AIの進歩を誇るグーグル、追い詰められるクリエイターやメディア

Imad Khan (CNET News) 翻訳校正: 石橋啓一郎2024年05月21日 07時30分

 Googleは、検索結果に表示されるコンテンツの提供者がいなければ存在していなかっただろう。しかし「Google I/O 2024」での様子を見ていると、同社は、ユーザーが毎日のようにGoogleを利用する基盤となっているオンラインエコシステムがどのように成立しているのかを忘れているかのようだ。

Google I/Oで語るSundar Pichai氏
Google I/O 2024に登場したGoogleの最高経営責任者(CEO)Sundar Pichai氏
提供:Screenshot/CNET

 今回のGoogle I/Oの基調講演で発表された製品の多く(例えば「Project Astra」と名付けられたAIエージェントや「Gems」など)には、そのAIのトレーニングに使われるコンテンツを生み出しているジャーナリストやブロガー、フォーラムの投稿者、Redditユーザー、YouTuberなどに対する暗黙の敬意すら見られなかったことは懸念すべきことだと言えるだろう。むしろ、同社が示したGoogle検索の将来ビジョンは、AIを使ったエンジンでウェブのコンテンツをまとめ、簡潔な要約を提供するというものだった。同社の検索部門のトップであるLiz Reid氏は米国時間5月14日、ステージで「Googleがあなたの代わりにググる」のだと語った。

 OpenWebの最高技術責任者(CTO)であり、AI Foundationの創設者でもあるRob Meadows氏は、「Googleは、2012年に検索結果に『ナレッジパネル』機能を導入して以来、単純にユーザーをコンテンツ制作者のサイトへ誘導することからから脱却しつつある。AIアシスタントや『SGE』(検索結果のトップに生成AIが作成した回答を掲載する機能)は、その傾向をさらに加速する可能性が高い」と述べている。「コンテンツの作り手側は、ウェブにおけるトラフィックの流れの進化に合わせて読者との直接的な関係を築き、読者を惹きつけ続けるコミュニティを構築する必要に迫られている」

 GoogleがAIを使用した製品ポートフォリオに急速に重心を移しているのは、IT業界全体が革新的な技術であるAIを中心に再構築されつつあるためだ。2022年後半に「ChatGPT」が一般公開されたとき、IT業界にはその備えができていなかった。突如として、Google検索にキーワードを入力してさまざまなサイトを読む必要はなくなり、AIチャットボットがさまざまな質問に分かりやすい言葉で答えてくれる(かのように見える)ようになった。しかもそのAIは、詩や歌の歌詞などの斬新な文章を自動生成する能力さえ持っていた。その力は、社会がそれまで経験したことがないものだった。

 それ以降、Google、Microsoft、MetaはAIに何十億ドルもの資金を投じてきた。McKinseyは、生成AIは世界経済に最大で年間4.4兆ドル(約685兆円)の価値をもたらすと述べており、大手IT企業は最も価値の高いAI製品を生み出す競争を繰り広げている。

問題に直面するコンテンツ提供者

 オンラインコンテンツの提供エコシステムにとって、Googleの重要性は、言葉では言い尽くせないほど大きい。Googleは90%を超える圧倒的な市場シェアを持つ世界最大の検索エンジンであり、マーケティングサービスプラットフォームを提供するHubSpotの推定によれば、1日に85億件の検索リクエストが処理されているという。多くのサイトは、トラフィックの大半をGoogle検索から来たユーザーに頼っており、サブスクリプション主体のサイトでさえ、Google検索向けにコンテンツを最適化せざるをえない。Googleは「Android」と「iOS」の両方でデフォルト検索エンジンになっており、これは米司法省による反トラスト法訴訟の根拠になるほどの問題だ。Googleの検索アルゴリズムに大きな変更があれば(あるいは小さい変更であってさえ)、サイトへのトラフィックが激減しかねず、解雇や倒産が生じる可能性もある。

 Googleが記録的な利益を上げ株価が上がり続けている一方で、メディア業界は、広告市場の未来が見通せない中過酷なレイオフにあえいでいる。

 Googleは過去の声明で、クリエイターとの連帯や、「活気あるコンテンツエコシステムから誰もが恩恵を受けている」という考えを表明している。しかし残念ながら、検索エンジンの大規模な変更や、同社が継続的にユーザーをAIで生成した回答に誘導し続けていることなどを見れば、未来がどこに向かっているのかを不安に感じざるを得ないのが現状だ。GoogleはOpen AIやMicrosoft、Metaとの競争に勝利するために世の中で最も強力なAIツールを作ろうとし、その過程でコンテンツ提供者の選択肢は奪われていく。

 検索した人がAIによって生成された概要情報ですぐに答えにたどり着ければ、コンテンツ提供者のサイトを訪れる人は減り、その人の疑問に答えるコンテンツを作っている企業の収入も減ることになる。

 Googleのある幹部は、「以前も述べたように、そして今回の基調講演でも述べたように、『AI Overviews』はユーザーをウェブ上のさまざまな観点と結びつけるものであり、私たちは今後も健全なエコシステムを下支えするアプローチを優先していく」と述べている。

 公平を期すために言えば、GoogleのAI検索は、確かに情報源にたどり着くためのリンクを提供している。また4月に行われた第1四半期決算説明会では、最高経営責任者(CEO)のSundar Pichai氏が、Googleの評価は「この問題にどのように対応するかにかかっている」との認識を示しており、「ウェブサイトや小売業者へのトラフィックを優先する」とも述べている。

 コンテンツ提供者はこれまで、自分たちのビジネスをオンライン検索のトラフィックやソーシャルメディア、eコマースによる販売、サードパーティークッキーによるユーザーの追跡を基盤として構築してきた。Googleが検索事業の軸足をAIに移していることは、業界全体がクッキー(デバイス上に保存されている広告用の追跡データ)の利用を回避する動きを見せていることと相まって、オンライン上でのコンテンツ提供モデルを脅かしている。Meadows氏によれば、コンテンツ提供者はこの変化を予想し、収益を多様化するためにさまざまな戦略を模索しているという。

 しかし、もっと希望に満ちた意見もある。

 AI技術サービス企業であるTuringの生成AI責任者を務めるKai Du氏は、「これまで基盤となってきたIT企業とコンテンツ提供者のパートナーシップは、今後も良好であり続けるだろう」と述べている。「私はAIに対して楽観的に見ており、『Google Gemini』のようなツールは、究極的にはコンテンツ制作者やジャーナリストの仕事を高めると考えている」

 しかし、AIの助けによってジャーナリストが優れた調査や執筆ができるようになっても、Googleがそのコンテンツを要約してしまうのであればあまり意味はない。また、人々がAI生成コンテンツに何を求めているかも考慮すべきだろう。

 Meadows氏は、「ユーザーはすぐにAI生成コンテンツを見分けられるようになり、AIが作ったコンテンツは、人間が作ったものほど面白くも、魅力的でもないと考えるようになるだろう」と述べている。「優れた小説家がそうであるように、ジャーナリストには、それぞれ読み手が魅力を感じる意見やスタイルがある。AIのコンテンツがあまり面白味のない基本線を構成するようになれば、その違いは一層明確になるだろう」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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