手のひら投影デバイス「Ai Pin」を使う(前編)--コンセプトは良いが操作に課題も

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2024年04月17日 07時30分

 筆者がテストするテクノロジーの多くはSFのように見えるかもしれないが、現実世界で使用すると、面倒な思いをすることもある。Humaneの「Ai Pin」も、まさにそうした感想を抱いたテクノロジーの1つだ。「スタートレック」の宇宙艦隊記章バッジの実現を約束するこのクリップオン式ウェアラブルデバイスに未来のアイデアを見いだすことはできるが、その未来はまだ訪れていない。

Ai Pinを手に持つ様子
提供:Scott Stein/CNET

 HumaneのAi Pin(699ドル、約10万7000円)は、スマートフォンに取って代わる完全独立型のデバイスになることを目指している。声で操作するこのピカピカの通信機は、魔法で投影されるダッシュボードのように、手で操作できるレーザーディスプレイを投影する機能も備えている。コンセプトとしては素晴らしいが、実際に使用すると、とてもイライラする。スマートウォッチを超えたウェアラブルデバイスの未来になる可能性もある製品ではあるが、現時点では、機能にムラがあり接続性も不十分だ。

 Ai Pinは、われわれが目にする最後の人工知能(AI)ウェアラブルデバイスになるわけではない。Metaの「Ray-Ban Meta」スマートグラスはAI機能を近く提供する予定で、スタートアップのBrilliant Labsも、ディスプレイ対応のAIスマートグラスを発売したばかりだ。「rabbit r1」は、手のひらサイズのAI搭載ガジェットで、スマートフォンとAIが融合した「ゲームボーイ」といった感じだ。

 Ai Pinはこうしたウェアラブルデバイスの中間に位置する。こうしたデバイスの多くは、筆者のポケットにあるスマートフォンを刷新する方法を模索しているが、これだけは言っておかねばならない。スマートフォンはすでに非常に多用途で驚異的なデバイスだ。そこには、相互に接続された筆者の生活がすでに存在する。過去のスマートウォッチと同じように、AI搭載ウェアラブルデバイスが挑まなければならないのはそのようなデバイスだ。AI搭載ウェアラブルデバイスには、役に立つこと、手ごろな価格で機能を拡張できること、そして、すでにうまく機能しているデバイスを刷新しようとする、高価ではない製品であることが求められる。

小さくて、光沢があり、人目を引くデザイン

Apple Watch、Ai Pin、AirPodsを並べた様子
(左から)Apple Watch、Ai Pin、AirPods
提供:Scott Stein/CNET

 Ai Pinは確かによくできている。元AppleのエンジニアでデザイナーのImran Chaudhri氏とBethany Bongiorno氏によって生み出された製品で、「Apple Watch」と「AirPods」を足して2で割ったようなデザインをしており、両者が何らかの形で融合してカメラ付きミニポッドになったかのようだ。滑らかで、金属で縁どりされたそのデザインは、初代「iPhone」のミニチュア版といった様子だ。

 付属品もよく考えられている。Ai Pinは、本体にバッテリーを内蔵しているほか、バッテリーの持続時間を延ばしてくれるバッテリーブースターも備えている。これは、服の裏からマグネットで本体を固定するもので、その状態でバッテリーを充電できるというものだ。そのようなものは今まで見たことがない。

Ai Pinを服に取り付ける様子
提供:Numi Prasarn/CNET

 Ai Pinには、予備のバッテリーパックが含まれており、2つの方法で充電することが可能だ。1つは小型の充電クレードルで、机の上で充電しながら、本体の音声起動機能を使用できる。もう1つは小さな卵型のポータブル充電パックで、バッテリーを内蔵しており、AirPodsのケースに似ている。映画「ウォーリー」のイヴが使っていそうだ。バッテリーパックを装着している間に、バッテリーブーストパックを充電することもできる。

 この交換可能なバッテリーシステムは、Ai Pinの最も素晴らしいアイデアの1つだ。筆者のテストでは、バッテリーはほぼ丸1日持続した。これは、数時間で充電が必要になる(そして充電中は使用できない)Ray-Ban Metaスマートグラスよりもはるかに長い。この、製品を使用しながら充電できるという快適さも、筆者のお気に入りだ。

