11歳の息子が空中に腕を上げて想像上の釣り竿を振っているのを見て、筆者はすぐに彼がFitbitの新しいフィットネスウォッチ「Fitbit Ace LTE」を気に入ったのが分かった。このGoogleの新型スマートウォッチは大人向けではなく、子どものために作られたものだ。しかしおかしなことに、このデバイスがどんな仕組みになっているのかを見て、大人の自分も1つ欲しくなってしまった。
筆者はもう何年もの間、ゲームとフィットネスの関係について考えてきたのだが、これはスマートウォッチだけの話に限らない。実のところ、仮想現実(VR)ヘッドセット「Meta Quest」で「Beat Saber」や「Supernatural」をプレイし、「Nintendo Switch」で「リングフィット アドベンチャー」をプレイした経験から、なぜスマートウォッチでゲームとフィットネスを融合させないのかと不思議に思っていたのだ。近日中に米国で229.95ドル(約3万6000円)で発売されるFitbit Ace LTEは、まさに筆者が待ち望んでいた手首に着けるフィットネスゲーム機のコンセプトに沿った製品に見えるのだが、残念なことに、これは大人である私向けのデバイスではない。これは息子のような子どものために作られた製品であり、彼はとても楽しんでいるようだ。
Fitbit Ace LTEというのは不可解な製品名で(LTEの通信サービスを利用できるので、「LTE」の部分がおかしいわけではない)、その名前はこれがFitbitの過去の製品と似ていることを想像させるが、奇妙なことに、ゲームが内蔵されていることにまったく触れていない。この新しいスマートウォッチをじっくり見てみると、Googleの「Pixel Watch」をFitbitの製品に改造したもののように見える。その角の丸い四角型のディスプレイは、遠目にはFitbitの過去のスマートウォッチと似通っているが、色やアニメーションの鮮やかさはまったくの別物だ。このデバイスには「Pixel Watch 2」にも使われているGoogleのTensorチップが搭載されており、非常に美しいグラフィック効果を生み出す能力を持っている。
Ace LTEは、Fitbitのほかの製品と同じようにフィットネス関連の情報をトラッキングでき、心拍数も常時記録できるが、アルゴリズムは完全に子ども向けにチューニングされており、フィットネスの目標達成度の表示方法も刷新された。このデバイスでは、アニメーション付きの細長い「ヌードル」が時計の文字盤を取り囲むように表示され、フィットネスの達成状況を示している。その日の目標を達成すると、ヌードルがご褒美としてアニメーションするが、それはロケットだったり、古典的なゲームである「ヘビゲーム」のヘビだったりする。
デザインやアニメーションは変更可能で、簡単に交換できるストラップを取り替えることで新しいものが追加される。マジックテープ式のストラップは、スマートピンで種類を識別できるようになっており、新しいストラップを付けるとそのストラップに合ったテーマが使えるようになっている。スマートウォッチでこのようなやり方を見るのは初めてだが、これは賢いアイデアだと言わざるを得ない。35ドル(約5500円)のストラップを購入すると、スマートウォッチ用の追加コンテンツが付いてくるというわけだ。
そのパッケージングはすべてがカラフルで、「Apple Watch」が子ども向けに提供しているものよりも、はるかにクリエイティブに見える。筆者は数年前に、上の息子用にApple Watchをセットアップしたことがあるが、そのOSが提供している機能は、Apple Watchを普通に使ったときとまったく変わらないように見えた。
Fitbit Ace LTEのゲームを息子と一緒に少し遊んでみると、驚くほど多くの運動が必要で、まるで任天堂の「Wii」やNintendo Switchで遊んだときのようだった。ゴルフゲームでは、手を振るのに加えてホールをタップする必要があった。また、釣りのゲームでは腕を振ってキャスティングをするのだが(手首に振動を感じたらリールを巻く)、画面上で周囲の風景を見回することができ、その風景はユーザーの動きに合わせて変わるようになっている。手首の動きでステアリングするカートレーシングゲームは、小型化されたマリオカートのようだった。この製品は、筆者がFitbitやGoogleに期待していたものよりはるかに魅力的であり、よくできている。
これらのゲームをプレイするには通貨が必要で、そこにフィットネスのゲーミフィケーションが絡められている。子どもたちは運動のアクティビティを行って通貨を手に入れ、それを使ってゲームを遊んだり、スマートウォッチの中にいるバーチャルコンパニオンのための特別なアイテムを手に入れたりする。このコンパニオンは、「Bit Valley」という名前の世界に住んでいる「Eejie」というキャラクターで、この世界では、任天堂の「どうぶつの森」のように装飾を加えることができる。この通貨は、外に出て活動することで得られるクレジットのようなもので、両親を誘って一緒に活動すればボーナスクレジットを獲得できる。
Fitbit Ace LTEには携帯通信接続が可能で、サブスクリプション契約を前提として設計されている。「iOS」や「Android」と連携させて使うように設定することもできるが、これ自体は単独で使用できるデバイスだ。月額10ドル(約1600円)のサブスクリプションで、通話、位置情報のトラッキング、保護者用アプリの「Fitbit Ace」を使ったメッセージングが利用できるほか、「Fitbit Arcade」に随時新しいゲームが追加される。時が経つにつれて予想もしないゲームが現れるという点には、Panicの携帯ゲーム機「Playdate」の気まぐれな感じと似たものを感じさせられた。果たしてGoogleとFitbitは、Ace LTEを楽しく魔法のようなデバイスだと感じさせることができるだろうか。
Ace LTEとスマートフォン用アプリのメッセージのやりとりに関しては、最大で20人までの信頼できる連絡先を登録できる。送信するメッセージには、音声クリップや、音声認識で文字起こしをしたテキストや、スクリーンキーボードで入力したテキストを使用できる。また位置情報を追跡する機能を使えば、子どもがどこに居るかが簡単に分かる。さらに、このデバイスには「登校時間モード」が存在し、学校にいるときはゲーム機能をロックすることが可能で、必要に応じてこのモードをリモートからオン・オフすることもできる。
Fitbit Ace LTEのスペックは素晴らしいもので、「Gorilla Glass 3」の有機ELディスプレイ、水泳でも使える50m防水、高度計、ジャイロスコープ、地磁気計、常時オンになっている心拍数モニター、Bluetooth 5.0、NFC(タッチ決済機能も近日中に利用できるようになる)、GPS、Wi-Fi/LTEなど盛りだくさんだ。このスマートウォッチは30分の急速充電で約11時間利用できるが、Googleはフル充電なら16時間以上利用できると述べている。
筆者の息子は、30分ほど試しただけで、ずいぶんとこのデバイスを気に入ったようだった。現在すでに、Fitbit Ace LTEの予約注文受付が始まっている(訳注:現在は米国のみ)。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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