メガネ型ディスプレイは持ち運び可能な画面を提供するデバイスであり、USB-Cで接続することで、出先でも大きな画面を利用することができる。特に、飛行機の中などのモニターを持ち込むことが難しい場面でゲームをしたり、映画を見たり、ノートPCに接続して仕事をしたりするのに威力を発揮する。筆者はこれまで、数多くのメガネ型ディスプレイをレビューしてきたが、「RayNeo Air 2s」はその中でも特に明るく大きな画面を持っている。ただし、それがこの製品の一番の問題でもある。筆者には画面が大きすぎるのだ。
このデバイスの小売価格は399.99ドル(日本のAmazonでは6万4499円)で、「XREAL Air 2 Pro」よりも約50ドル、「VITURE Pro」よりも約60ドル安い。
出張が多く、常にゲームや映画を楽しむための最高の手段を模索している筆者は、出先にメガネ型ディスプレイを持っていくのが好きだ。「Steam Deck」や「Nintendo Switch」をはるかに大きな画面で遊ぶことができるし、スマートフォンで映画を見る際の没入感も高まる。映像も十分にシャープであり、「MacBook」につなげて仕事を片付けることもできる。メガネ型ディスプレイを装着してデバイスを脇に置き、寝転がって目の前に浮かんでいるディスプレイを見るのは気分がいい。
RayNeo Air 2sには、両目に1つずつ、2つの1080pマイクロOLEDディスプレイが搭載されている。すべての演算はデバイス上部にある出っ張りの部分で行われ、映像は目の前にある斜めになったレンズに上から投影されて、そのレンズに反射した映像が目に映るようになっている。そのため、ディスプレイは視界全体を埋め尽くすわけではなく、このレンズに映った部分だけが目に入ることになる。RayNeoによれば、見えるディスプレイの大きさは、6mの距離に置かれた201インチのモニターを見るときの大きさに相当するという。
この画面サイズは、筆者がこれまでに使ったことがあるメガネ型ディスプレイの中では最大で、実際、筆者の目には大きすぎた。画面のへり付近はぼやけてピントが合わず、四隅は歪んで見える上に、レンズに映る視界から外れてしまう始末だ。ゲームでは画面のへりや隅にUIが配置されることが多いため、その場所のUIを読み取るのが難しかったり、場合によっては画面から外れてしまったりした。ただし、ヒンジを自由に動かすことができるため、眼鏡を前後に動かしてレンズに映る画面の位置を修正したり、画面の角や端の曲がった部分が真っ直ぐに映るようにすることはできる。
しかし残念ながら、どう調整しても、どこかが欠けることなく画面全体をシャープな映像として見ることはできず、筆者は何度も画面を縮小して全体が見えるようにしたいと感じた。実のところ、RayNeoにはこの問題を緩和できる周辺機器が存在するのだが、それについては後述する。
画面の輝度は最大5000ニトで、これまでに見たことがある中では最も明るかった。また、筆者が以前レビューしたXREAL Air 2 ProやVITURE Proと同じく、120Hzのリフレッシュレートに対応している。右側のツルには輝度調整のためのボタンが2つあり、左側のツルには2つの音量ボタンとメニューボタンが配置されている。メニューでは、スピーカーの音量、リフレッシュレート、画像の色温度を調整できる。
スピーカーは両方のツルに内蔵されている。RayNeo Air 2sの特徴として、両サイドにそれぞれ2つのスピーカーがあり、1つはツルの上側に、もう1つは下側に配置されている。筆者がこれまでにレビューした他のデバイスには、下向きのスピーカーが1つあるだけだった。これによって、筆者がテストしたメガネ型ディスプレイの中では最大の音量を実現している。
付け心地に関しては、これまでに試したことがあるモデルの中では中間くらいに位置する。RayNeoのスマートグラスのよいところは、XREALの製品と同じように、レンズの角度が3つの中から選べるため、視野角を調整できることだ(VITUREの製品は角度を変更できない)。ツルの後ろの部分には多少の弾力があるが、XREALの製品ほどではなかった。筆者の頭の形には、XREALのデザインの方がツルの曲がり方や曲がり始める位置が合っており、RayNeo Air 2sだと耳が若干突き出て見えてしまう。
ノーズパッドの選択肢は2つしかなく、他のスマートグラスメーカーよりも1つか2つ少ない。そのため、鼻が接触する部分の着け心地の調整手段は限られている。残念なことに、レンズの角度は調整できるものの、依然として筆者にとっては画面の位置が少し高すぎた。VITUREのスマートグラスにはノーズパッドなしで使う選択肢があり、同様の問題を改善できたのだが(筆者は結局この構成を最もよく使っている)、この使い方はそれほど快適ではなかった。RayNeo Air 2sの場合も、ノーズパッドを外すとちょうど筆者の目の位置に合うのだが、鼻も痛くなってしまう。
