テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏が、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。
今回ゲストとしてご登場いただいたのは、赤ちゃん本舗 アライアンス推進部部長の高山佑一氏。2023年3月に設立した「赤ちゃんのいる暮らし研究所」がどのように生まれたのか、また日産自動車と協業で開発した、運転中の子守り支援ロボット「INTELLIGENT PUPPET イルヨ」(イルヨ)開発の裏側などについて聞いた。
大野氏:イルヨの共同開発のそもそものきっかけというのは。
高山氏:イルヨは2022年に日産自動車の方からお声がけいただきスタートしました。日産の「クルマを通して家族の思い出作りをサポートする」、赤ちゃん本舗の「赤ちゃんのいる暮らしをサポートする」というお互いのコンセプトをかけ合わせ、「お出かけを通した思い出作り」をテーマに親子が安心してドライブできる社内環境を検討し、開発に至りました。赤ちゃんとのドライブの課題を解決したいという思いの中で、赤ちゃん本舗にお話しをいただき、それですぐに赤ちゃんのいる暮らし研究所につなぎました。
大野氏:今後も協業は続けられる?
高山氏:もちろんです。現時点で公にできるお話はありませんが、打ち合わせを重ねていますし、クルマでの赤ちゃんのいる暮らしをサポートしていくというコンセプトはブレたくないので、それに対して何ができるかに取り組んでいきます。
大野氏:協業と同時に赤ちゃんのいる暮らし研究所としての取り組みにも期待が高まります。
高山氏:2年目を迎え、顧客のインサイトという部分を重要視しながら、お客様に対して、どういう商品やコンテンツを提供できるのかに取り組んでいきたいと考えています。オープンデータとして子育てに必要な情報を発信し、お客様のお役に立ちたい。また、赤ちゃん本舗単体ではできないようなことも、ほかの企業の方と組みながら、社会課題を解決できる一助になればと思っています。
大野氏:イルヨの機能を教えて下さい。
高山氏:後部座席のチャイルドシート横に設置するロボット、イルヨと、運転席横のドリンクホルダーに設置するロボット「ベビー イルヨ」の2体で構成しています。ドライバーがベビーイルヨに特定の言葉を投げかけると、後部座席のイルヨが作動し、手を振る動作や、「いないいない、ばあ」などの動きでチャイルドシートに座る赤ちゃんをあやしてくれます。
イルヨにはカメラを内蔵し、赤ちゃんの表情を認識してベビー イルヨに伝達してくれます。ベビー イルヨの目の開閉によって赤ちゃんが寝ているかどうかなども把握できます。
大野氏:確かにドライブ中は赤ちゃんの顔が見えないので、不安ですよね。このニーズはどのようにピックアップにされたのですか。
高山氏:2社で共同アンケートを実施したところ、生後15カ月頃まではチャイルドシートが後ろ向き設置なので、赤ちゃんの顔が見えないという声が上がってきました。さらにドライブ中はお子さまとマンツーマンで車に乗る場面もかなり多い。アンケートを見ると週に1~2回はお子さまとマンツーマンでドライブする方が6割くらいいらっしゃいました。
赤ちゃんが泣いてしまってもなかなかあやせない。そこで生まれたのがイルヨになります。簡単にいうとトランシーバーのような仕組みで、ベビーイルヨに声をかけるとイルヨがその声を赤ちゃんに届ける。まず、声が聞こえることで赤ちゃんを安心させられるのかなと。加えて赤ちゃんの表情も伝えられればということで開発に取り組んできました。
大野氏:イルヨのデザインというのはどうやって決めていったのでしょう。
高山氏:アンケートによると赤ちゃんが泣いた時にあやせなくて困ると感じている方が9割にものぼるとのこと。そこで、イルヨが代わりにあやせるように「いないいないばぁ」など動作のアイデアが生まれました。デザインはプロトタイプであるものの、ジェンダーニュートラルで、みなさんにかわいいと思っていただるように意識しました。また、包み込める温かさを感じるような色を検討しました。
メインカラーの赤のほか、ピンクとバニラの全3色を用意しています。実証実験を行なった北里大学 医療衛生学部准教授の川守田拓志氏から「赤ちゃんの関心を惹き、かつ発達の早期に獲得する色として赤色が効果的」というアドバイスもいただいています。
パペットの素材も赤ちゃんが食べてしまうとよくないので、長さや素材にはかなりこだわりました。
大野氏:実物をさわれるスペースなどはありますか。
高山氏:1月に発表会を実施しましたが、コンセプトモデルなので、発売はしていません。2月には「アカチャンホンポ ららぽーと横浜店」「日産グローバル本社ギャラリー」で体験会を実施し、お客様に実際にイルヨの機能を体験いただく機会を得ました。
大野氏:赤ちゃんのいる暮らし研究所について、もう少し詳しく教えて下さい。
高山氏:商品開発にあたって、お客様からアンケートをとらせてもらったり、インタビューに応じていただいたりというフローは元々ありました。しかし商品に対してのアンケートを取って終わりというケースもあったり、インタビューでもいいか悪いかのマルバツだけで判断したりと、端的に終わってしまうことがあり、そうではなくて、お客様からいただいた意見を深堀りし、リサーチして分析までつなげる必要があるという認識から立ち上げました。
大野氏:アンケートやインタビューなどを通してデータを収集し、それを自社開発製品やサービス向上につなげていく専門の部署ということで。チームメンバーは何人いらっしゃいますか。
高山氏:今7人で運営しています。商品開発のほか、店舗の改装にあたって、お客様インタビューを実施し、どのように受け取られているかという分析なども手掛けています。
大野氏:すでに約1年にわたって活動されていますが、当初想定した通りに進んでいますか。
高山氏:設立からまだ1年ちょっとなので、それほど実績はありませんが、アカチャンホンポ ホームページ上にも専用ページを設けていますし、外部の方からの問い合わせもいただいています。
加納:赤ちゃんのいる暮らし研究所の設立前後での変化というのは。
高山氏:商品開発の部分が一番大きく変わりました。1年という期間では不十分なところもあると思いますが、顧客のインサイトを重視した商品開発をすべきという方向性に変わってきています。製品化までには少しお時間をいただくかもしれませんが、ここは変化した部分だと思います。
大野氏:御社と組みたい企業は多そうですね。どのあたりの業種と組みたいなどの希望はありますか。
高山氏:すでに食品や保険、住宅などの企業の方と協業を進めていますが、私たちの人数も限られますし、優先順位をつけて取り組んでいきたいと思います。
大野泰敬氏
スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー
事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。
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