「『rabbit r1』レビュー(前編)--AI特化のデザイン、旅行ガイドとしての性能は?」に続いて、人工知能(AI)を搭載した小型デバイス「rabbit r1」のレビューをお届けする。
rabbit r1をツアーガイドとして使用するというのはおもしろいアイデアだが、筆者がそれよりもずっと気になるのは、生産性を向上させるツールとしてのrabbit r1の可能性だ。前編で紹介したスプレッドシートの例を覚えているだろうか。残念ながら、レビューした時点では、rabbit r1はスプレッドシートの編集があまり得意ではなく、最初の列の語句が切り詰められていた。それに、筆者の経験では、カメラがそれほど広角ではないため、大きなスプレッドシート内のデータをすべてとらえることがどうしてもできなかった。それでも、rabbit r1が文書に何らかの編集を加えて、即座にメールに送信することができたというのは、すごいことだと思う。
rabbit r1では、「Midjourney」を使用して、その場で画像を生成することも可能だ。「垂れた耳と大きな目をした、かわいらしい子犬の画像を作成して」といった簡単なコマンドだけで、筆者のプロンプトにマッチする画像が4つ生成された。同様のタスクを「Google Gemini」で行ったところ、処理速度はこちらの方がわずかに速かったが、それでも、タップしたり、プロンプトを入力したりしなくても、ボタンを押すだけで画像を生成できることに感動した。
rabbit r1は、個人用翻訳機や、音声メモを素早く保存できるボイスレコーダーとしても機能する。音声録音は、オンラインポータルの「rabbithole」に保存され、後から聞くことができる。これらの機能はほとんどの場合、期待通りに動作するが、特定のフレーズを使用しなければ、適切に動作しないこともあった。例えば、「メモを録音して」と言ったところ、「メモを保存しています」と返ってきたかと思えば、メモを保存するのに十分な情報がないと言われてしまった。ささいなことかもしれないが、パッと思いついたことを急いで保存したいときには、イライラすることもある。また、画像内の文字の翻訳はできない。翻訳できるのは音声だけなので、実用性としては限定されてしまう。
rabbit r1は、スマートフォンのバーチャルアシスタントと同じように、天気やポップカルチャー、近くの気になる場所などに関する質問に答えることができる。ただし、モバイルデバイスに搭載されている、例えばAppleの「Siri」のようなデジタルヘルパーと比較すると、優れている点と劣っている点がある。
筆者が気づいたのは、rabbit r1は、Siriよりも多くの情報を教えてくれることがあるという点だ。例えば、ポップアイコンのTaylor Swiftの交際相手は誰なのか、と質問したときのことだ。先に答えをくれたのはSiriだったが、rabbit r1はそのカップルが付き合い始めた時期といった補足情報も教えてくれた。仕事をするのに最適な近場でおすすめのカフェを尋ねたときも同じだった。Rabbit r1がカフェの評価のほか、Wi-Fiの有無や雰囲気などの点も教えてくれたのに対し、Siriは結果の一覧を表示しただけだった。Siriに質問をすると、「ウェブで見つかったのはこちらです」といった汎用的な答えが返ってくることが時々あるが、rabbit r1ではそういった回答がなかったのはよかった。
カフェに関するrabbit r1のおすすめは、筆者の近所ではかなり的確だったが、おすすめの質は、現在地によってまちまちだった。ワシントンスクエア公園の近くにあるおすすめのカフェを尋ねたところ、提案されたカフェの中には、そこまで近くではない店もいくつかあり、1軒はブルックリンの店だった。
とはいえ、rabbit r1が言語や意図をかなり正確に理解できることには驚かされる。質問に答えられないときでも、少なくともその理由を教えてくれ、質問の意図を理解していることが分かる。例えば、rabbit r1をサラダの方に向けて、カロリー量を尋ねると、サラダの量と具体的な食材について、もっと詳しい情報が必要だという答えが返ってきた。
質問の具体的な意図を正確に理解するという点においては、rabbit r1の方がスマートフォンよりも上だったかもしれない。しかし、おすすめ情報を確認するという作業は、スマートフォンの方がまだ簡単だった。rabbit r1の場合、音声の回答はrabbitholeに保存されず、レビュー時点で保存されたのは、音声メモと視覚的なクエリーだけだった。また、スプレッドシートでやった方法で回答をメールに送信することもできない。つまり、rabbit r1が回答を読み上げた後、その回答にアクセスする方法はない(筆者がおすすめ情報をメールに送信してほしいと頼むと、答えを書き留めればいいと返ってきた。このやりとりも、rabbit r1の言語理解能力の高さを証明している)。rabbitの広報担当者によると、今後のアップデートで回答を保存する機能を追加する予定だという。
