公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンは、音や光、ニオイなどの刺激を抑え、安心して過ごせる空間「センサリールーム」を「ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろ」(さっぽろハウス)に設置したと発表した。病気と向き合う子どもとその家族にリラックスできる空間を提供する。
センサリールームは、視覚や聴覚などを心地よく刺激するように整えられた空間のこと。強い刺激が苦手な子どもが落ち着いて過ごせる空間として注目されており、サッカー場や空港などへの導入が進んでいるという。
さっぽろハウスでは、倉庫として使っていた横約2m×奥行き約2.5mの空間を、センサリールームへとリノベーション。全体の監修や照明機器の設置などはパナソニック エレクトリックワークス社が手掛けた。
センサリールームには、照明やプロジェクター、スピーカー、ナノイー発生機といった機器に加え、光ファイバーのような照明器具や水と照明を組み合わせた器具などが設置され、リラックスできる空間に仕上げた。
パナソニック エレクトリックワークス社ソリューション開発本部の三浦美賀子氏は「ケアする方もされる方も、大人も子どもも関係なくリラックスして過ごせる空間を目指した。照明を中心に映像など、パナソニックが持つ技術を組み合わせ、それぞれの知見を生かした。センサリールームの取り組みは、社内の新事業支援制度からスタートしたもの。社内における効果検証を経て、周知活動、イベント、大学との共同研究などを通し、延べ3000名以上の方に体験していただいた。その中で大人の方も非常にリラックスできたという声をいただいている。この活動が社会貢献活動だけに終わることなく、事業化に向け検証しながら今後も取り組んでいきたい」と説明した。
さっぽろハウスは、世界に約380箇所、国内に12箇所あるドナルド・マクドナルド・ハウスの1つ。病気の子どもと、付き添う家族のための滞在施設として、2008年に開設して以来、述べ7000人が利用してきたという。
寄付と募金で運営しており、働くスタッフも多数のボランティアで賄っているとのこと。さっぽろハウスでは、高校生から80代まで、幅広い層のボランティアスタッフが患者や家族をサポートしているという。センサリールームの設置資金は、クラウドファンディングで調達。2023年7~9月に実施し、450万円の目標金額に対し、500万円以上を集めた。
クラウドファンディング時にハウスマネージャーを務めた、公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン フィールドコンサルタントの福原洋勝氏は「さっぽろハウスには全道各地から病気や障害を持った子どもが訪れる。15年以上に渡り、子どもとその家族をサポートしてきたが、不安と緊張の日々を過ごされているみなさんに、治療前後、リラックスできる空間を用意できないかと考えてきた。さまざまな方法を探す中で出会ったのがパナソニックのセンサリールームになる。少しでも良い状態で治療に臨んでいただくため、設置に至った」と背景を話す。
さっぽろハウスに隣接する「北海道立子ども総合医療・療育センター」(愛称コドモックル)でセンター長を務める高室基樹(高ははしご高)氏は「とても居心地がよく、子どものときに遊んだ秘密基地のような雰囲気。光と音がとてもいい感じで、触った感触もとても良かった。私は小児科医だが、子どもが発達し、学んでいく中で『触る』というインプットはとても大切なこと。センサリールームの中にあるものを触ってもらったり、あるいは足の裏で感じてもらったりすることを大事にしていきたい」とセンサリールームを評した。
センサリールームを利用できるのは、さっぽろハウス利用者とコドモックルに入院、通院する子どもとその家族。「さっぽろハウスに滞在中のご家族にご利用いただくのはもちろん、病院と連携し、ハウスを利用していない患者さんにも利用していただく予定。リハビリの時間に合わせて利用できるよう、使用時間枠をリハビリの1コマと合わせ40分としている」(公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン さっぽろハウスマネージャーの長谷川みどり氏)とコドモックルとの連携を打ち出す。
地元企業としてさっぽろハウスを支援するマルエイフードシステムズ 代表取締役の榮浩二氏は「今回完成したセンサリールームがより多くの方々の心を癒やす空間になることを願う。ハートフルなさっぽろハウスが第二の我が家として北海道の隅々まで認知されるように願っている」とした。
ドナルド・マクドナルド・ハウスにセンサリールームを導入するのはさっぽろハウスが初めて。現時点ではほかのハウスに導入する予定はないとしている。
(取材協力:パナソニック エレクトリックワークス社)
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