナシでは、ノンデスクワーカーの人手不足について、デスクワーカー以上に深刻な状況であり、DXによる生産性向上は現場を持つ企業にとって喫緊の課題であることを背景に、現場向けのクラウドサービス(SaaS)を展開。2023年3月にはプロダクト戦略「まるごと現場DX構想」を策定し、現場のさまざまな課題を解決するためのマルチプロダクト化を目指すことを公表している。
主力製品である現場帳票システムの製品名称は「カミナシ レポート」に変更し、現場DXプラットフォーム「カミナシ」をシリーズ製品名(ブランド名)とすることもあわせて発表。現在提供しているカミナシ レポート、AI個数検査システム「カミナシ CountAI」とともに、新たに提供するカミナシ 従業員を加えた5つのサービスラインアップで展開していく構えという。
発表会で登壇したカミナシ 代表取締役 CEO 諸岡裕人氏は、家業での現場経験とカミナシでの現場DXに携わるなかで、現場の基盤となる3つの領域として「作業方法」「人」「設備」が重要だとし、この3つの領域を軸として事業を展開するという。
マルチプロダクト展開の背景としては、労働人口激減はもとより、外国人従業員増加やスポットワーカーなどの流動性が加速する社会的な要因を挙げる。流動性が高く、雇用する人数が多いアルバイトなどパートタイマーの従業員に対して、入社のたびにツールの使い方を習熟してもらうことへの難易度の高さ(機能習得の問題)や、現場での作業中にいくつものツールを切り替えて使用することの難しさ(作業環境の問題)、パートタイマーを含めた従業員個人にかけられるデジタルツールへの投資額の大きさ(予算の問題)が、課題としてある。
今後、前述したカミナシ レポート、カミナシ CountAI、カミナシ 従業員に加え、現場の機械・設備の異常報告や修理履歴などの記録を行い、予防保全から事後保全まで設備保全の業務を一気通貫で管理するクラウドサービスの「カミナシ 設備保全」、現場従業員への教育・研修を簡単に実行・管理できるクラウドサービス「カミナシ 教育管理」の2つの2024年度中に提供予定。また、これらのカミナシのシリーズ製品に共通してログインできる「カミナシ ID」も提供する。共通のIDを活用することの利便性向上やデータの蓄積、有機的な連携により大きな価値を生み出していくとしている。
新たに提供開始となったカミナシ 従業員についても説明が行われた。現場管理者・総務部門と従業員間のあらゆる情報のやりとりを1つのサービス上で完結できるシステムとなっている。
説明を行った新製品開発責任者を務めるカミナシの加古萌氏は、現場の声として「会えない、渡せない、伝わらない」という課題を挙げ、現場従業員とのあらゆる情報のやりとりにおいてデジタル化が進んでおらず、非効率な状況に置かれていると指摘。加えて、部分的にデジタル化を進めていくことは、楽になる部分があるとしつつも、かえって管理者の負担を招くだけの結果になる場合も多々あるという。
カミナシ 従業員の主な特長としては、1つのサービス内で業務連絡や給与明細の配布など、現場管理者・総務部門と従業員が行っている情報のやりとりを完結できること。カミナシ 従業員専用のIDとパスワードの発行により、メールアドレスが付与されていないアルバイトなどのパートタイマーをはじめとした、すべての雇用形態の現場従業員が利用可能であること。そして、カミナシ 従業員の情報のやりとりについては、多言語で表示可能となっており、日本で働く外国人材の母国語のなかで特に多いとされる13言語に対応しているため、さまざまな外国人従業員とのコミュニケーションを円滑にするという。加えて、翻訳の精度を高めるため、AIを活用し文章を翻訳しやすい形式にするAI校正機能も搭載予定となっている。
会社からの連絡事項を一斉に全従業員に共有できる「お知らせ機能」、給与明細を配布できる「給与明細配布機能」の提供を皮切りに、今秋にはリアルタイムで相互コミュニケーションができる「チャット機能」とAI校正機能を提供予定としている。
すでにカミナシ 従業員については、製造業や飲食業、介護、ビルメンテナンス、バス、タクシー業界などで39社が先行で導入。多様な雇用形態や勤務形態のほか、多国籍な従業員が多く在籍する業界において有効に活用できるものとし、今後も、現場従業員が入社から退職まで安心して働ける環境を提供できるサービスとして、継続的に開発を続けていくとしている。
先行導入を行っている、長野県にある食肉加工業の吉清 総務部 部長を務める牧野野新治氏も登壇。外国人従業員とのコミュニケーションにおいて、それぞれの国において主に使われているメッセージアプリやSNSが異なること、さらにウェブでの翻訳ツールを組み合わせてやりとりを行うという手間がかかる実態や、給与や労働環境に絡むような複雑な内容については、スムーズに伝わらないという課題があったと語る。
カミナシ 従業員の先行導入によって、外国人従業員とのコミュニケーションにおける負荷の低減を実感しているほか、カミナシ 従業員からの通知は仕事上重要なものという意識も付くようになり、すぐに対応する習慣がついたことも大きいと語った。
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