気候変動対策に挑む注目のクリーンテック企業【エネルギー編】

高 実那美 (ケップル)2024年07月22日 09時00分

 気候変動問題への世界的な危機感が高まっている。2023年にドバイで開かれた「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」では、世界の平均気温上昇を産業革命以前の1.5度に抑えるという、2015年の「パリ協定」で採択された目標を達成するため、2025年までの温室効果ガス(GHG)排出量のピークアウトや再生可能エネルギー(再エネ)発電容量の増加、CO2除去や水素などを含むゼロ・低排出技術の加速などが明記された。気候変動問題への社会的、経済的な取り組みが重要視されており、環境への負荷を低減させる製品やサービス、プロセス、技術などを指す「クリーンテック」へ注目が集まっている。

 クリーンテック業界の発展に貢献する組織「Cleantech Group」は、持続可能な成長を促進するイノベーションに焦点を当てた、調査、コンサルティング、イベント運営を行う企業として2002年にアメリカを拠点に設立された。同社は2009年から毎年、世界で最も有望なクリーンテック領域のスタートアップ100社を社内外の有識者による選定のもと、「Global Cleantech(GCT) 100」(GCT100)として発表しており、世界中のクリーンテック投資家から注目されている。

 15年目を迎えた2024年は、世界147カ国の2万8000社の中から、21カ国100社のスタートアップが選出された。

 本稿の著者が所属するケップルでは、独自のスタートアップデータベース「KEPPLE DB」を提供しており、日々さまざまな注目領域のスタートアップ情報に関する調査レポートをカオスマップとともに公開している。このたび、GCT100の選出企業に加え、類似する国内のクリーンテック関連企業を調査し、カオスマップを作成した。

 国内外のクリーンテック市場動向とともに前後編に分けて紹介していく。

  1. 世界のクリーンテック市場
  2. 日本のクリーンテック市場
  3. アンモニア燃料
  4. 水素
  5. 地熱発電
  6. 次世代太陽光発電
  7. 太陽光発電保守・最適化
  8. 廃熱利用
  9. その他発電
  10. エネルギー管理
  11. エネルギー取引
  12. バッテリー・蓄電
  13. EV充電ステーション
  14. 商用EV
  15. 日本企業が脱炭素に取り組む中でスタートアップの役割は大きい

世界のクリーンテック市場

 クリーンテックとは、環境への負荷を低減する技術全般を指し、再生可能エネルギーやEV、バイオプラスチック、CO2吸収貯蔵、リサイクルなど幅広い分野が含まれる。一方、近年注目されているクライメート(気候)テックは、クリーンテックから派生した分野で、CO2排出量削減といった地球温暖化対策に焦点を当てた技術や取り組みを指す。

 再生可能エネルギーやEVといったクリーンエネルギーへの移行に向けた投資は、2023年に約1兆8000億米ドルとなり過去最高を記録した。一方で、2050年頃までにネットゼロを達成するためには、2024年から2030年の間に毎年4兆8000億米ドルの投資を行う必要があるとされており、さらなる技術発展と資金供給が求められている。

 世界の気候変動対策を牽引する欧州連合(EU)では、2019年に脱炭素と経済成長の両立を図る欧州グリーンディールが定められ、2050年までにEU域内における気候中立を達成するという目標を掲げている。アメリカでは、2022年8月に過度なインフレを抑制しつつエネルギー安全保障と気候変動対策を進めることを目的とした法律、「インフレ抑制法(IRA)」が成立し、気候変動対策として3910億米ドルの予算が充てられた。クリーンエネルギー導入の税制控除などにより、気候変動対策を加速させる狙いがある。

 世界で最もCO2排出量の多い中国は、2030年までのCO2排出量ピークアウト、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指しており、2023年のクリーンエネルギー投資は世界全体の38%を占める6760億米ドルで世界最大となっている。

 2024年のGCT 100選出企業が、2023年に調達した資金は計28億米ドルにのぼるとされる。CVCからの投資が全体の28%を占め、例えば、炭素の削減・除去に取り組むスタートアップを支援する10億ドル規模のファンドである「Microsoft Climate Innovation Fund」は、選出企業の内5社(Electric Hydrogen、Eavor、Rondo Energy、AMP Robotics、Boston Metal)へ投資している。

