マイクロソフトは5月21日、Windows PCにおけるAI新時代を告げる「Copilot+ PC」の要件を満たした「Copilot+ PCs」を発表した。
Copilot+PCの条件は、1秒間に40兆回の演算をこなせる「40TOPS」以上のNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)性能と、16GB以上のRAM、256GB以上のストレージの搭載だ。
現時点でこれを満たせるのは、クアルコムが開発したPC向けSoC「Snadpragon X Elite」および「Snapdragon X Plus」のみで、同SoCを搭載したCopilot+ PCsがMicrosoftの「Surface Pro」をはじめ、Acer、ASUS、デル、HP、レノボ、サムスンの7社から登場した。
なお、Copilot+ PCの要件を満たすチップセットは今後、インテルやAMDからも登場する。
マイクロソフトによると、Snapdragon X Elite搭載Copilot+ PCsは、M3搭載MacBook Airに比べて「最大58%高速」だという。
アップルのMacBookシリーズは、iPhone向けの設計をPC向けに再設計した「M」シリーズプロセッサの採用を契機に、ワットあたりの性能を飛躍的に高めてきた。その結果、Windowsラップトップは性能や電力効率でMacBookの後塵を拝している感があった。
一方のSnapdragon X Eliteは、クアルコムがAppleのMシリーズ対抗として開発したチップだ。Androidスマートフォンで広く採用されている「Snapdragon」をPC向けに再設計したものだが、特徴は新開発のCPU「Oryon」(オライオン)を搭載した点だ。同CPUは過去にAppleでプロセッサの開発を率いたGerard Williams氏(現クアルコム)を中心に開発された。
AI性能にもいち早くフォーカスしており、1秒間に45兆回の演算が可能な「45TOPS」に対応。NPU性能はM3比で最大2.7倍、Core Ultra 7比で最大5.4倍に達する。
マイクロソフトはSnapdragon X Eliteについて「フォローする側ではなく、リードする側のプロセッサ」と表現。クアルコムも「Windows PCの性能面でのリーダーシップを回復させる」と自信を示した。
この、現状Snapdragon X Eliteだけが有するAI性能を活かし、Copilot+ PCでは生産性を加速させるWindows 11向けAI新機能に次々と対応する。
Snapdragon Xシリーズに最適化された機能である「回顧」では、数秒後ごと画面のスクリーンショットを取得し、ストレージ容量に応じて数カ月分を保存する。ユーザー視点では、以前見ていたホームページを思い出せない場合に、その特徴を音声やテキストで質問すると、AIがその特徴に沿ったページを探し出してくれる。「先々週に編集していたあのパワポってどこだっけ?」と探す際にも役立ちそうだ。
ライブキャプションでは、日本語を含む44言語の動画を、リアルタイムで英語字幕に変換できる。また、スーパー解像度機能では、PCのハードウェア性能を超えてゲーム画質を改善できる。
マイクロソフトの発表に合わせ、7社がCopilot+ PCを発表した。
Acerは、Snapdragon XシリーズとWindows 11のCopilot+機能を搭載した「Swift 14 AI」を発表した。同製品はAcer PurifiedView 2.0とAcer PurifiedVoice 2.0などのAIソリューションも提供する。
ASUSは、「Vivobook S 15」にSnapdragon X EliteおよびX Plusを搭載した。15.6インチの3K 120Hz OLEDディスプレイを備え、18時間以上のバッテリー寿命をうたう。
デルは、Snapdragon X EliteおよびX Plusを搭載した5つの新しいラップトップ「XPS 13」「Inspiron 14 Plus」「Inspiron 14」「Latitude 7455」「Latitude 5455」を発表した。高速なAIパフォーマンスと優れたバッテリー寿命を実現したという。
HPは「OmniBook X AI PC」と「EliteBook Ultra AI PC」を発表した。いずれもSnapdragon X Eliteプロセッサを搭載し、26時間のバッテリー寿命、急速充電、AI最適化機能を提供。Wolf Pro SecurityやMicrosoft Secured-Core PC技術も備えている。
Lenovoは、Snapdragon X Eliteを搭載した「Yoga Slim 7x」と「ThinkPad T14s Gen 6」を発表した。
Microsoftは、Snapdragon X EliteおよびX Plusプロセッサを搭載した新しい「Surface Laptop」と「Surface Pro」を発表した。13.8インチと15インチの2サイズ展開となる。
Samsungは、Snapdragon X Eliteを搭載した「Galaxy Book4 Edge」を発表した。14インチと16インチのDynamic AMOLED 2Xディスプレイを搭載し、Galaxy AIエコシステムとの連携も強化している。
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