ソフトバンクは4月8日、福岡ソフトバンクホークスのホーム開幕戦でリアルタイムAR(拡張現実)演出の実証実験を実施し、成功したと発表した。
実証実験は4月3日と4日、福岡PayPayドームで実施。XREALのARグラス「XREAL Light」やGPS、VPS(Visual Positioning System)などを活用し、「ARナビゲーション」「リアルタイムAR演出」などを実証している。
スマートスタジアム化を促進するにあたり、球場やアリーナなどの屋内施設では、来場者の位置情報を測定する技術に課題があるという。例えば、GPSは屋内のため衛星測位が困難で、VPSは通路やコンコースなどの似たような景観が続く場所での測位精度が低いという。また、BLE(Bluetooth Low Energy)はビーコンの数によっては大まかな位置しか測定できないという課題があった。
そこで今回、「ARナビゲーション」の顧客体験フローとして、VPSとBLEを組み合わせて速やかに精度の高い位置情報を測定できるかの実証実験を実施した。
各日4人ずつの実験対象者は、スマートフォンにARアプリをインストールしつつ、スマホと有線接続したXREAL Lightを装着。また、PayPayドームの通路に複数のパネルとBLEビーコンを設置したという。
実験参加者がパネルに近づくと、BLEビーコンが送信した信号でおおよその位置情報を測定。ARグラスを通してVPSでパネルを認識するとより精度の高い位置情報を測定し、ARグラスのパネルにホークファミリー(福岡ソフトバンクホークスの球団マスコット)を表示させたという。
参加者がホークファミリーとハイタッチすることで、ARグラスに観戦席までのナビゲーションを表示し、通路に設置した複数のパネルで同様に表示される道順に従って進むことで、参加者が目的地であるVIP席「スーパーボックス」まで到着することを確認。VPSとBLEを組み合わせることで、似たような景観が続く屋内であっても、速やかに精度の高い位置情報を測定できることを実証したとしている。
ソフトバンク サービス企画本部 コンテンツ推進統括部プロダクト開発部 部長の大塚哲治氏は、スーパーボックスまでの通路が似たような景観だった一方で、ポスターを貼るなどの景観を変える試みは施設側の事情でできなかったと説明する。「(実証した技術の)将来の計画はまだ未定だが、室内の景観自体を変えたくない場合、今回の技術が生かせる」と話した。
加えて、来場者へ「リアルタイムAR演出」を提供すべく、デバイスへの演出開始信号の送信も実験している。
4Gや5Gネットワークでは、同時に信号を送信するとデバイスの数次第でネットワークコネクションの混雑が発生。信号を受信できるデバイスと受信できないデバイスが発生する。また、BLEがカバーできる範囲は限定的だという。
そこで、BLEビーコンを設置するとともに、その信号が届かないデバイスに4G/5Gネットワークを利用。あらかじめ提供したスマホにコンテンツを保存し、試合の5回裏終了後に、4G/5GネットワークとBLEの双方から演出開始信号を送信することで、複数のデバイスが同時に演出開始信号を受信できるかを確認したという。
送信した演出開始信号に基づき参加者のARグラスにリアルタイムで演出を表示させ、複数のデバイスが同時に演出開始信号を受信できることを実証したとしている。
また、2つの実証に加え、手のジェスチャーでARグラスからの手書きメッセージを送る、ARで表示した応援したい選手のボールを触ることで特別な演出を表示するなどの技術検証も実施している。
今回の実験の成功により、大規模なスタジアムやアリーナにおいて、座席や部屋まで精度の高いARナビゲーション(マルチセンサーを活用)の実施や、来場者のスマートフォンなどに応援コンテンツを一斉に表示させる(マルチネットワークを活用)といった、観戦体験の提供が可能になるという。実証実験で得た知見を生かしてPayPayドームのスマートスタジアム化を促進し、観戦体験のさらなる向上を目指すとしている。
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