Googleの年次開発者会議「Google I/O」に共同創業者のSergey Brin氏がサプライズで登場した。今回のGoogle I/Oで特に注目を集めたのは、次世代AIアシスタント「Project Astra」だ。スマートグラスに搭載するAIアシスタントとしては、最有力候補に思えるProject Astraの登場は、かつて期待されながらも姿を消した「Google Glass」が復活するのではないかという憶測を呼んだ。
「おかしな話だが、今は完璧なハードウェアに思える」。10年以上前にGoogle Glassを熱心に推していたBrin氏は、米CNETを含む記者団にそう語った。これは、Project Astraの登場はGoogle Glassの復活を告げるものなのかという質問に対する答えだ。「10年かけて、キラーアプリになったんだ」
今回のGoogle I/Oでは、Project Astraのデモだけでなく、AIモデル「Gemini」のアップデートや検索の刷新、さらに「Gmail」のスレッド要約などの日常生活に役立つAI機能がいくつも発表された。
Google Glassが復活するのかという質問に対しては、Brin氏は「検討が必要だ」と答えた。一方、Project Astraについては「ハンズフリーで使えることが重要」だとした。Brin氏は、他社からAIを搭載したクリップやデバイスも出ているが(Humaneの「Ai Pin」やrabbitの「rabbit r1」のことだろう)、メガネは「フォームファクターとしてかなり優秀」だと述べ、「(Google Glassを)もう少し良いタイミングで出せていたら」と振り返った。
また、Project Astraのデモ動画で描かれていたような用途には、スマートフォンよりも「ウェアラブルな何か」の方が「ハードウェアとしては理想的」だとした。
2023年、The Wall Street JournalはBrin氏がGoogleのオフィスを頻繁に訪れ、Geminiを含むAI製品に関わっていると報じた。今回のGoogle I/Oでは、Geminiが前面に押し出されている。
Project Astraの動画には、スマートグラスらしきものをかけた人物がProject Astraに指示を出す様子が映っている。しかし、Bring氏はこのメガネ型デバイスが何かは知らないと言う。「今は、いろいろな会社からディスプレイを搭載した興味深い製品が出ている。これらの製品がどう使われるのか見守っていきたい」とBrin氏は語った。
Brin氏によれば、会場で披露されたデモの多くはGoogleのAIモデル「Gemini 1.5 Pro」を利用したものだという。Gemini 1.5 Proの性能について、Brin氏は「本当にすごい。驚きすら覚える」と語り、「しかも、最初から非常に汎用性が高い」と指摘した。
今回の取材では、他にもさまざまな話題が飛び出した。OpenAIの「GPT-4o」については、発表を見たものの、まだ試せていないとBrin氏は語った。普段の生活にAIをどのように取り入れているかという質問には「コーディングによく使う」と答え、この用途ではGeminiは「かなり優秀」だと評価した。
Brin氏がチームのメンバーと話していたとき、AIは数独パズルを解けるかという話題が出たという。「それなら試してみよう、と言ったんだ。AIに数独パズルを生成するコードを書かせ、解答をテストした」
現時点では、コーディングがAIの「ナンバーワン」の用途だとBrin氏は言う。
AIが書いたコードは「満点ではなかった」としつつも、「小さな問題が2つほどあったが、簡単に手直しできた。良い出来だったと思う」
AIのハルシネーション問題(AIが事実ではない情報を生成すること)については、Brin氏は「大きな問題」としつつも、「改善しつつある」と述べ、「何か重要な進歩が起きて、状況が飛躍的に改善されたとしても驚かない」と語った。
一度は引退したBrin氏だが、AIの進化に関わる機会を得て、再び精力的に活動しているようだ。
「最高に刺激的な時代だ」とBrin氏は言う。同氏はコロナ危機が始まる前に引退生活に入ったが、AIブームに刺激され、すぐに現場に復帰した。「AIの盛り上がりを見て、自分もコンピューターサイエンティストとして、この波に飛び込みたいと思った。とにかく刺激的で――そう、楽しいんだ」とBrin氏は言う。
「コンピューターサイエンティストにとって、今ほどいい時期はないと思う。この技術がどうやって動いているのか、その中身を詳しく見られるのはとんでもなくラッキーだ」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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