次世代原子炉スタートアップのBlossom Energyは6月28日、蓄熱式ボイラのコンセプトモデルを発表した。熱媒体に黒鉛を用い、クリーンで安定的な熱供給ができるかを検証することで、産業の脱炭素化を目指す。
蓄熱式ボイラのコンセプトモデルは、サーキュレーター、サーマルストレージ、スチームボイラーの3つのボックスから構成。サーマルストレージ内に入っている黒鉛が熱源となり、蒸気を作り出す仕組み。約1500度の黒鉛から約1000度のガス、約600度の蒸気を生成、供給できるという。
ブロッサムエナジー 代表取締役CEOの濱本真平氏は「再生可能エネルギーによる電気を使って黒鉛を加熱し蒸気を生成することで、産業の脱炭素化を実現していく。温水を使う旅館やプール、製造業の現場などで使用できる」と活用方法を話す。
熱源となる黒鉛は、1gあたりの物質の温度を1度あげるのに必要な熱量である比熱が大きく、熱伝導性が高い蓄熱材。資源としての偏在性が低く、埋蔵量が豊富などのメリットを持つ。
コンセプトモデルは、系統の電力を使って黒鉛を温め、蒸気生成の熱源とするもの。再エネを使った系統電力を使うことで、クリーンな熱エネルギーが得られるという。
「これにより、ヒートポンプでは現在出せない200度から1000度程度までの熱を提供できると考えている。CO2排出量の削減に結び付けられるポテンシャルがある」(濱本氏)と産業の脱炭素化を見据える。
コンセプトモデルの開発にあたっては、デザイナーの野村涼平氏がデザインを担当。「直角直交のグリッドシステムをユニット周りに配置し、全体として美しい形に収まるデザインにした。(ユニット上に配した)インフォグラフィックスやアイコンは機能をそれぞれあらわしていて、それらがつながることをビジュアルとして表現した」とコメントした。
「コンセプトモデルのサイズでは、一般家庭での使用でも物足りないくらいだが、業務用冷蔵庫レベルのサイズになれば、一軒家で2日くらいは使えるようになる」(濱本氏)とのこと。
今後については、「今できあがっているのは、出力でいうと1kW程度のもの。これを1000倍の出力となる1mWまで高め、温浴施設に設置しようと考えている。さらに、タンクに黒鉛蓄熱材を貯めたものを出力として10mWを確保できるようにしたい。ここから1500度の黒鉛、温めた黒鉛からガスを供給し、産業の脱炭素化に向かいたい」(濱本氏)とした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス