Metaが運営する「Facebook」や「Instagram」などのSNSで、著名人になりすましてお金をだまし取る詐欺広告が相次いでいる。
自由民主党(自民党)では元デジタル大臣で衆議院議員の平井卓也氏らが対策をまとめた提言を政府に提出したが、具体的にどう対処するのか。また効果が現れるのはいつか。提言に参加した衆議院議員の小林史明氏に聞いた。
まず、なぜ自民党が詐欺広告の対策に乗り出したのか。小林氏はその理由を次のように説明した。
「直近1年間の詐欺広告の被害額が約500億円で、これはオレオレ詐欺の年間被害額を超えている。さらに、被害が激増していることを考えると、まず国民を守らなければならないと思った」(小林氏)
また、小林氏はインターネット広告について「本来は民間で自由に取引されるもの」と前置きしつつ、プラットフォームの寡占化が進み、市場の自浄作用が損なわれている点も指摘した。
「事業者はプラットフォームに依存せざるを得なくなっている。広告マーケットで正規の広告に偽の広告が混ざっているから嫌だと言っても、売り上げに影響するから広告を引き上げることもできない。ユーザー側もプラットフォームにさまざまな情報が集まっているので利用せざるを得ない。民間だけで構造が変わるかという観点では、デッドロックになっている」(小林氏)
そこで自民党の提言では、LINEのグループ機能といった「クローズドチャット」へ誘導する広告を事前審査で省くなどの緊急対策を盛り込んだ。小林氏によると、同様の対策をすでに実施しているプラットフォーム事業者が1社存在したという。
なお、無料で投資のアドバイスをする広告自体は違法ではない。しかし、無許可の事業者がその先へリンクで飛ばして金融商品取引契約へ誘い込む場合には、法令違反になることもある。提言では「これを明確化して取り締まる」ことも盛り込んだ。
加えて、今国会で成立した「情報流通プラットフォーム対処法」についても説明。「(同法では)削除申請の窓口を置きなさいと、申請があったら原則1週間以内に対応しなきゃだめですよという規定を設けた。また、削除基準のガイドラインをきちんと公表することも求めているが、これを前倒しで対応してもらう」と小林氏は説明した。
政府はこれら提言をもとに、6月中にも対策を取りまとめる方針だ。一方で対策の効果が発揮されるのはいつ頃になるのか。小林氏は「すでにMetaを中心に詐欺広告が減っている」と説明し、次のように述べた。
「この政策の議論を進める中でMetaに対応していただき、詐欺広告が激減していることを確認している。その意味では効果が出てきたと考えている。一方、それは事業者が意識をすれば対応できる問題である証左でもある」(小林氏)
また、総務省や経済産業省によるプラットフォーム事業者への要請や調査については「すぐに実施されると思っている」とコメント。政府としての中長期の対策については「総務省の有識者の会議に詐欺広告対策の論点が入り、法改正につながっていく。もう1つの『目の前の犯罪にどう対処するか』は、政府内で6月中に答えがでてくる」と語った。 (更新)初出時、平井卓也議員の肩書きに誤りがありました。訂正しお詫び申し上げます。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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