 同社は、グリーン水素のような最新の技術から、地熱発電や蓄電、廃棄物分別、鉄鋼といった既存の産業や技術の脱炭素化に貢献する企業など、幅広い分野で台頭するクリーンテックへ投資を実行している。またクリーンテックに特化したVCとしては、スイスのEmerald Technology VenturesやアメリカのEnergy Impact Partnersがあり、2024 GCT100では、前者がINERATECやPaptic、後者は6KやAerosealなどに投資している。

 太陽光発電やEVといったクリーンテックの代表的な分野は成熟しつつあり、クリーンテックは次の段階に進んでいる。それは、これまで変革が求められながらも長年の組織体制や技術の問題から改変が難しいとされてきた重工業の分野での脱炭素化の動きである。

 鉄鋼や建設をはじめとした重工業は環境へ多大な負荷を掛けており、削減に対して厳しい目が向けられている。投資家は、工業からの排出削減に貢献するスタートアップへの投資割合を増やしており、2022年までの10年間に約8%未満だった配分は、2022年以降14%に上昇しているとされる。2024 GCT100では、製鉄分野の脱炭素化に取り組むスタートアップであるアメリカ発のBoston Metalが選出されている。伝統的に鉄鋼の生産時に大量に燃やしてきた石炭を、電気を使用する溶融酸化物電解技術に置き換えることで排出量を実質ゼロにする技術を構築している。同社は、2024年1月に気候テックに投資する、丸の内イノベーションパートナーズから2000万米ドルの資金を調達したと発表し、鉄鋼における生産量の70%以上を占めるとされるアジア市場でのビジネス拡大に努めていくとした。

日本のクリーンテック市場

 国内では、2021年に政府がグリーン成長戦略を発表し、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて成長が期待される14の重点分野を掲げている。2024 GCT 100に関連する分野では、太陽光・地熱、水素・燃料アンモニア、自動車・蓄電池、次世代電力マネジメントなどがあり、多くのクリーンテックが国内でも求められている。

 GCT 100に日本企業が選出された例はないものの、複数のカテゴリーで選出企業と類似するビジネスが誕生しており、特に、アグリ・フードテック、スマートホームをはじめとしたエネルギー管理、代替プラスチックといった分野で多くのスタートアップが存在している。国内では、より生活に近い分野でのスタートアップの創出が進んでいると考えられる。一方、鉄鋼やリチウム抽出など、現在世界で注目されるクリーンテックでは、主に輸入に頼る分野であることなどから国内スタートアップの該当は無いが、上場企業などで取り組みが見られる。日本が2023年に行ったクリーンエネルギー投資は320億米ドルで、国別順位ではスペインの322億米ドルに次ぐ8位となっている。1位中国(6759億米ドル)、2位アメリカ(3031億米ドル)、3位ドイツ(954億米ドル)の対GDP投資額がそれぞれ3.8%(中国)、1.1%(米国)、2.1%(ドイツ)であるのに対し、日本は0.8%に留まるなど絶対額、割合共に低いことが分かる。

 国内でもグローバルなクリーンテック企業を創出していくための取り組みが必要となる中、三菱地所は2024年秋を目安に、気候テックに特化したイノベーション拠点「Japan Climate Tech Lab(仮称)」の設立を進めている。スタートアップをはじめとした産、官、学の連携によるイノベーションの推進を目標としている。また環境課題に取り組む企業への投資に特化したVCの存在(環境エネルギー投資、丸の内イノベーションパートナーズなど)や、アクセラレーションプログラム(SUITz Tokyo)の構築など、国内においても気候変動に対する取り組みが増えてきている。

 本稿では、2024年のGCT 100選出企業と、事業概要が類似する国内スタートアップ101社を25種類のカテゴリーへ分類し紹介していく。前編では、エネルギーに関する12カテゴリーを取り上げる。

アンモニア燃料

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を2社、国内企業を2社分類している。

 アンモニアは、窒素と水素のみで構成されており、燃焼時にCO2を排出しないため、石炭や天然ガスの代替となるクリーンな燃料として注目されている。再生可能エネルギーによる電力を用いて水を電気分解し、水素と窒素を合成して作られたアンモニアは生産工程でCO2を排出しないことからグリーンアンモニアと呼ばれている。グリーンアンモニアの世界市場規模は、2023年に約4億米ドルと評価され、CAGR116.5%の高水準で推移し、2030年には731億米ドルに達すると予想されている。高成長の背景には、船舶をはじめとした輸送部門でのCO2削減要求が高まる中、アンモニアは輸送や貯蔵が比較的容易な燃料であることが挙げられる。また、同じく次世代のエネルギー源として期待される水素を、輸送・貯蔵する際のエネルギーキャリアの役割も果たすとされる。

