電通は8月5日、AI広告コピー生成ツール「AICO2」(アイコ2)を開発したと発表した。電通コピーライターが培ってきた「思考プロセス」を学習し、「心に響くコピー」を生み出すという。同日には、国内電通グループのAI戦略「AI For Growth」についても説明し、AI関連の研究、開発、人財育成などに取り組んでいくことも明らかにした。
AICO2は、2017年にリリースした「AICO」(アイコ)の新世代バージョン。国内電通グループでは、2016年から8年以上にわたってAIを活用してきており、AICOはAIコピーライターとして誕生。「クライアントと一緒に実際に広告も制作しており、2019年のコピー年鑑『東京コピーライターズクラブ』(TCC)には、コピーライターとしてAICOの名前がクレジットされている」(電通 CXクリエーティブ・センター エクスペリエンスニュートラルデザイン3部 クリエーティブ・ディレクター コピーライターの川田琢磨氏)とその「経歴」を紹介する。
2023年7月には、生成AIを用いた次世代のAICOの開発を本格的にスタート。初代AICOに比べ、クリエーターやプランナーの「創造的思考モデル」を学習していることが特徴だ。
創造的思考モデルとは、電通のコピーライターが培ってきた思考プロセスを追加学習したもの。「世の中にあるいろいろなキャッチコピーをたくさん学習し、テーマとなる言葉に対し、学習したキャッチコピーの文法や類似パターンに合わせて新たなキャッチコピーを出力していたのが初代。AICO2は、キャッチコピーが生まれる過程を重要視し、『伝えたいこと』にあわせて、思考回路に基づき出力している。コピーライターのブラックボックス化されていた思考回路の部分を学習させたのがポイント」(川田氏)と説明する。
思考回路の部分については「企業秘密の部分もあり、どんなデータを実際に入れたかは具体的には話せないが、アウトプットではなく、そこにたどり着くまでの思考の部分を入れている。追加学習のポイントは、量も必要だが、どちらかというと質が大事になってくる」(電通 CXクリエーティブ・センター センター長 エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター 主席 AI マスターの並河進氏)と詳細は明らかにしなかった。
AICO2は、キャッチコピーとして「伝えたいこと」や「商品名」「解決したい課題」などを入力すると、「伝えるべきこと」と「表現方法」が理由とともに表示される仕組み。ケースバイケースというが、デモでは入力後1分も経たずに数多くのコピーライトが生み出された。現段階では電通社内での使用を考えているが、将来的には外部への提供や、クライアント側の思考を組み込むなどの展開もありうるかもしれないとのこと。
同日発表したAI戦略、AI For Growthについては「電通グループでは、AIを活用したソリューションやプロダクトを発表してきたが、PoCが多かったという印象がある。AIを活用したビジネスがそれほど広がらず利益になかなかならないという課題があった。そのような中、生成AIが大きな波として登場してきた」(dentsu Japan データ&テクノロジー プレジデント 事業会社担当の山口修治氏)と説明。
「電通では、ありとあらゆる範囲にAIの活用を進めている。お客様や社会の成長に貢献するAIを常に1丁目1番地において忘れないようにしなければいけない。私たちは仕事をしているとどうしてもミスをする。しかしAIもミスをするしエラーも出す。そしてエネルギーも消費する。できるだけ人、AIのエラーを減らし、できればなくして、エネルギーの使用もいたずらに増やさない。人とAIによる継続的な創意工夫はこれからも終わりがなく、毎年やっていかなければならないと思っている」(山口氏)と続けた。
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