スマートリング市場の覇権をめぐる熱い戦いが、今まさに始まろうとしている。サムスンは1月の製品発表イベントでスマートリング市場への参入を明らかにし、人々を驚かせた。イベントでサムスンが予告した「Galaxy Ring」は2024年、特に発売が待たれている製品の1つだ。
サムスンの製品ラインにスマートリングが加わる――この決定は、デジタルヘルスのリーダーを目指すサムスンの目論見と深く関わっている。同社のバイスプレジデントでデジタルヘルス部門を率いるHon Pak氏は、バルセロナで開催されたモバイル見本市「Mobile World Congress(MWC)」のラウンドテーブルで、「Samsung Health」アプリの月間アクティブユーザー数は6400万人に上ると語った。
サムスンはGalaxy Ringの全貌を明らかにしておらず、情報を小出しにしている。筆者はMWCでGalaxy Ringの初期モデルを試したが、これは記者たちがGalaxy Ringを間近で見ることを許された2度目の機会だった。
会場には、ゴールド、シルバー、セラミックブラックの3種類のリングが9サイズ展開で用意されていた。サムスンの担当者は、ここにあるリングはプロトタイプにすぎず、最終的な仕様とは異なる可能性が高いと強調した。用意されていた中で、最も小さいリングは2.3g、最も大きいリングは2.9gだった。つまり、大きい方でも、Galaxy Ringに最も近い競合製品でセレブリティの愛用者も多い「Oura Ring」より軽い。Oura Ringの重量は、サイズにもよるが4~6gだ。
Galaxy Ringの内側には複数のセンサーが仕込まれており、そのうち3つはやや隆起している。指にリングをはめると3つの突起の存在を感じるが、不快感はまったくない。
筆者はごつごつしない控えめな指輪が好きだ。そのため、好みに合うスマートリングを見つけることは難しい。多くのスマートリングは金属製のケースの内側にたくさんのパーツを埋め込んでいるため、結婚指輪などと比べると厚みがある。Galaxy Ringのややへこんだデザインでさえ、筆者の好みに照らせば、ごつめに感じる。米CNETのシニアエディター、Lisa Eadiciccoが1月の「Unpacked」イベントでGalaxy Ringを試したときに指摘したように、リングのデザインは男性用の結婚指輪に近い。
女性向けではない、と言っているわけではない。長時間身につけるジュエリーやアクセサリーは人によって好みが分かれる。例えば、サムスンの公式資料のほとんどでは人差し指にGalaxy Ringをつけているが、筆者は小指につけるのが最も快適だった(どの指につけても機能面の違いはない)。
あらゆるウェアラブル製品と同様に、Galaxy Ringについても筆者が(おそらくは読者も)まず気になるのは充電が必要になる頻度だ。繰り返すが、サムスンはバッテリー駆動時間をできる限り伸ばすために細部の仕様を詰めている段階だ。しかし筆者が試したプロトタイプについての資料には、現時点での情報としてバッテリー関連の記載があった。
この資料によると、一番小さいリングには14.5mAhのバッテリーが搭載されている。リングのサイズが大きくなるほどバッテリーの容量も増え、一番大きいサイズでは21.5mAhまで増える。現時点では、最終的な製品のバッテリー駆動時間がどうなるかは分からないが、リングのサイズによって充電の頻度に若干の差が出ることになりそうだ。
重要なのは、Galaxy Ringで何ができるかだ。
健康トラッカーとしての用途は色々と考えられるが、指輪という形状が最も効果を発揮するのは睡眠の計測だろう。Pak氏はMWCで、Galaxy Ringは心拍数、呼吸数、夜間の活動量、入眠までの時間という4つの指標をもとに睡眠を追跡すると語った。
既報の通り、サムスンは「My Vitality Score」と呼ばれる機能を新たに導入する。この機能はジョージア大学が開発した身体回復度測定モデルに基づいたもので、ユーザーの覚醒度を測定する。この他、Galaxy Ringの睡眠データなど、サムスン製品が収集したデータをもとに、ユーザーに合わせて科学的裏付けのあるアドバイスやヒントを提供する「Booster Card」機能も登場予定だ。
いつGalaxy Ringをつけるかはユーザー次第だ。必ずしも夜につけなければならないわけではない。夜は気になるので外して寝て、日中つけているだけでも多くの有益な情報が得られる。
Galaxy Ringのもう1つの大きな特長は、女性の生理周期を追跡し、アドバイスを提供できることだ。この機能はMovanoの「Evie Ring」と競合する。サムスンはすでに米食品医薬品局(FDA)認可の生理・排卵スケジュール追跡アプリ「Natural Cycles」と提携しているが、Galaxy Ringと合わせて使うことで、このアプリをさらに有効活用できようになるとPak氏は言う。
サムスン製品を愛用している人なら、同社のもうひとつのウェアラブル端末「Galaxy Watch」をすでに持っているかもしれない。そうだとしても、Galaxy WatchをつけるかGalaxy Ringをつけるかを迷う必要はない。
両方を同時につけても健康状態の追跡は可能であり、むしろ連動させることでデータの質はさらに高まる。「Galaxy WatchとGalaxy Ringを同時につけると、(5つの)睡眠段階の認識性能が高まることなどが分かっている」とPak氏は語る。他にもさまざまな相乗作用が期待できるという。
もちろん、Galaxy WatchとGalaxy Ringを同時に装着しなければならないわけではないし、両方を持っている必要さえない。通知やフィードバックを手首ですぐ確認したいスマートウォッチ派もいれば、健康は気になるが、これ以上ディスプレイを増やしたくないスマートリング派もいるだろう。
「ニーズや好みは人それぞれだということが分かってきた。機能は少ない方がいいという人もいる」と、Pak氏は語る。受動的でシンプルな健康トラッカーの方が快適で便利でスタイリッシュだと感じる人もいるという。
スマートリング市場ではこれまで、大企業はむしろまれな存在だった。サムスンはスマートリング競争に参入した初の世界的な有名企業だ。
サムスンは、この新しいデバイス市場を制するために、競合が少ない現在の状況を利用できるかもしれない。しかし、それは同社が今、重視していることではないとPak氏は言う。同氏によれば、サムスンが目指しているのは自社製品のユーザーに、これまでにない製品という形で新たな選択肢と利便性を提供することだ。
では、「iOS」ユーザーはどうだろう。少なくとも今のところは、Galaxy Ringに興味があってもiOSユーザーは相手にされない。「iOS対『Android』の問題は認識している。魅力的な製品を開発し、乗り換えの決め手になる価値を提供していきたい」とPak氏は語った。
今のところ、iPhoneユーザーは蚊帳の外だ。サムスンが目下、取り組んでいるのはGalaxy Ringを他のAndroidデバイスに対応させることだ。「これが現在の状況だ。その後については、これから決めていくことになるだろう」と、Pak氏は述べた。
Galaxy Ringに関しては、発売時期や価格を含めて、まだ決まっていないこと、少なくとも発表されていないことが多い。正式な発売日が明らかになるまでに、再び新たなプロトタイプを目にすることになるはずだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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