 2024 GCT100では、船上でアンモニアを水素と窒素に分解するアンモニア分解システムの運営を行うアメリカ発のAMOGYが選定されている。同社へは、三菱商事が出資を行っており、2023年12月にはアンモニア分解技術を活用した大規模水素輸送の協業可能性を検討するため、共同調査を実施すると発表した。国内企業では、つばめBHBが小型分散型アンモニア製造プラントの商用化を目指しており、2024年2月には国内外の投資家から総額約53億円の資金調達を実施したと発表している。同社は、2022年のAPAC Cleantech 25に選出された実績がある。


会社名ウェブサイト
AMOGYhttps://amogy.co/
Starfire Energyhttps://starfireenergy.com/
つばめBHBhttps://tsubame-bhb.co.jp/
Ammon Fieldshttps://www.ammon-fields.com/

水素

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を6社、国内企業を5社分類している。

 2024 GCT100の選出企業が2023年に調達した資金のうち、水素製造技術を開発するElectric Hydrogenの3億8000万米ドルが最も大きな調達額となった。水素は燃焼してもCO2を排出しないため、天然ガスや石炭の代替となり、脱炭素化に貢献する最も有力なエネルギー源として注目されている。一方課題は、水素製造にかかるコストの高さである。Electric Hydrogenは、グリーン水素のコスト削減に向け水電解装置を用いた水素製造技術の開発を行っており、2023年の資金調達でグリーン水素分野で初のユニコーン企業となった。

 グリーン水素の市場規模は、2050年には1兆4000億米ドルにまで拡大し、85ギガトンの累積CO2削減に貢献するとのデータもある。これは2021年における世界の排出量の2倍に相当する。世界的に政府主導による拡大支援が進められており、例えばアメリカでは、グリーン水素製造に対する10年間の税額控除や大型投資が打ち出されている。国内では、2023年6月に水素基本戦略が改定され、2040年までに現状の6倍となる1200万トン/年の水素を導入する目標が掲げられている。2024 GCT100選出企業で、水電解装置用の膜を開発するカナダ発のIonomrへは、水電解システムによる水素製造の事業化を目指す旭化成が出資を行っている。国内スタートアップでは、金属膜にバナジウムを採用した水素精製技術を開発するハイドロネクストや商用トラック向け水素エンジンを開発するi Laboなどを掲載している。


会社名ウェブサイト
Electric Hydrogenhttps://eh2.com/
Hydrogenious LOHC Technologieshttps://hydrogenious.net/
Ionomrhttps://ionomr.com/
ZeroAviahttps://zeroavia.com/
C-Zerohttps://www.czero.energy/
Electrochaeahttps://www.electrochaea.com/
ハイドロネクストhttps://www.hydronext.co.jp/
フレイン・エナジーhttp://hrein.jp/
i Labohttps://h2ice.co.jp/
Alchemist Materialhttps://www.alchemist-material.com/
OKUMA DRONEhttps://www.okumadrone.com/

地熱発電

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を3社、国内企業を1社分類している。

 地熱発電の世界市場規模は、2023年に662億米ドルと評価され、CAGR6.6%で推移し、2032年には1170億米ドルに達すると予想されている。電化製品や冷暖房システムの稼働に対するクリーンな電力源が求められており、選択肢の一つとして需要が増加している。地熱発電のメリットとしては、他国に依存することなく自国の土地を利用して発電が可能であり、風力や太陽光のように自然環境に左右されないといった点が挙げられる。一方、掘削作業などの初期コストが高く、投資回収までの期間が長いため開発リスクがあり、政策支援が無いと開発が困難という側面がある。また、発電量が限定的といったデメリットも挙げられる。

 2024 GCT100選出企業では、カナダ発のEavor Technologiesが閉鎖系ループによる伝導地熱エネルギーソリューションの構築を行っている。一般的に利用される地中の熱水を必要とせず、地中の熱そのものを利用するため火山地域以外での適用が可能となる。同社へは、ENECHANGEや鹿島、中部電力などが出資を行っている。


会社名ウェブサイト
Eavor Technologieshttps://www.eavor.com/
Fervo Energyhttps://fervoenergy.com/
Dandelion Energyhttps://dandelionenergy.com/
GPEhttps://www.gpe.co.jp/

