あらゆる本を、好きな声でオーディオブックに--AIスタートアップSpeechifyの挑戦

Lisa Lacy (CNET News) 翻訳校正: 編集部2024年07月08日 07時30分

 人工知能(AI)分野のスタートアップ、Speechifyはオーディオブックに新たな風を吹き込み、聞き手を主役の座に据えた。耳から聞こえてくる声は、自分自身だ。

提供:Speechify
提供:Speechify

 Speechifyを使えば、自分の声のAIクローンを作り、自分の声でテキストを読み上げてもらうことができる。Speechifyの最高経営責任者(CEO)Cliff Weitzman氏のように、恋人の声で読み上げてもらうことも可能だ。

 それだけではない。スヌープ・ドッグやグウィネス・パルトローといった著名人の声も読み上げ音声として選択できる。もっとも、この声はAIが生成したもので、著名人自身が実際に読んでいるわけではない。

 「読み上げ音声として、自分の声を選べる。これは素晴らしい体験だ」とWeitzman氏は言う。

 好きな声を選び、あらゆる本をオーディオブックに変える。これがApple BooksやAudible、Spotifyといった大手企業との差別化ポイントだとWeitzman氏は言う。

 オーディオブック市場は成長が著しい。業界団体Audio Publishers Association(APA)によると、2023年は12年連続で売上高が増加し、年間総売上高は約20億ドル(3230億円)に達した。APAの調査では、米国の成人の52%(約1億5000万人)がオーディオブックを聞いたことがあるという。

 AI、特に生成AIの影響が広がるなか、起業家たちはこの技術を使って、法律から医療、さらには生成AI自体まで、幅広い業界の常識に挑もうとしている。設立7年目を迎えたSpeechifyは、従来のオーディオブックに代わる選択肢として、AI生成した人間の声でテキストを読み上げるツールを提供している。

 CEOのWeitzman氏はディスレクシア(読字障害)を持っており、子供の頃は両親に本を音読してもらっていた。しかし大学では教科書のオーディオ版がなかったため、テキストを読み上げてくれるプログラムを自分で作った。使用したのはディープラーニング(コンピューターが人間の脳のようにデータを処理するAI技術)と、事前に録音した音声サンプルを利用する接続型のテキスト音声合成技術だ。

 Weitzman氏の母語はヘブライ語で、英語は第二言語であるため、読み上げ速度も変えられるようにした。この機能は現在のSpeechifyにも引き継がれている。

 「最初は英語が話せなかったので、いつも0.75倍速で聞いていた。それから1倍速、1.25倍速、1.5倍速、2倍速、3倍速とスピードを徐々に上げていった」とWeitzman氏は言う。「わかりやすいところは速度を上げ、難しい部分はゆっくりとした速度で聞いた」

 2018年には兄のTyler Weitzman氏が共同設立者として加わり、2022年以降はAI部門の責任者兼プレジデントを務めている。Tyler Weitzman氏が開発を支援したアルゴリズムは、後にSpeechifyの最初のバージョンとなった。10万時間分の音声でトレーニングを実施し、人間らしい声で読み上げられるようになった。製品の改良を続ける一方、著名人とも提携し、声を使わせてもらうようになった。

 モバイル端末にSpeechifyのアプリをインストールすれば、本や文書、記事を耳で聞けるようになる。PDFをアップロードしてアプリに読み上げてもらったり、「Chrome」拡張機能をダウンロードして、「Googleドライブ」や「iCloud」、「Dropbox」に保存したテキストを読み上げてもらったりすることも可能だ。

 料金は、機能限定版であれば無料だ。無料版の読み上げ速度は最大1倍速、読み上げ音声は6種類用意されている。この6種類の内訳は、コンピューターで生成された米国人男性ネイトとジョン、英国人女性ステファニー、そしてスヌープ・ドッグ、グウィネス・パルトロー、米人気YouTuberのミスタービーストだ。

 筆者はステファニーを選んだところ、声は100種類以上用意されていると教えてくれた(次に進む前に、選択した声で約1分間セールストークを聞かなければならない)。

 有料版の「Speechify Premium」は年払いで1ユーザー/1カ月あたり11.58ドル(日本では1175円)で、それぞれ数十種類の読み上げ音声と言語を最大約5倍速で聞くことができる。

 Cliff Weitzman氏によれば、Speechifyのユーザー数は4000万人に上るという(なおアプリでユーザー登録をしていたときは、2300万人以上がSpeechifyを使っているというメッセージが表示された)。

 過去の記事によれば、Speechifyは2020年にベンチャーキャピタルから450万ドル(約7億円)のアーリーステージ投資を受けた。資金調達に関しては、今回はコメントを得られなかった。

Speechify

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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