民泊ともシェアハウスとも異なる、ホームシェアサービス「Homii(ホーミー)」が登場した。手がけるのはチャットによる留学相談サイトを運営していたダイバーシーズ。長期滞在する外国人の家探しをサポートし、ゲストとホストつなげ、国際交流を促す。
Homiiは、自宅の空き部屋を外国人に貸して共に住むホームシェアサービス。外国人ゲストは、ウェブ上で自宅の空き部屋を提供しているホストを探し、マッチングが成立すれば、ホストの自宅に最短1カ月間から暮らせる、いわゆるホームステイだ。ゲストは生活の拠点として、住民票の提出なども可能。長期滞在を目的にしており、民泊とは異なるため、ホストには、ゲスト登録、利用方法の説明、清掃管理といった手間はかからない
ダイバーシーズは、代表取締役の洪英高氏が2018年1月に設立。自らの留学経験をいかし、学生時代に立ち上げた留学生向けのマッチングサイトが起業のきっかけになっている。学生時代米国に留学していた洪氏は「留学は人生が変わるほど大きな経験だったが、事前によく調べておけば、もっと楽しい経験になったはず。実際に留学経験がある人たちの生の声をききたかった」との思いからマッチングサイトを開始した。
しかし、時間もお金もかかる留学は経験者が限られており、一生のうちに複数回経験する人はごくわずか。留学✕ITのキーワードを残したまま、もっと広く人々をサポートできるサービスを手がけたいとの思いからHomiiを立ち上げた。
2020年の東京オリンピック、パラリンピックを控え、外国人の来日人数が増え、日本に興味を持つ人が多い。さらに4月に施行が決まっている入管法改正案の影響により、今後外国人労働者の増加も予想される。「問題は外国人が長期間住める場所が限られていること。不動産会社にいっても英語が通じなかったり、オーナーが外国人をNGにしていたりと受け入れ体制が整っていない。Homiiであれば、ダイバーシーズが間に立つことで、ホストとゲストをつなげ、安心安全なホームシェアサービスができる」(洪氏)とメリットを説明する。
ダイバーシーズには現在4名のスタッフがいるが、全員が留学経験者。設立メンバーの1人であるMarcus Jackson(マーカス・ジャクソン)氏は、米国スタンフォード大学コンピュータサイエンス出身のエンジニアで、学生時代は日本への留学経験もある。「実際に日本で家探しをしてみると、不動産会社の店頭で英語を話せる人が限られていたり、ウェブサイトで英語対応しているところも少ない。住みたい物件が見つかっても外国人の居住がOKがどうかはオーナーにきくまでわからず、本当に物件を見つけられるか心配だった」と実体験を話す。
スタッフの実体験をベースに、Homiiでは、条件の合うホストを探しマッチングが成立すれば、煩わしい契約や敷金礼金なしですぐにホームステイを始められる仕組みを採用。全ゲストに、予約前の個人情報入力と身元確認を徹底するほか、鍵の受け渡しに抵抗を感じるホスト向けにスマートロックを有償レンタルするサービスも用意する。
謝礼はホスト側が個別で決めるが、相場は6万円程度で、うち15〜20%を利用料としてHomiiが受け取る。居住開始前にHomiiが一時謝礼を預かり、謝礼が入金された人のみを紹介することで、謝礼が支払われないリスクを避ける。ホストへの入金はレンタル開始から1カ月後に設定することで、募集内容との相違を防ぐ。
「現在のホームステイの仕組みは、ホスト側がボランティアに寄りすぎていて、きちんとした対価が得られず、疲れてしまうケースもある。食事のありなしを選択できるなど、持続可能な仕組みを用意することで、ステイ先のホストの数はもっと広げられるはず」と洪氏は現状を説明する。
現在約100名のホスト登録があり、ゲスト登録は200名程度。「ホームステイの経験者を中心にホストを募っているが、将来的には一人暮らしの高齢者宅への入居など『新しい家族』を迎えるような体制を整えていきたい」(洪氏)と、将来像を描く。
「類似サービスとして、サービスアパートメントのような物件を思い浮かべる人も多いかもしれないが、私たちが提供したいのは外国人と日本人の交流。一緒に暮らすことで本当の交流が生まれる。期間を1カ月以上にしているのも、その程度の日数がなければ交流は生まれないから」(洪氏)と目的を話す。
ダイバーシーズのビジネスに賛同し、同日にはサッカー選手である本田圭佑氏が代表を務めるKSK Angel Fundと複数の個人投資家等を引受先とする第三者割当増資を実施。2500万円を調達する。
本田氏は洪氏が米国留学中に立ち上げた留学マッチングサイトをやっていたときから出資しており、今回の出資は2度目。洪氏が留学中に行ったアメリカ一周旅行中にツイッターの質問コーナーにメッセージを送ったことが縁で交流が始まったとのこと。対面時に留学マッチングサイトのサービスの話をし「面白い。事業計画書を送って」と言われたことで、はじめて洪氏は起業を意識したという。今回の資金調達にあたり本田氏は「当初はアイデアしかない状態だったが、差別をなくしたいと本気で話す洪さんに共感し、約1年半前に出資を決めた。Homiiは、簡単にホスティングができるホームステイプラットフォーム。この強みを生かして今まで以上にグローバルで境界のない世界を実現してくれると思っている」とコメント寄せている。
今後は、ひと月に100〜300人程度が必ず暮らしているサービスに育てることを目標にしており、将来的には外国人在住者の10〜15%が利用するサービスを目指す。
洪氏は「他人が自宅に住むことに抵抗を感じる人も多いと思うが、実際に受け入れている人はいる。下宿のように以前の日本にもそういう文化はあった。Airbnbが10年かけて民泊を普及させたように、次の10年は住むこともできる世界に変えていきたい」とHomiiの可能性を話した。
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