次世代太陽光発電

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を2社、国内企業を3社分類している。

 次世代太陽光発電として注目されるペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン系太陽電池と比べて薄い、軽い、柔軟といった特徴を持ち、低コスト化が見込め設置場所が限定されないといった利点を持つ。主な原料となるヨウ素の生産量は、日本がシェアの約3割を持つなど、サプライチェーン上の観点からも注目度が高く、初期の頃から開発に取り組む日本勢が先行してきた。しかし近年では、中国が政府支援の下、多くの研究者を動員して開発に取り組んでおり、2020年には関連特許出願数でそれまで5年連続首位を維持してきた日本を抜き、2021年には全体の4割を占める70件の出願を行っている(日本19件)。性能の安定性確立やエネルギー変換効率の向上など、現在はまだ開発途上の段階であるが、世界中でスタートアップが誕生し、開発が進められている。

 2024 GCT100では、オックスフォード大学発のスピンオフ企業であるOxford Photovoltaicsが選出されており、ペロブスカイト太陽電池のマーケットリーダーとなっている。国内では、積水化学工業が20年程度の耐久性を実現する目途を付け、2025年の事業化を目指している。国内スタートアップでは、エネコートテクノロジーズがペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでおり、同社のペロブスカイト太陽電池で発電した電力でKDDIの基地局を運営する実証実験を開始したと発表した。


会社名ウェブサイト
Oxford Photovoltaicshttps://www.oxfordpv.com/
SUNMANhttps://www.sunman-energy.com/
エネコートテクノロジーズhttps://enecoat.com/
ペクセル・テクノロジーズhttp://www.peccell.com/
OPTMASShttps://optmass.jp/

太陽光発電保守・最適化

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を3社、国内企業を5社分類している。

 太陽光発電は世界的に広く普及した再生可能エネルギーとなり、現在ではさらに一歩進んで、バリューチェーン全体におけるコストダウンや管理の効率化を推進する仕組みが求められている。2024 GCT100では、住宅や産業用太陽光発電システム向けに機械学習を活用した保守、管理、監視を行う米国発のOmnidianが選出されている。遠隔によるパフォーマンス検知により、効率的に太陽光発電システムを管理することができ、パフォーマンスの向上に貢献している。この他には、米国発のRaptor Mapsが太陽光発電システムの導入から運用、撤去までを分析、モニタリングするプラットフォームを構築し、長期間に渡りシステム全体の最適化に貢献する仕組みを運営している。

 国内では、Tensor Energyが再エネ発電所や蓄電池の最適運用を支えるクラウドプラットフォームを構築し、AIを活用した発電予測やデータ管理を行っている。2024年3月には、デライト・ベンチャーズをリード投資家とし、ジェネシア・ベンチャーズやDNX Venturesなどから4億5000万円の資金調達を実施したと発表した。この他には、ヒラソル・エナジーが中小規模の太陽光発電所向けに性能診断や発電量改善に向けたプランニングなどを行っている。中小規模の太陽光発電所は全体の9割を占めるとされるが、管理や修理のコストパフォーマンスが悪いという課題があり、同社はそういった課題に対応する仕組みを構築している。2024年3月には、三菱UFJ信託銀行、脱炭素化支援機構などの新規投資家や既存投資家の東京大学協創プラットフォーム開発などからシリーズBの資金調達を実施したと発表した。


会社名ウェブサイト
Terabase Energyhttps://www.terabase.energy/
Omnidianhttps://www.omnidian.com/
Raptor Mapshttps://raptormaps.com/
NEOhttps://neo-ss.co.jp/
Sassorhttps://sassor.com/
Tensor Energyhttps://www.tensorenergy.jp/
エナジー・ソリューションズhttps://www.energy-itsol.com/index.html
ヒラソル・エナジーhttps://pplc.co/

廃熱利用

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を3社、国内企業を1社分類している。

 廃熱回収の世界市場規模は、2022年に725億米ドルと評価されCAGR7.1%で推移し、2027年には1021億米ドルに達すると予想されている。廃熱は工場などでの生産活動の中で必然的に発生するエネルギーであり、これらを効率的に活用することで、エネルギー損失を低減しコスト削減や脱炭素化を促進することが可能となる。一方で課題となっているのは、生産設備によって異なる温度帯の廃熱を活用する仕組みが高コストになりやすいといった点である。大規模な投資を行うことが可能な生産設備での導入に限られ、中小規模の工場では導入が難しいといった課題がある。低コスト化や汎用性の高い仕組みの構築が求められている。

 世界的にはEUを中心に政府主導による廃熱利用の促進が進められており、2023年にはドイツでエネルギー効率法が可決され、データセンターを含めたエネルギー消費量の多い企業に対し環境管理システムの導入が義務付けられ、廃熱の回避や利用が求められることとなった。

