天ぷらを揚げた油で飛行機を飛ばす--持続可能な航空燃料の創造に挑む3社の情熱

 “1+1=2以上の力を生み出す「コラボ力」”をテーマに、業種や組織の垣根を取り払って新規事業にチャレンジし、結果を出しているオープンイノベーションの取り組みを紹介するオンラインセッション「CNET Japan Live 2024」。2月22日は「天ぷらを揚げた油で飛行機を飛ばす!?日揮HD×コスモ石油×レボインターナショナルのSAF事業にみるコラボ力とは」と題し、持続可能な航空燃料(SAF)を製造する新会社の立ち上げに合同で取り組んだ3社に話を聞いた。

日揮ホールディングス サステナビリティ協創ユニットSAF事業 アシスタントマネージャーの植村文香氏(左上)、コスモ石油 企画部次世代事業推進グループの岸和田宏一氏(左下)、レボインターナショナル 炭素源循環推進部推進課の永田唯氏(右下)
日揮ホールディングス サステナビリティ協創ユニットSAF事業 アシスタントマネージャーの植村文香氏(左上)、コスモ石油 企画部次世代事業推進グループの岸和田宏一氏(左下)、レボインターナショナル 炭素源循環推進部推進課の永田唯氏(右下)

 SAFとはSustainable aviation fuelの略で、日本語では「持続可能な航空燃料」と訳される。航空業界では、2050年にカーボンネットゼロという目標を掲げているが、大型で重量もある航空機は、自動車のように電気や水素による燃料の代替が難しい。そうした中でエネルギー密度の高い液体燃料であるSAFは、化石燃料以外を原料としながら既存の航空燃料と同じ推進力を出すことができ、現在の給油設備がそのまま使えるという大きなメリットがあることから、CO2削減につながる代替エネルギーとして有望視されている。SAFの需要は世界で高まり、日本でも国産化に向けてさまざまな施策が検討されている。

持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable aviation fuel)とは
持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable aviation fuel)とは

 SAFは廃食用油をはじめ、家庭ゴミ、木や草などのバイオマス、藻類のミドリムシなどから作ることができるが、原料によってCO2の削減効果が変わる。廃食用油から作る方法が最も効率が良く、化石燃料比較で84%CO2排出を削減できることから、コスモ石油、日揮ホールディングス(日揮)、レボインターナショナルの3社は、国内で使用済みの廃食用油を原料100%にした国産SAFの製造販売事業に取り組む合同会社 SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイア・スカイ・エナジー/SSE)を2022年11月に設立した。それぞれが得意とする業務を融合することでシナジーを生み出し、新たなビジネスに挑む。現在、SAFの製造設備を大阪府堺市にあるコスモ石油の製油所内に建設中で、2025年から航空会社へ供給を開始する予定だ。

合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイア・スカイ・エナジー)について
合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイア・スカイ・エナジー)について

 セッションでは各社の事業とそれぞれの役割について、登壇者から紹介された。

 原油からガソリンや燃料油などを製造し、製品販売まで垂直統合型で行うコスモ石油は、太陽光や風力など新エネルギーも扱っており、今回のテーマであるSAFにも取り組んでいる。SSEでは工場の運用、生産を担当し、2023年5月からSAF事業を担当しているコスモ石油の企画部次世代事業推進グループに所属する岸和田宏一氏は、「国内には他にもSAFを製造する会社があるが、現時点では圧倒的に供給量が不足しているためお互いを競合とは見ておらず、国としても世界的にもやっていかなければいけないので、責任感や使命感の方が気持ち的には強いという状況」だと話す。

 日揮はコスモ石油のような企業から依頼を受けて、製油所や液化天然ガス(LNG)、大規模化学工場を設計、建設することをメインのビジネスとしている。SSEではSAFを製造する設備の設計や建設のほか、営業活動やプロモーションを担当している。2023年2月からSSEに出向しているサステナビリティ協創ユニットSAF事業 アシスタントマネージャーの植村文香氏は、「工場の基本設計を行うエンジニアとして国内外のプラント設計を行っており、4年ぐらい前からSAFの製造事業に携わり始めた」と話す。