また、XREAL Air 2 ProやVITUREのメガネ型ディスプレイとは違って、ディスプレイの透過度を変更する手段はない。XREALとVITUREの製品にはエレクトロクロミックフィルムの透過度を調整するボタンがあり、レンズの透明度を無段階で調整することができるのだが、この機能はぜひ欲しかった。
画面の外側にあるガラスは透明度が低くて色も濃く、通常の眼鏡よりはサングラスに近い。画面の輝度は変更できるが、輝度を下げても眼鏡の向こう側を透かして見るのは難しい。光の大部分を遮るため屋外でも画面ははっきりと見えるのだが、着けたまま周囲を見るのは簡単ではない。このため、このデバイスを着けているときには、ディスプレイから目線を外したり、下の方を見たりしても、ガラスの色が濃すぎて周囲が見にくい。
ただし筆者の場合、結局どのデバイスでも不透明度を最高まで上げて使っているので、このことが大きな問題になることはなかった。筆者は通常、ゲームや映画に集中できるように周囲の景色をできるだけ遮断してメガネ型ディスプレイを使い、何かを見る必要があるときにはデバイスを外すようにしている。それからもう1つ、接続を解除するたびに輝度が50%にリセットされるという煩わしい問題があり、デバイスを着けるごとに輝度を調整しなければならなかった。
「Pocket TV」はRayNeoが提供している中で最も有用なアクセサリーで、画面サイズ問題を緩和するためにも使える。Pocket TVには「Google TV」が搭載されており、「Disney+」「Prime Video」「YouTube」などのさまざまなエンターテインメントアプリを利用できる。またこのアクセサリーを使用すると、画面サイズの拡大・縮小を含む、より詳細な設定項目にアクセスできるようになる。残念ながらスケールは80%から100%までしか変更できず、完璧だと言えるほど画面を縮小することはできないのだが、それでも周辺視野の見え方は改善された。この機能がデバイス本体に組み込まれていないことは残念でならない。
Pocket TVはMicroSDカードに対応しており、ストリーミングではなく手元のメディアから動画をロードすることもできる。Pocket TVはそれ自体にバッテリーを備えているため、モバイルバッテリーのようにスマートフォンなどのデバイスを接続して充電することもできる。この機能は、メガネ型ディスプレイを出先に持っていくような場面では極めて有用だ。
RayNeo Air 2sはUSB-Cのデバイスにしか接続できないが、選択肢を広げるためのアクセサリーが2つ販売されている。その1つである「JoyDock」は、Nintendo Switchに付属するオプションのドックを使用しなくても、Switchの画面を見ることができるデバイスだ。SwitchのドックはSwitch本体に電源を供給できるため、次の充電までの間隔を遅らせることができる上に、他のデバイスのUSB充電器としても使えるため、旅行のお供としては優れている。
ただし、VITUREのドックは2つのメガネ型ディスプレイに接続できるのに対して、JoyDockは1つのデバイスにしか接続できない。また残念なことに、VITUREとXREALのドックは「Xbox」や「PlayStation」などのHDMI機器にも対応しているが、JoyDockは対応していない。
RayNeo Air 2sをHDMI機器に接続するには、GroovisのHDMIとType-Cの変換アダプターを購入する必要がある。これを使用する場合、付属のHDMIケーブルでゲーム機とアダプターを接続し、それをAir 2Sに接続した上で、もう一本の付属のケーブルでアダプターに電源を供給する必要がある。この最後のステップについては少々残念だ。なぜなら、XREALとVITUREも似たデバイスを提供しているが、こちらは追加の電源ケーブルを必要としないためだ。
RayNeo Air 2sは見た目は素晴らしいし、問題なく使えはするのだが、多くの人にとっては、大きな画面は必ずしも快適な視聴体験につながらないかもしれない。筆者の場合、ゲームを楽しむよりも焦点の調整により多くの時間を費やしてしまった。個人的には、画面全体をはっきりと見られるもっと小さい画面の方が好みだ。JoyDockやGroovisのアダプターなどのアクセサリーに、競合他社の製品にある機能が1つか2つ欠けている点も物足りない。RayNeo Air 2sは競合製品より安く購入できるものの、これまでにテストした機種と比較すると、あまりお勧めはできないと言わざるを得ないだろう。
RayNeo Air 2sこの記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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