サッカー元日本代表として知られる一方、投資家としての顔も持つ本田圭佑氏。1月にはシード期からシリーズAのスタートアップを対象にした「X&KSK Fund」も立ち上げるなど、積極的な活動を続ける。本田氏が今注目しているジャンルはどこか、投資する際に重視するというファウンダーはどんな人物が理想なのかなどについて聞いた。
――出資はファウンダーを見て決めるとのことですが、どんな方が理想ですか。
ビジネスのジャンルにもよるので、言葉にするのはすごく難しいのですが、例えばソフトウェアのビジネスであれば、エンジニア出身でいわゆる「オタク要素」がある方でしょうか。サービスを作る上で、解決したい課題と本人のスキルや行動がうまくマッチングしているのがいいですね。
表現するのがすごく難しいのですが、例えば、サッカー少年たちに「プロサッカー選手になりたい?」と聞くと、9割の子が手をあげます。みんなプロサッカー選手になりたいと思っている。ただ、次に「週に何回練習している?」と聞くと、毎日練習している子は、そのうちの1~2割しかいなくて、多くの子は週に2回、多くても3回くらいしか練習していない。
この質問は、今のスタートアップのソフトウェアビジネスが成功するかとほぼ一緒で、新しいサービスを作ろうとしている人が、そのサービスにどれだけのめり込んでいるかという基準がものすごく大事。プロサッカー選手になりたい子が週に2~3回しか練習せずに、プロになれるわけがありません。
それと同じで、ファウンダーの情熱と行動がしっかりと解決したいペインに対してマッチングしているか、つながっているかを見ています。いわゆる資金調達だけがうまいファウンダーは危険ですし、むしろ資金調達があまり上手でなくても、そのサービス、ペインにおいて誰よりもユーザーと対話していたり、不器用ながらも情熱と行動が伴っている人がいいですね。
そうはいっても(成功するファウンダーを見極めるのは)わからないんですけれど。特に僕らが投資しているアーリーステージのスタートアップというのはほぼ失敗するわけです。日本は失敗を恐れる文化なので、投資自体が向いていない国なんですよね。しかし(そうした文化であっても)私自身は情熱のあるファウンダーを見つけたいと思っています。
――今、注目されているテクノロジーはありますか。
僕らはすべてのジャンルに投資できるというスタンスで取り組んでいるので、イノベーションを感じられるテクノロジーや企業であれば、全ジャンルに注目しています。
その中でも、今はAIが欠かせないテーマだと思っていますし、半導体もホットですよね。ただ、これらのジャンルについては僕らのようなベンチャーキャピタルレベルではなく、日本が国として注目すべき。米国や中国、インドなどの競合を見据え、取り組んでいくことがとても重要な気がします。
――最近では、社会的、環境的なインパクトの創出を目的とするインパクト投資も注目されていますが。
インパクト投資は、僕が最初にこのビジネスを始めようと思った時に考えていたこと。そこから現在の投資の形に変化してきました。たまにお金を稼ぐことだけを考えて、「なぜこの世界に入ったんだろう」と忘れることもあるので、そうならないよう、なぜこの分野で今これだけのことをやるようになったのかは、常に考えるようにしています。元々は、2010年に南アフリカで孤児院を訪問し、そこでのショッキングな体験が今につながっているので、インパクト投資から始まり、今はベンチャーキャピタルの中でいろいろやっています。
――勝負をする上で、大切にしていることはなんですか。
僕がスポーツの世界でやってきたことが、ビジネスの世界でも生かせるかどうかはわかりません。スポーツの場合、体の大きさや足の速さなど、身体的な比較が大前提にあります。ただ、見た目が大きく、強そうな相手でもメンタルはショボいというのをたくさん目の当たりにしてきました。ですから、世界で戦う上で大事なのは、名前や肩書にひるまないこと。これが一番大事にしていることです。
こちらがひるむと、相手はどんどん畳み掛けてくるので、常に自信を持ち、やれることを淡々とやっていくことが大事。これはもしかしたらビジネスで使える場面があるかもしれませんね。
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