 レボインターナショナルは全国の飲食関連企業から使用済みの天ぷら油などを引き取り、軽油の代替燃料になるバイオディーゼル燃料に再資源化するという一連の流れを一社で行うことができる、業界的にも珍しいバイオ燃料のメーカーである。永田唯氏が所属する炭素源循環推進部では、炭素資源を減らすのではなく、有効活用して循環させることを目指した営業活動を行っている。「SSEでは、弊社が日本全国に展開する廃食用油の引き取りネットワークを最大限活用し、原料の収集と運搬を任せていただいている」(永田氏)と役割を説明する。

合同会社での各社の役割
合同会社での各社の役割

 廃食用油からSAFを製造する方法だが、まず不純物を取り除き、上空で固まらないよう水素を加える水素化処理で酸素分を除去し、航空燃料の仕様に合うよう調整する。製造量は年産約3万キロリットルを想定しているが、これは東京からロンドンまで片道で700便ほどを飛ばせる量になり、これほど大規模な製造は国内では初めてとなる。

 事業で最も大変なのが、原料となる廃食用油を集めるところだという。家庭と企業から出る廃食用油は年間で約50万トンあり、圧倒的に多い後者の半分は、家畜飼料のカロリーアップ剤や石鹸、その他の燃料として使用される。しかし、3割の12万トン程度がバイオ燃料の取り組みで先行する海外に輸出されているという実態がある。SAFを製造するには国内で受け皿を作り、国内資源として循環していくことが重要になる。

 「家庭から出る油が飛行機の燃料やいろんな用途があることを知ってもらうプロモーション活動を行っており、2023年4月からFry(揚げる)とFly(飛ぶ)をかけた『Fry to Flyプロジェクト』を立ち上げ、環境フェアのようなイベントに参加したり、SAFができるまでをVR体験できるようにしたり、出張授業などを行っている。当初は16だった参加団体は90を超えるまで増え、参加団体でもさまざまな独自イベントが実施されている」(植村氏)


Fry to Flyプロジェクトとその活動内容
Fry to Flyプロジェクトとその活動内容

 連携のきっかけについてあらためて聞いたところ、レボインターナショナルが日揮にバイオディーゼル燃料設備の製造を発注したことでつながりができ、そこからSAFへ展開を広げるにあたり、コスモ石油に協力を依頼したことで合同会社の立ち上げにつながったという。3社の取り組みは2021年にNEDOの助成事業「国産食用油を原料とするSAF製造サプライチェーンモデルの構築」事業として採択されている。

 永田氏は3社の連携について「専門分野としてはそれぞれ畑違いなところがあり、そこを一から勉強して理解を深めていくことができ、苦労した分だけ当社も成長したのではないか」と話す。岸和田氏は「いい意味でスピードが速いレボインターナショナルや日揮に対し、当社は意思決定に時間をかけるというギャップはあったものの、事業を進めるところではバランスが取れており、奇跡的な一致になっているのではないか」とコメントした。植村氏も「事業化するまでは契約書に始まり、いろんなところで喧々諤々することがあって足並みをそろえるのが大変に思えたが、各社の目線をお互いに考えながら合意に至ったことで、現在は信頼感や強い絆が生まれている」と語る。

 ビジネスの状況だが、現在は安全面から法規的に航空燃料を100%SAFにはできず、既存燃料に10%程度SAFを混ぜて使用している。安く大量生産できる技術がないため販売価格は高く設定されており、赤字にならないよう事業化を進める必要がある。原料についても自治体で収集するシステム作りなどを検討しようとしているが、需要が世界で拡大すれば、廃食用油だけを原料として利用するのは限界があるため、いろいろな原料から製造する資源循環の世界そのものを作ることも見据えているようだ。

 Fry to Flyプロジェクトへの参加は、ウェブサイトから引き続き募集している。

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