 2024 GCT100では、ドイツ発のKraftblockが鉄鋼やパルプ産業向けに、従来よりも高温な1300度までの廃熱を貯蔵できる熱エネルギー貯蔵システムを構築している。最大2週間の熱貯蔵が可能となり、これまで大気に放出していた未利用熱を有効活用することができ、低コスト化も実現している。2023年8月には石油化学企業ShellのCVCであるShell Venturesなどから、2000万ユーロの資金調達を実施したと発表した。国内企業では、東京工業大学発のスタートアップelleThermoが、未利用熱のエネルギー変換技術である半導体増感型熱利用発電の開発に取り組んでいる。2023年11月には、みらい創造機構をリード投資家、Sony Innovation Fundを引受先とした資金調達を実施したと発表した。


会社名ウェブサイト
Kraftblockhttps://kraftblock.com/en/
Qpinchhttps://qpinch.com/
Rondo Energyhttps://rondo.com/
elleThermohttps://ellethermo.studio.site/

その他発電

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を3社、国内企業を5社分類している。

 環境に負荷を与えないクリーンな発電としてさまざまな技術の開発が進んでおり、2024 GCT100では、海の波からエネルギーを作り出す浮体式波力発電を開発するスウェーデン発のCorPower Oceanが選出されている。波の動きを利用しブイ内部の発電機で電力が作られる仕組みで、自然環境を活用した脱炭素化に繋がる発電技術として注目されている。

 2024 GCT100には選出されていないが、2024 GCT100レポート内では核融合関連の企業が紹介されており、国内企業では京都フュージョニアリングが挙げられている。核融合とは、軽い原子核同士が融合し、より重い原子核ができる反応のことで、太陽が燃え続けるエネルギーの源である。このエネルギーを人工的に作り出すことを目指す核融合発電は、CO2を排出せず、従来の原子力発電のような放射性廃棄物が発生しないといった利点があり、実用化に向けた開発が進んでいる。京都フュージョニアリングは、2023年9月に安全な燃料供給を行うための実証実験を行うことを目的とし、カナダ原子力研究所と戦略的業務提携契約を締結したことを発表した。核融合の国内企業としては、この他に、Helical Fusionや大阪大学発スタートアップのEX‐Fusionがある。EX-Fusionは大阪大学と共にレーザー核融合商用炉実現に向けた協働研究拠点の設立を発表している。日本政府は、2024年3月に産官学の連携組織であるフュージョンエネルギー産業協議会の発足を行っており、核融合発電の実用化や産業の創出を促進する組織として期待されている。


会社名ウェブサイト
CorPower Oceanhttps://corpowerocean.com/
Kairos Powerhttps://kairospower.com/
Aeroneshttps://aerones.com/
アルバトロス・テクノロジーhttps://www.albatross-technology.com/
京都フュージョニアリングhttps://kyotofusioneering.com/
Helical Fusionhttps://www.helicalfusion.com/
EX‐Fusionhttps://ex-fusion.com/
Blossom Energyhttps://www.blossom-energy.biz/

エネルギー管理

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を9社、国内企業を8社分類している。

 家庭やビル、工場でのエネルギー使用状況を可視化し、照明や空調、電子機器などのエネルギー利用を最適化する仕組みは、脱炭素化に貢献する技術として活用が広まっている。エネルギーマネージメントシステム(EMS)の世界市場規模は、2022年に408億米ドルと評価されCAGR13.3%で推移し、2030年には1,119億米ドルに達する見込みである。成長の背景には、環境問題だけでなく紛争による不安定な国際情勢やエネルギー価格の高騰などにより、エネルギーコストの節約需要が増していることが挙げられる。

 2024 GCT100選出企業では、ドイツ発のtadoが家庭向けにスマートフォンで自宅の冷暖房やエネルギー消費の管理を行うスマートサーモスタットの運営を行っている。冷暖房の消費を最小限に抑えることができ、エネルギーコストの削減に繋がる。同社は2024年の選出により、Global Cleantech 100に7回選出された企業が殿堂入りするGlobal Cleantech 100 Hall of Fameに認定された。tadoの類似企業として、国内ではNatureが一般消費者向けに電力消費が簡単にモニタリングできるスマートリモコンを開発している。この他の国内スタートアップでは、不動産事業者向けにエネルギーマネジメントをはじめとしたスマートホームソリューションを運営するスタートアップが複数見られ、例えばアクセルラボが運営する『SpaceCore』やLiveSmartがデベロッパーや住宅メーカー向けに運営するスマートホームサービスがある。