rabbit r1の全体的な目標は、スマートフォンよりも高速で直感的な体験を提供することだ。1つのタスクをやり遂げるのに複数のアプリを開かなくても、rabbit OSなら単純なプロンプト1つでタスクを完了できる、とされている。
しかし、その夢はまだ初期段階にあるようだ。レビューした時点でrabbit r1が対応しているサービスはあまりなかったため、「Uber」で車を手配したり、「DoorDash」でランチを注文したりすることくらいしかできなかった。筆者の場合、自分のアカウントをrabbit r1にひも付けたにもかかわらず、Uberが適切に機能してくれなかった。メンテナンスの問題のせいでリクエストを処理できなかったと返ってくるか、あるいは、住所を口頭で伝えても、筆者の現在地を正確に特定できないかのどちらかだ。rabbitの広報担当者によると、同社は現在、rabbit r1を使用した配車予約の成功率と透明性の向上に取り組んでいるという。
DoorDashでの注文に関しては、食べたいものがすでに決まっていて、それがrabbit OS版のDoorDashにある場合、rabbit r1を使用した方が速いかもしれない。ただし、ほとんどのケースでは、スマートフォンを使った方がいい。スマートフォンでDoorDashを利用する場合に比べると、rabbit OSでは、表示されるレストランの選択肢が少なく、メニューも一部しか表示してくれない。rabbitの広報担当者によると、DoorDashに表示される選択肢については、改善されるように絶えず取り組んでいるという。
UberやDoorDashとは関係のない、不可解なバグにもいくつか遭遇した。1つは、筆者がいる場所は東海岸にもかかわらず、タイムゾーンが西海岸で使用される太平洋時間のままになっている、というバグだ。また、rabbit r1に天気を尋ねたとき、ほとんどの場合は、筆者の現在地を正確に把握していたが、間違ってマサチューセッツ州の気温の予測が表示されたことが何度かあった。「Spotify」のインターフェースを終了するのに手間取ったことも何回もあった。また、rabbit r1は、スマートフォンのホットスポットへの接続が切断されると、その後再接続できなかった。そのため、手動でネットワーク設定を削除して、再接続する必要があった(編集部注:その後リリースされたソフトウェアアップデートで、UberやSpotify、DoorDash、タイムゾーン、ホットスポット関連のバグが修正されている)。
rabbit r1は、スマートフォンに取って代わることは目指していないが、特定のタスクをスマートフォンよりも効果的に実行することは目指している。まだそこまでは至っていないが、新しいタイプのOSのピースはつなぎ合わさりつつあるようだ。確かに、音声プロンプトに基づいて画像を生成する、カメラを視覚的な検索ツールとして使用するなど、rabbit r1でやれることの多くはスマートフォンでも実行可能だ。しかし重要なのは、そうしたタスクを行う方法だ。
スマートフォンのロックを解除して、近くのランドマークや植物の名前を教えてほしいとGoogleに尋ねられるからといって、ユーザーがそれを実行するとは限らない。私たちはアプリを開いたり、文字を入力したり、スクロールしたりといった操作に慣れているため、カメラを起動して質問するというプロセスは、必ずしも直感的とは限らない。しかし、rabbit r1では、そのようなマルチモーダルな対話が強制される。そして、この操作方法は期待できるかもしれない。ユーザーインターフェースに関して言えば、慣れ親しんだやり方から私たちを脱却させることに成功したガジェットはほとんどない。
しかし、そこでのキーワードは、「最終的には」だ。rabbit r1の現状を考えると、そのビジョンは現実よりも約束に近いように感じられる。機能やユーザーエクスペリエンスの多くは未完成のようなので、このままスマートフォンをこのまま使い続けた方がずっといいだろう。Googleの「かこって検索」機能を見ても分かるように、スマートフォンメーカー各社もアプリの枠を超えて進化するというこのアイデアの実現に向けて動き出している。そのため、rabbit r1も近い将来、スマートフォンと競争するために、さらなる努力を強いられるかもしれない。またスマートフォンには、バーチャルアシスタントの役割を果たす上でrabbit r1にはない大きな優位性がある。それは、すでに持ち主のことをよく知っているということだ。この点に勝つのは難しいだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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