人工知能(AI)分野の新興企業Humaneは、699ドル(約11万円)の「Ai Pin」のユーザーに電子メールを送り、充電ケースの使用を「念のため」「直ちに中止」するよう伝えた。バッテリーの品質に問題があることが分かったという。
米CNETの記者を含むユーザーに米国時間6月5日に送られ、同社のウェブサイトで公開されたメールの文面によると、サードパーティーのベンダーから調達したバッテリーセルに問題が見つかり、発火のおそれがあることが分かったという。同社は現在、新たなベンダーを選定中としている。メールには、「ご迷惑をおかけするかもしれませんが、お客様の安全を第一に考えております」とも書かれている。
同社は、補償としてユーザーに2カ月分のサブスクリプション(48ドル、約7500円相当)を提供するという。代替品を提供するかについては明言していない。
充電ケースは同社の購入ページで 「在庫切れ」となっており、「可能になり次第、別途発送予定」とされている。
Humaneの担当者はコメントを控えた。
同社はこの問題によって、4月に発売したAi Pinが酷評されたのに続いて、さらに印象を下げることになった。批評家らは、このデバイスが「スタートレック」の通信機のようなコンセプトを実現できておらず、バグが多く、遅く、使いにくいと不満を述べていた。
米CNETのScott Stein記者は、Ai Pinのレーザー投影ディスプレイを使用した後、「例のレーザー表示を数分以上使うと必ず過熱して、冷まさなければならなかった」と指摘した。
「そうなると、Ai Pinは全く使えなくなるので、その点は懸念が残る。第一に、Ai Pinを使う必要があるときにそうなったらどうするのか。第二に、胸元に着けているデバイスが急に熱くなったらこわいだろう」(同記者)
Apple出身でHumaneの共同創業者であるBethany Bongiorno氏は当時、Ai Pinの動作はピンの温度管理の一部だとStein記者に語っていた。
サンフランシスコを拠点とするHumaneは、すでに2億4000万ドル(約370億円)を調達したと報じられている。The New York Timesは6日、同社がHPに10億ドル以上で身売りするか、資金をさらに調達することを目指していると報じた。Humaneの経営陣は同紙に対し、売却やさらなる資金調達についてのコメントを拒否した。同社の担当者は米CNETからのコメント依頼にも応じなかった。
厳しい立ち上がりに苦しんでいるAI企業はHumaneだけではない。5月には、同じく注目された新興企業であるrabbitが、ポケットに入る長方形のデバイス「rabbit r1」(199ドル、約3万1000円)を発表したが、同様の批判を浴びた。
米CNETのLisa Eadicicco記者はレビュー記事の中で、「機能やユーザーエクスペリエンスの多くは未完成のようなので、このままスマートフォンをこのまま使い続けた方がずっといいだろう」と述べている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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