 また、産業向けでは、オランダ発のSensorfactが選出されており、同社はAIを活用したエネルギーデータの可視化、最適化プラットフォームの構築を行っている。センサーを設置するだけで機械ごとの電力消費をモニタリングし、設備異常なども感知することができる。国内企業では、インフォメティスがAIを活用したエネルギーデータの分析や活用を支援している。このように、設置の容易性やAIの有効活用が産業向けのエネルギー管理システムの普及を後押ししているといえる。


会社名ウェブサイト
BlocPowerhttps://www.blocpower.io/
Enodehttps://enode.com/
Spanhttps://www.span.io/
Sensorfacthttps://www.sensorfact.eu/
tadohttps://www.tado.com/all-en
Akseloshttps://akselos.com/
Measurablhttps://www.measurabl.com/
Deepkihttps://www.deepki.com/
ev.energyhttps://www.ev.energy/
Naturehttps://nature.global/
LiveSmarthttps://www.livesmart.co.jp/
リンクジャパンhttps://linkjapan.co.jp/
アクセルラボhttps://accel-lab.com/jp/
インフォメティスhttps://www.informetis.com/
ネットワーク・コーポレーションhttps://www.netcorp.jp/
エンブリッジhttps://enbridge.jp/
アイ・グリッド・ソリューションズhttps://www.igrid.co.jp/

エネルギー取引

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を4社、国内企業を4社分類している。

 脱炭素化に貢献する再生可能エネルギーや蓄電池、EVなど、電気を使用する需要家が各地に分散して所有しているエネルギー源を分散型エネルギー源(DER)と呼ぶ。地域に密着しているため送電ロスが少なく、災害時に電力供給が滞るリスクが低いといったメリットがある一方、主流となっていた大規模発電所からの一方向的な電力供給とは異なり、分散するエネルギー資源の需給バランスを調整したり電力網への負荷を軽減することが必要となる。そうした中、AIなどを活用したデジタル技術により、分散する電力資源を効率的に管理、統合しエネルギーを適切に配分する仕組みが構築されている。

 例えば、イギリス発のPicloは、エネルギー需要を予測し最適に分配することが可能な電力需給マーケットプレイスの運営を行っている。同社へは、原子力や火力、再生可能エネルギー事業を運営する東芝エネルギーシステムズや、個人・法人向けの電力・ガス切り替えサービスを運営するENECHANGEなどが2023年に出資を行った。国内企業では、enechainが同様の事業を運営しており、エネルギー価格の透明化や取引の流動性を高めるエネルギー卸取引マーケットプレイスを構築している。

 この他には、電力会社向けに電力網へのEV(電気自動車)負荷軽減プラットフォームを構築するアメリカ発のWeaveGridが選出されている。同社は、電力会社や充電事業者向けに電力網データからEVの充電パターンや需要を分析するプラットフォームや、再エネの供給量に応じてEV充電を制御する仕組みなどを構築している。EVに蓄電された電力を管理・供給する技術であるV2G(Vehicle to Grid)は、EVを蓄電池と見なし電力網に電気を供給する技術で、2023年の市場規模は38億米ドルと評価され、CAGR28.1%の高水準で推移し、2033年には451億米ドルに達すると予想されている。高成長の背景には、EVの世界的な普及や再エネ電力の安定供給に貢献する技術である点が挙げられる。EVの所有者側としては、系統電力網であるグリットを通じてEVに貯めた電力を販売することで電気代を節約できるといった利点がある。国内企業では、東京大学発のYanekaraが事業用EVに特化した充放電システムの開発を行っており、2024年2月にはV2G市場への参入を検証するため、三井不動産と共にカーシェアEVへスマート充電を導入する実証実験を開始したと発表した。尚、同社は事業者向けに自動充電制御を行うEV充電コンセントの開発を行っており、EV充電ステーションカテゴリーに分類している。


会社名ウェブサイト
ES FOR INhttps://www.esforin.com/
Granular Energyhttps://www.granular-energy.com/
Piclohttps://www.piclo.energy/
WeaveGridhttps://www.weavegrid.com/
enechainhttps://enechain.co.jp/
デジタルグリッドhttps://www.digitalgrid.com/
EX4Energyhttps://ex4energy.jp/
メディオテックhttps://mediotec.co.jp/

