本田圭佑氏×藤田晋氏が語る「今25歳だったら」--起業、投資、チームビルディング

 X&KSK主催による日本の新産業創造のためのスタートアップ関係者が集うイベント「CREATE」が3月18日に東京都渋谷区の「渋谷ヒカリエホール」で開催された。その中の特別セッションにCo-Founder & General Partner, X&KSK 本田圭佑氏とサイバーエージェント 代表執行役員社長の藤田晋氏が登場。「今25歳だったら、何をするだろうか」をテーマに話した。モデレーターはテレビ朝日アナウンサーの平石直之氏が務めた。

サイバーエージェント 代表執行役員社長の藤田晋氏(左)、Co-Founder & General Partner, X&KSK 本田圭佑氏(右)
サイバーエージェント 代表執行役員社長の藤田晋氏(左)、Co-Founder & General Partner, X&KSK 本田圭佑氏(右)
  1. 25歳に戻っても「投資は間違いなくやる」
  2. 伸びる産業をチョイスすることを人一倍意識する
  3. 今25歳に戻ってもサッカーはやるかの質問には

25歳に戻っても「投資は間違いなくやる」

 本田氏は「『2010FIFAワールドカップ南アフリカ』に出場させてもらった1年後なので、変わらず、ワールドカップで優勝する、という子どもの頃から目標に向かってロシアでプレイしていた」と25歳当時を振り返った。

 「24歳の時に自分のステータスというか立場が大きく変わったので、25歳は日本の中でもサッカー選手として認識されていたタイミング。(あの頃に戻っても)できることの選択肢は結構多い印象だが、投資は間違いなくやっている」(本田氏)と言い切る。

 サッカー元日本代表として知られる一方、本田氏は投資家としての顔も持つ。すでに多くのスタートアップに投資実績を持ち、1月にはシード期からシリーズAのスタートアップを対象にした「X&KSK Fund」も立ち上げている。

 「お金について考えないというアスリートや有名人の方も多いと思うが、僕はとにかくお金には動いてもらいたい。今25歳に戻ってもベンチャー投資には関わると思うが、今やるならバイアウトをやっていたと思う。事業がうまくいっていても、創業者が高齢でこの先が見えづらい場合もある。そういう企業にビジョンを持って、話しに行ってというのをやってみたい」と事業承継に関心を寄せる。

 一方、24歳で起業し、26歳で上場を果たした藤田氏も「今の(本田さんの)話を聞いてやはりバイアウトかなと。ゼロからはじめて、形にしてそれを売却し、また次に取り組むというのが成功するパターン」と話す。

 平石氏が「藤田さんはインターネットの世界から、麻雀やヒップホップ、競馬など、さまざまな事業を展開している」と藤田氏が取り組んできた事業内容に触れると「自分の趣味がことごとく会社の事業になっているが、(会社を立ち上げた)当時は、こんなことになるなんて夢にも思っていなかった。会社というのは、利益や規模が大きくなり、周りの信頼を得て、社長がリーダーシップをとりやすくなってくると、やりたいこともできるようになってくる。その中でも自分が精通している分野は形にしやすい」(藤田氏)とコメントした。

 続けて、起業した24歳当時を「インターネットがすごく伸びていた時期。この事業に入ってくれば得をしたような状況だった。自分の起業とインターネットが一気に伸びるタイミングがたまたま合致した。これは実際に運が良かったと思う。ただ、今自分が25歳で起業するならと考えると(事業の中心にすえるべきものが)本当にないなと。DXやAIは今が本命の大きな産業だが、大企業が深く関わる分野で、スタートアップが食い込める部分は意外と少ない」(藤田氏)と現状を分析する。

伸びる産業をチョイスすることを人一倍意識する

 その中で藤田氏は「起業するなら伸びている産業を選ぶのが良い。ただ今伸びている産業があまりないので、まず考えられるのは海外で起業すること。もう1つは、日本が世界で最も素晴らしいものを作れる、アニメなどに可能性があると思う。海外に出るか、世界中から日本に買いにきてもらえる分野を探すかの二択になると思う」とした。

 サイバーエージェントは26年間増収を続けている。それに対し藤田氏は「右肩上がりに拡大すると決めているので、伸びる産業をチョイスしていかないといけない。そこは人一倍意識している」とコメント。本田氏が「AIは最近どうですか」と尋ねると「AIは本当にド本命だと思うが、以前のネットビジネスのようにスタートアップが勃発するような雰囲気は感じていない。大企業がAIによって、より競争力を持つものを生み出せるかどうかが大きい」とした。

 本田氏が投資家として活動していくポイントとして、平石氏が「これはいける、これは違うという選球眼はどう意識しているのか」と聞くと、「これは毎回聞かれる質問。私自身はファウンダーだと思っている。シード期の会社のビジネスモデルはそれほど信用していない。しかしファウンダーが優秀であれば、うまくいかない事業はピボットしていく。ただ、そのファウンダーの素質を明文化するのはむちゃくちゃ難しい」と投資の際のポイントを明かした。

 会場では本田氏が「(藤田さんは)コントロールできない人もグループ内に置かれるイメージがある。そういう人たちに対し何を期待し、マネジメントしているのか」と尋ねる場面もあった。

 藤田氏は「基本的に自分で決めて自分でやってもらって、それでモチベーション高く仕事をしてもらうことでパフォーマンスを上げるという考え方。モチベーションは落とせないので、個性を生かし、自己責任で自由にやってもらっている。そこを許容できなければ面白いものは出せない」と自らのチームビルティングについて話した。

今25歳に戻ってもサッカーはやるかの質問には

 これを受け平石氏が「チーム作りといえば、本田さんはワールドカップでチームをベスト16に導いた。チームの意識を変えるということに対しては」と問うと、「チームづくりで大事なのは、できないようなことを平然と言い続けるリーダーがいること。リーダーが満足したり、前に進まなくなると、組織はいつの間にか現状維持になり、衰退に向かっていく。成功する組織で一番大事なのは、できないことを当たり前のように口にし続けて、それを平常化させること」とした。

 最後に平石氏が「改めて今25歳だったら何をするか」と聞くと藤田氏「私が起業した当時はネットビジネスが注目を集めていたから、あっという間に注目されたが、今そういった分野はなかなかない。そう考えると、今話題の中心であるSNSを使って何か有名になる、注目されることから始める。まず注目され、価値がある人間にならないと次に進めない」とした。

 本田氏は「まずサッカーをやって、企業に投資することもかなり積極的にやっていくと思うが、スタートアップだけではなく、最初に話したようにバイアウトをしたい」とコメント。平石氏が「25歳に戻ってももう一回サッカーに取り組むか」と聞くと、「やりますね。サッカーに対してはもう病気なんで(笑)」と即答した。

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