パナソニック エレクトリックワークス社は5月29日、DXを活用したサプライチェーンの強靭化戦略を発表した。自然災害や社会情勢による部材調達リスクを抑える統合SCMシステム「EW-Resi.」を導入する。
パナソニック エレクトリックワークス社は、配線や照明器具、純水素型燃料電池などの開発、製造、納入などを手掛けるパナソニックのグループ企業。国内外に生産拠点を持ち、グローバル標準品として10万品番を取り扱う。
「ここ数年、社会的責任に応えるため、SCMオペレーションの構築に取り組んできた。国内労働力の逼迫、自然災害の激甚化などの環境変化に加え、輸送費や部材価格の高騰、半導体不足など、供給のボトルネックとなる要因が多様化している。私たちが目指すサプライチェーン強靭化の取り組みは、パナソニックが提唱するPX(Panasonic Transformation)における具体的な活動。過去から磨き上げてきた現場の強みを最大限に生かし、現場の行動変容につながるDX、現場ドリブンDXとして活動を位置づけ、お客様の情報を活動の起点とし、バリューチェーン全体の整流化、省力化、自動化を実現していく」(パナソニック エレクトリックワークス社社長の大瀧清氏)とサプライチェーン強化の必要性について説明した。
EW-Resi.は、従来運用していた「ES-Resi.」をベースに富士通が提供するオペレーションプラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を活用し、機能をアップデートしたもの。
従来、数万点におよぶ製品、部品などの情報を、それぞれの部門が形式の違うデータで個別管理していたという。EW-Resi.では、生産、販売、在庫、部品調達など20の現行システムの業務統合、約20万品番を超える在庫部品の品番紐付を可視化し、PSI計画(Production(生産)、Sales(販売計画)、Inventory(在庫)を同時に計画すること)や部品調達計画などを、グローバルレベルで全体最適化したとのこと。AI活用による需要予測により、効率的な生産計画立案や安定商品供給もサポートするという。
「有事でも供給を途切れさせない調達システム」を目指し、BCP対策も施す。「今まで各拠点で個別に運営していたBCPシステムを統合し、必要なデータを自動的に抽出できるようにした」(Panasonic エレクトリックワークス社サプライチェーン統轄センター所長の森下賢治氏)と独自のシステムを構築。
1月に発生した能登半島地震の際は「震度5以上を計測したサプライヤーの拠点を救出し、どの拠点がどのような製品を手配しているかの情報を共有。さらに生産の影響を受けそうな部品を抽出し、影響するものを即座に手配した」という対応策をとったとのこと。
「多拠点に在庫がある場合は、在庫部品を提供できる拠点を特定し、社内で融通し合う。それでも部品がたりない場合は、事前に代替部品、代替生産拠点の情報を登録し、それを即座に見える化し対応する。これにより、生産停止を回避できた」(森下氏)と成果を話す。
オペレーションプラットフォームであるFujitsu Data Intelligence PaaSを提供した、富士通 執行役員EVPグローバルソリューションビジネスグループ副グループ長の大塚尚子氏は「社会課題という観点では能登の事例や台湾での地震など、災害対策がとてもわかりやすいケースではあるが、パナソニックがサプライチェーンマネジメントの工数削減を目指したことは、近い将来必ず労働人口不足に陥る日本企業ならではの観点だと感じた」と今回の取り組みを通じての感想を話した。
現在、国内外の18拠点を連携しているが、2024年度にはすべての拠点を連携する予定。パナソニック エレクトリックワークス社では、DX活用によるレジリエンス強化の取り組みを続け、くらしのインフラを支える電気設備の安定供給を目指す。
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