バッテリー・蓄電

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を9社、国内企業を6社分類している。

 バッテリーの世界市場規模は、2022年に1075億米ドルと評価され、CAGR16%で推移し2032年には4754億米ドルに達すると予想されている。リチウムイオンバッテリーが全体の41%を占め、自動車産業がバッテリー市場の拡大を牽引している。2024 GCT100では、バッテリー性能の管理、改善技術を開発する企業が選出されている。エネルギーの節約やバッテリー寿命の長期化を可能とし、脱炭素化に貢献する技術とされる。

 例えば、ドイツ発のACCURE Battery Intelligenceは、自動車やエネルギー蓄電事業を運営する事業者向けに、使用中のリチウムイオンバッテリーの性能を分析するクラウドプラットフォームの構築を行っており、バッテリーの安定性やパフォーマンスの向上、延命に貢献している。この他には、バッテリーをセルレベルで管理するバッテリーエネルギー貯蔵システムを構築するオーストラリア発のRelectrifyが選出されている。既存の技術では、配列された最も弱いセルにより性能が制限されていたのに対し、セル単位でバッテリーを管理し性能を最大限発揮させることでバッテリー寿命を長持ちさせ、パフォーマンスを向上させることができる。同社は、アメリカを拠点に先端技術や気候ソリューションのアーリーステージスタートアップへ投資するトヨタ・ベンチャーズなどから1.5億米ドルの資金調達を実施したと発表した。EVに使用されるリチウムイオン電池の性能向上や寿命の長期化、再利用などが期待されている。国内スタートアップでは、NExT-e Solutionsが電池寿命の長寿命化に貢献する技術の開発やEV中古電池の再利用事業の運営を行っている。

 また、蓄電市場は、再生可能エネルギーによる電力供給を安定化させる仕組みとして拡大が期待されている。2022年の市場規模は447億米ドルと評価され、CAGR14.2%で推移し、2032年には1,679億米ドルに達すると予想されている。2024 GCT100では、新たな技術で長時間の電力貯蔵を行う企業が選出されており、例えば、金属亜鉛に電気を貯蔵する技術により従来のリチウムイオン電池よりも低コスト化、長寿命化を実現するカナダ発のe-Zincや、CO2の状態変化を活用してエネルギーを長時間貯蔵する技術を開発するイタリア発のEnergy Domeが選出されている。

 国内スタートアップでは、新技術による蓄電システムは見られないが、パワーエックスがストレージパリティ(蓄電池の導入メリットが、蓄電池導入コストを上回る状態)を実現させた蓄電池を開発するなど、再エネの普及に向けた取り組みが進んでいる。


会社名ウェブサイト
ACCURE Battery Intelligencehttps://www.accure.net/
Relectrifyhttps://www.relectrify.com/
Liminalhttps://www.liminalinsights.com/
Elcogenhttps://elcogen.com/
Energy Domehttps://energydome.com/
e-Zinchttps://e-zinc.ca/
Instagridhttps://instagrid.co/
Yotta Energyhttps://www.yottaenergy.com/
Recurrent Motorshttps://www.recurrentauto.com/
エクセルギー・パワー・システムズhttps://exergyworld.com/jp/
NExT-e Solutionshttps://www.nextes.jp/
PJP Eyehttps://pjpeye.tokyo/
ゴイク電池https://goiku.com/
エリーパワーhttps://www.eliiypower.co.jp/
パワーエックスhttps://power-x.jp/

EV充電ステーション

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を2社、国内企業を7社分類している。

 2023年の新車販売台数をベースとした、国内普通乗用車のEV(電気自動車)普及率は1.7%となり、年々増加してはいるものの、ノルウェー82%、中国22%(2022年)、米国7%(2023年)と比べ普及が進んでいない。車両価格が高い、航続距離が短い、充電設備が少ないといった点が国内での普及を阻む要因として挙げられる。日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言し、その一貫として2035年までに乗用車の新車販売の電動車率100%を目指している。普及を後押しするために必要な充電ステーションは、2030年までに15万基設置するとしていた目標(2021年時点)を2023年10月に改定し、30万口とすることでインフラ整備を進めEVの普及拡大を狙うとしている。

 公共の充電ステーションは、2022年時点で世界に270万カ所あるが、2030年までにネットゼロを達成するためには、1,700万カ所に拡大する必要があるとされる。EVのさらなる普及を促進するため、家庭での充電設備だけでなく、燃料自動車と同等の利便性を実現する充電ステーションの拡充が必須となっている。