ポータブル充電パック
ポータブル充電パック
提供:Scott Stein/CNET

 さまざまな服装を想定して、クリップも数種類用意されている。バッテリーブースターは少しかさばるので、例えばセーターの下に固定すると違和感があるが、バッテリーのない背面の薄いクリップは薄いシャツ用に作られている。服やジャケットが分厚くて、マグネットでは本体を固定できない場合を想定して、金属のクリップで服をはさむタイプのものも用意されている。

 Ai Pinにはボタンがないので、前面のタッチパッドをタップしたり長押ししたりして、音声コマンドを伝える。音声によるアクティベーションは利用できないので、常にタップすることになる(文字通り、スタートレックの船員のように)。1本指でのタップで音声入力、2本指での長押しで翻訳、2本指でのダブルタップで写真撮影、2本指でのタップ&長押しで動画撮影を行うことが可能だ。ただし、動画は一度に最大で15秒しか撮影できない。

充電クレードル
充電クレードル
提供:Scott Stein/CNET

レーザー投影式インターフェースは斬新だがイライラすることも

 Ai Pinの目玉機能である魔法のようなレーザー投影式インターフェースは、本体をタップして、手を差し出すと作動する。近距離追跡センサーがレーザープロジェクターを作動させ、差し出された手に、青く光るディスプレイを投影する。その後、その手を傾けたり、ピンチジェスチャーをしたりすると、インターフェースを操作できる。見た目はまさにサイバーパンクの魔術のようだ。筆者はそのコンセプトをすぐに理解できた。操作は必ずしも簡単ではない。

 ディスプレイは1回でサッと表示できないこともあるし、本体を取り付けた場所によっては、投影の距離と角度が変化する場合もあるので、手の角度を変える必要がある。ピンチジェスチャーは少しやりづらいこともある。手のひらを開いたままにしているときは、特にそうだ。本体を服に取り付けるたびに、手を傾けたり、遠ざけたり、近づけたりして、数字を選択し、パスコードを入力して、ロックを解除しなければならないのは、面倒である。

手のひらに投影された様子
提供:Numi Prasarn/CNET

 Wi-Fiに接続したい場合は、ピンチジェスチャーで設定に移動し、Wi-Fiパスワードを音声で入力する必要があるが、これは簡単ではない(QRコードを使用することも可能だが、おかしな感じがする)。スマートフォンアプリがないので、ほかに接続する方法はない。ウェアラブルデバイスを頻繁にテストする筆者としては、これには困惑する。

 残念ながら、レーザーディスプレイは、屋外の通常の太陽光の下ではほぼ使い物にならない。日光で完全に消えてしまうからだ。筆者は、文字を何とか読むために、手で太陽光を遮る必要があった。屋内でも、投影された文字がゆがんだり、動いたりする場合があるため、手に投影された文字を読みにくいことがある。ディスプレイと違って、手は完全に平らではないのだ。

手のひらに投影された映像がほぼ判別できない様子
昼間のニューヨーク市で、筆者は手のひらに投影されたものを認識できなかった
提供:Numi Prasarn/CNET

翻訳機能はうまく機能するときは本当に便利

 2本の指でタップ&長押しすると、即座に翻訳機能が作動する。Ai Pinを初めて試したとき、筆者の話すすべての言葉はスペイン語に翻訳された。Humaneによると、現在、50の言語に対応しているという。また、他言語を話すほかの話者の音声も自動的に認識して、英語に翻訳してくれる。

 きちんとしたアプリを使用すれば、スマートフォンでも翻訳機能は利用できるが、Ai Pinのほうが、魔法のようなインスタント翻訳機にはるかに近いように感じる。問題は、Ai Pinが言語を切り替えてくれない場合があることだ。ドイツ語やフランス語に切り替わらないこともあった。これは初期の問題かもしれないが、イライラさせられたことは確かだ。

 後編に続く。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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