 2024 GCT100では、EV充電ステーションのオンデマンド保守修理サービスを運営するアメリカ発のChargerhelp!や、同じくアメリカ企業で地域のグリッドに負荷を与えずに設置可能なEV充電インフラや充電ステーションの管理、監視ソフトウェアの構築を行うElectric Era Technologiesが選出されている。国内では法人やマンション向けのサービスが多く見られ、法人向けに社用EVの充電ステーションを構築するユビ電やREXEV、マンションや集合住宅向けEV充電設備の設置を行うユアスタンドなどがある。


会社名ウェブサイト
Chargerhelp!https://www.chargerhelp.com/
Electric Era Technologieshttps://electriceratechnologies.com/
プラゴhttps://plugo.co.jp/
パワーウェーブhttps://powerwave.co.jp/
ユビ電https://www.ubiden.com/
REXEVhttps://rexev.co.jp/
ユアスタンドhttps://yourstand-ev.com/
ジゴワッツhttps://jigowatts.jp/
Yanekarahttps://yanekara.jp/

商用EV

 本カテゴリーには、2024 GCT100選出企業を4社、国内企業を6社分類している。

 商用EVの世界市場規模は、2024年に709億米ドルと評価され、CAGR23.8%で推移し、2030年には2556億米ドルに達すると予想されている。成長の背景には、排出量削減に関する規制の強化や蓄電をはじめとした技術の向上により商用自動車へのEV適用性が高まったことが挙げられる。またリースや充電設備のレンタルなど、導入のハードルを下げる仕組みが整備されてきたことも大きい。

 例えば、2024 GCT100選出のアメリカ企業Forum Mobilityは、港から内陸へコンテナ輸送を行う物流会社向けに、大型EVトラックと充電ステーションを月額で利用できる仕組みを構築し、既存の燃料エンジントラックからの移行を支援している。EVトラックのリースと港隣接の充電ステーションを同時に利用できるため、利便性が高く、導入コストを抑えられ、中小規模の事業者でも移行し易い。2024年の秋には、同時に44台のEVトラックの充電が可能なEV充電ステーションをカリフォルニア州ロングビーチ港に開設する予定となっている。国内企業では、ラストワンマイルに適した小型商用EVトラックの開発を行うスタートアップが多数見られ、HW ELECTROやフォロフライが挙げられる。国内の充電設備に関しては、個別の事業者ごとに設置する形態が主流となっている。

 この他に2024 GCT100に選出された商用EV企業では、インド発でEVライドシェアサービスを運営するBluSmartがある。同社はインド国内で6,000台の車両と35カ所のEV充電ステーションを運営しており、特徴としては、ドライバー自身の所有車両を使用するUberなどと異なり、日本のタクシー会社のように自社所有のEV車両をドライバーが運転する仕組みを採用している点である。国内タクシーのEV化では、配車システムを運営するGOが2022年12月より「タクシー産業GXプロジェクト」を主導しており、10年間でEV車両2,500台を導入し3万トンのCO2削減を目指すとしている。2023年12月の中間報告では、参加事業者130社を合わせ、1年間で800台のEV車両導入を行ったと発表した。


会社名ウェブサイト
Forum Mobilityhttps://forummobility.com/
Harbinger Motorshttps://harbingermotors.com/
Monarch Tractorhttps://www.monarchtractor.com/
BluSmarthttps://blu-smart.com/en-IN/
ブルースカイテクノロジーhttps://blueskyinc.co.jp/
FOMMhttps://www.fomm.co.jp/
GLMhttps://glm.jp/
HW ELECTROhttps://hwelectro.co.jp/
EVモーターズ・ジャパンhttps://evm-j.com/
フォロフライhttps://folofly.com/

日本企業が脱炭素に取り組む中でスタートアップの役割は大きい

 本レポートでは、Clean Tech Groupが発行するGlobal Cleantech 100 (2024年)の選出スタートアップをもとに、各カテゴリーで類似する日本のスタートアップも合わせて取り上げている。

 カーボンニュートラルに向けてクリーンテック分野への投資が引き続き盛り上がる中、グローバルに見ても、BMWやエアバス等の大企業は積極的にクリーンテック分野におけるスタートアップへの投資を進めている。

 一方日本のトレンドとして、脱炭素領域においてはスタートアップが担う役割はまだ小さく、当該領域での最先端技術を求める日本企業は欧米をはじめとする海外スタートアップに目を向ける必要があるだろう。

 後編では、アグリ・フードテックや素材、循環資源などのカテゴリーについて紹介する。

著者について

新卒で全日本空輸に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わる。

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